読書メモ
・「賢者はかく語りき」
(齋藤 孝:著、小学館 \1,300) : 2011.01.09
内容と感想:
齋藤氏が古今東西の9人の賢者の名言を取り上げて、解説している。
取り上げた賢者は、ニーチェ、世阿弥、ソクラテス、アインシュタイン、老子、ゴッホ、清少納言、ヘッセ、良寛。
「おわりに」にあるように、これは著者が考える「メジャー級」の賢者たちである。野球チームのメンバーを意識して9人を並べたようだ。
そこで述べているように「彼らの言葉には、紛れもなく力がある」、それは「夢のような打線」とも。
いずれも珠玉の名言ばかり。
特に既に40を過ぎた私が身につまされる思いがしたのは、世阿弥の章。齋藤氏は世阿弥の言葉を次のように要約している。
44、45歳では身の程をわきまえる。50有余であれば無用のことをしない。「真の花」を極めた者は老いてなを花を咲かす、と。
自分は何かを極められただろうか。ふと不安と焦りを感じてしまう。
しかし、賢者たちの言葉を支え(サポーター)にして、まだこの先の人生を歩んでいけそうだ。
○印象的な言葉
・心をコントロールする方法:身体から入る方法と、言葉を自分に投げかける方法(賢者たちの言葉)
・ニーチェ:現在の苦悩を来世の解決に委ねようとするキリスト教の精神を否定、現在の自分が引き受けるしかないと提唱。
甘えきった友情や、もたれ合いの関係を拒絶。哲学者というより問題提起者。
誰一人として問うことがなかった問いを独力で抉(えぐ)り出した。
・哲学とは主張ではなく、徹頭徹尾「問い」
・習慣、スタイルがない人生は、行き当たりばったり
・自分自身を統御できない弱い性格の人間は様式の拘束を嫌う
・宗教的難問に関わることは浪費にほかならない。思考する価値があるか?
・無駄な後悔をしない
・病気であることが生きることへの刺激にさえなりうる
・自分のエネルギー量が極端に落ちているなら休む
・44、45歳では身の程をわきまえる。50有余であれば無用のことをしない。「真の花」を極めた者は老いてなを花を咲かす
・一調二機三声:舞台に臨むスタンスを表わす。調子を整える、タイミング、心構えや身体のバランス
・人類史上最強の質問のプロ、ソクラテス。人々を目覚めさせるために質問した。その行為を「産婆」とも呼ぶ
・質問が上手にされさえすれば、物事がどうなっているかを自分で説明できる。自分自身で気付かせる
・自分で判断を下さず、一緒に考察し、探求する。相手が発した言葉を使って質問する
・哲学者の仕事は魂を肉体から解放し、分離すること。肉体のために真実を見ることができなくなる
・アインシュタインは「世界政府」を提唱
・時間も空間も相対的なもの。絶対的なのは物質だけ
・心理と美と正義を求めて奮闘する人々からなる、目に見えない共同体に属している。孤立を感じない
・地味で、でしゃばらない人生が誰にとってもいい
・上善水の如し:最高の善とは水の働きのようなもの。水は万物の成長を助け、誰とも争わない。多くの人がいやがる低い場所に留まる。
水は形をもたず、器に従って変幻自在に姿を変える。どこにでも流れ、どんな器にも入る。何ものをも恐れない。柔らかさ、女性的なもの。
・行き詰まったときは、しばらく様子を見る。寝かせた後、もう一度、熟考する。下手な思考は脳を疲弊させる
・道(タオ):世界そのもの。本質。エネルギーの海。
・倦(う)まず、弛(たゆ)まず実生活に没頭。それが波立つ心を静める、心のマネジメント
・学者くささ、悟り(僧侶)くささ、茶人くささ、風雅くささを嫌う。格好を付けることを嫌う
-目次-
ニーチェ
世阿弥
ソクラテス
アインシュタイン
老子
ゴッホ
清少納言
ヘッセ
良寛
|