読書メモ

・「違和感のチカラ 〜最初の「あれ?」は案外正しい!
(齋藤 孝:著、角川oneテーマ21 \705) : 2011.01.30

内容と感想:
 
著者は違和感は「現代を生き抜く必須の感覚」だという。 「それは現代社会がかつてよりもリスクの種類が格段に増えてきているからだ」。 「先が読めない状況」で「違和感センサー」を「自覚的に活用する」ことが大事だとする。 「時代が進化した分、むしろ「けもの道」の感覚が求められている」というのも分かる気がする。 その感覚は「動物的な生存本能」とも言い換えている。
 本書では気付きも違和感と同じように扱っている。それは単なるリスク回避のためだけでなく、「アイディアの創出」にも活かせる。 どちらかといえば本書はサバイバル術というよりも、イノベーションに役立てよう、といったところに重点を置いている。
 第二章では「ヒット」(商品など)の裏にあった違和感の例を挙げて説明している。 第三章ではビジネスや生活上で感じる様々な違和感の事例を挙げ、第四章ではどのようにして違和感を得るのかを考え、 第五章では違和感の鍛え方、そして第六章では違和感の応用法を述べている。
 仕事に使えそうと思ったのは、「ん?あれ?」ノート。部下一人一人に対する違和感を書き留めるのだそうだ。 「部下の掌握、コーチングに役立つ」とのこと。マメな上司は作っていそうだが、部下のきめ細かい指導には役立ちそうだ。

○印象的な言葉
・まずい事態の予兆は必ずある。気がついていたはずだが、気がつかなかったことにしている。自己保身のための「気付かないふり」。面倒くさいことに巻き込まれたくない
・違和感は経験知の集積で磨かれる
・「まあいいか」の繰り返しがセンサーを鈍らせる。異変を大したことではないと思い込む。関係ない、楽観的に考える、過小評価する。自分は大丈夫と思う
・まさか・・。不審。心にざらつく感じ。癇に障る。かすかなさざ波。虫の知らせ。胸騒ぎ。気にかかる。何かおかしい。脳裏をかすめる
・危険察知能力は最初の瞬間が一番働く。ちょっとした引っ掛かり。もやもやとした感覚。怪しい、危険の匂い
・アイデアの基本はつながりそうにないものをつなげること。ありえないもの。異質、過激
・脅威、自分たちの世界を侵食してくるものとして苛立つ。葛藤
・流れに乗らずに踏みとどまってみる。時代は迅速さを重視し、判断を流れに沿ってせざるをえなくなっている。立ち止まって考える
・気付きが多い人は新鮮な感覚が保たれている人。改善できないか、と気付く
・直感には思い込みが付き物。冷静な判断力を欠きやすい
・どこかに伏線はあるもの
・感性のアンテナ
・有用な違和感は経験があるから働く
・今は選択肢が無数にあり、何を基準にして決めればいいのかわかりにくくなっている
・データは参考にする程度に
・単なる知識でなく「見識」が必要
・全身の毛穴を開いて感じる
・皮膚は露出した脳
・<あいだ>を生きる柔軟性。環境に自分を溶け込ませようとしてみる。どんな形にもなれる、どんな色にも染まれる、くらいのつもりで飛び込む。適切な距離感
・言葉は言いたいことを伝えるためだけではなく、相手との関係を確かめるためにある。言葉を通して共感したり、差異を感じ取る
・これからは誰を信用していいか、どの情報を信用していいか、情報の出所が明暗を分ける
・普通にあるもの、に対して問いを投げかけることが観察の始まり
・モンタージュの映画には押し付けの姿勢が感じられる。観客を子供のように扱っている(アンゲロプロス監督)
・シンプルで読みやすいマニュアルでないことは、本気で顧客のことを考えていないということ

-目次-
第一章 <気づかないふり社会>から脱却しよう
第二章 ヒットの前に違和感あり
第三章 「これじゃない!」を感じ、見抜く力
第四章 「ん?あれ?」感覚をひらく
第五章 違和感の芽を育てる
第六章 違和感のチカラ