読書メモ
・「「会社を変える」人材開発 〜プロのノウハウと実践」
(香本 裕世:著、柴田 昌治:監修、光文社新書 \700) : 2011.04.02
内容と感想:
監修の柴田氏は「組織風土・体質改革」のサポートを行なうスコラ・コンサルタント社の代表。
本書のテーマは人材開発。
株主が第一と思っている企業も、表向きは「人(社員)が一番大切」と言っている。
成果主義が広がり、それが人材育成を阻害していることが指摘されるようになった。
仕事を通して成長を実感できないとしたら、その職場に留まることは無意味だと感じるだろう。
人材育成を全て会社が担うのは、余裕のある大企業でない限りは難しい。育成にまで手が回っていないところがほとんどなのではないか。
社員個人も経営側も悩んでいると思われる。そうした問題意識から本書を手に取った。
第1章では人材開発とは何か、第2章では人材開発担当者の基本スキル、
第3章では人材開発担当者のトレーニングについて解説している。
第2部は第1部の応用編で、
人材開発担当者が会社再生に取り組むというストーリー仕立てで、人材開発担当者の在り方や行動について具体的に描いている。
本書では人材開発担当者とは「個人の成長と組織の活性化に直接関わる役割」としている。
そこには「社員個人に対してキャリア支援をするキャリアカウンセラーとしてのマインド」、「職場の活性化を図っていくプロセスデザイナーとしてのスキル」が求められる。
著者は本書をビジネスマンだけでなく、親や学校の先生などにも読んで欲しい、と述べている。
勘違いしてはいけないのは、人材開発担当者とは教師のような教育係ではないという点だ。
人材開発担当者が旧来の「研修事務局としての仕事スタイルしかできないならば、社内で生き残っていけない」とも指摘する。
人材開発担当者は本書の第2部で具体的に書かれているように、面談やミーティングのために現場に出掛けていくべきだという。
新たな役割が期待されていると認識すべきだろう。
また、管理職をはじめとする現場キーマンの能力開発が極めて重要、というのは同感だ。私も通信教育で管理者教育を受講したことがあるが、
実効性があったかどうか疑問だ。それだけに管理職の能力開発は難しいと思われる。
○印象的な言葉
・プロセスデザイナー:企業変革サポートを行なう
・世話人交流会:企業変革を現場で担う人々
・「人と組織」に関わる問題を発見し、その解決を通して、働きやすく、かつ業績の上がる職場づくりを支援。参謀役。場の設定役
・採用担当者として企業訪問してきた学生に何かしらよかったと思ってもらう。学生の考え方に違和感があればそれを伝える。アドバイスし支援する。
採用の可能性のない人を適当にあしらうことは不誠実。自社のアンチ・ファンを作らない
・人材開発の基本は「個人支援」。必要としている人に必要なことを提供
・データに基づいた会話←→数値や具体策が伴わない定性的な話
・キーマンの発見と再生
・ファシリテータ:指示的に行動する場面は少ない。支援的、受容的であることが求められる。相手の気付きを促進する
・教育・研修を義務教育的に実施するのはナンセンス
・部門長が採用から退職までの人事権を全般的にもつべき
・オフサイト・ミーティング:気楽にまじめな話をする場
・会社から出た人と会社に残った人は盛んに情報交換を行なっている
・企業内でキャリア・カウンセリングの必要性がある。今後どうしたいか、何をする意思があるか、キャリア上で困っていることは何か、支援して欲しいことは何か
・職場で「何かおかしいな」と話せる風土があるかどうかが、組織活力のバロメータ
・自分が組織に受け入れてもらえているという実感があって初めて、思っていることを話せる。組織の目標も自分のこととして捉えられる。失敗も報告しやすい。主体性も高まる
・現場の作業に逃げ、ものを考えない管理職。忙しいといいながら嬉々としてクレーム処理に走り回る。それで仕事をしたと思っている
・自分で企画し、上司をスポンサーにし、周囲のメンバーを巻き込みながら仕事の仕方を変えていく
・よい人材も、教育訓練と自己啓発の支援や促進をしないことで伸び悩む
・人のつながりの再構築
-目次-
第1部 基本編
人材開発とは何か
ビジネス環境の変貌と人材開発担当者のあり方
人間関係トレーニング
第2部 応用編 ケーススタディ経営再建の現場から
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