読書メモ
・「田舎暮らしに殺されない法」
(丸山 健二:著、朝日新聞出版 \1,300) : 2011.02.14
内容と感想:
信州安曇野に暮らす芥川賞作家による田舎暮らし警告の書。
「自然が美しい」とは「生活環境が厳しい」と同義である、とか、
田舎暮らしのためには「自立」していることが大事とか、
田舎暮らしに老後のロマンを抱いている方にとってはいろいろ厳しい、脅しのようなことがたくさん書かれている。
田舎暮らししたいなら、それなりの覚悟をしろ、ということだ。
「野垂れ死にの最期を念頭に置いておくくらいな腹のくくり方はしておくべき」とも述べている。
郷に入れば郷に従え、というように田舎にしろ、都会にしろ、違う土地に住むには心得るべきことはいろいろだ。
田舎でも住めば都と、大らかに考えられる人のほうが、田舎暮らしには向いている。
田舎暮らしのいいイメージばかりを取り上げた「田舎暮らし」礼賛の書の類に踊らされ、
安易に終の棲家を選んで失敗する前に読んでおきたい本である。
○印象的な言葉
・自然に美を感じる前に畏敬の念が先に立つ。先祖代々受け継いできている犠牲の数々
・耕作地としても不向きで宅地としても自然災害にやられる確立の高い極めて危険な土地は二束三文の値打ちもない
・無料で借りられる土地。畑を雑草や雑木に荒らされたくないから
・農作業の辛さ、採算に合わない
・熊、鉄砲水、落石、毒蛇、毒虫、大スズメバチ
・病院が遠い、救急車が来るまで時間がかかる、医療レベルの低さ
・蓄積された知識と経験と技術とコネクションをどぶに棄ててしまうような生き方は勿体無い。都会なら復活のチャンスは多い
・疲労困憊の最中での大切な決断は避けるべき
・ペンション経営は元手がかかりすぎ、自分の代では元が取れない
・田舎の人はその土地に魅力に、宝の山に気付いていないもの。何が売り物になるかも
・就職口が少ない。刺激がなく退屈。文化的なるものに接する機会が少ない。時代から置いてきぼりを食う
・胡散臭い、世のため人のためを巧みに装った詐欺師の集団のようなNPO法人
・新参者に地元の老人が甘えるようになる。便利屋、パシリをやらされる
・町村の有力者たちが企業に抱き込まれている。仕事の場を失いたくない地元民も企業の横暴な振る舞いを許してしまう。企業への<たかり根性>
・深刻で切実な問題にも意義申し立てをしない。長いものに巻かれろ。お上に闇雲に従う。遺伝子の中に隷従の根性が組み込まれている
・地方消滅の時代。姥捨て山のごとき雰囲気。追い詰められ、無気力。破れかぶれ
・妬み深い、他人の不幸を喜ぶ、心の貧しさ
・正確に土地柄を知るには警官や教師に訊くのがよい。度重なる転勤により土地柄を比較する眼力を養っている。少し離れた土地の住民から情報を得る。病院の待合室も効果的。
移住者たちの後悔の中で最大のものは土地柄。近所に厄介な人物がいるかも
・流しの犯罪者が地方で活躍。外国人による犯罪。田舎の警察力も当てにならない
・広告やマスメディアや映画や小説が現実の主導権を握る。イメージのためのイメージという毒害
・ボランティアを装ったけちな詐欺師。空き巣や押し込み強盗の機会を窺うためにセールスマンを装って下見。詐欺商法
・移住者に対して、都会に対して漠然と抱いていた羨望やら負い目やらを地元民は味わう。嫉妬と憎悪の対象となる
・地元住民は集落全体をひとつの家と見なし、家族としてまとまり、厳しい環境における厳しい人生を難世代にもわたって乗り切ってきた。結束力は貧困を乗り切るための知恵
・冠婚葬祭は住民を巻き込んだ行事を超越した行事
・選挙は深刻で、不可解で、理不尽な問題。貧弱で嘆かわしい、おぞましい実態。民主主義国家になれない
・強者に過剰に従って目先の利を得るという姑息な国民性。自立を極端に忌み嫌う幼児性
・移住者にも胡散臭い、詐欺師同然の輩が混じっている。口先だけで世渡りしようとする。町おこし、村おこしを提案し遊び半分で食べていこうとする。
正義の使者のごとく振る舞い、弱者の見方のふりを演じる
・人類全体が救いがたい田舎者ばかりで成り立っている
・自然讃歌をさかんに唱える文化人もどき。ふしだらな生活、怠惰でインチキな精神はその外見を見ればわかる
・年齢に相応しく、落ち着いた、自分らしい、奥深い、重厚な生き方
・簡単に手に入る情報には肝心な情報が抜け落ちている
・不規則で無茶な生活に問題があると免疫力が低下
・赤字経営の病院にとって患者はいいカモ
・都会人には別荘地が無難。手放すときも買い手がつきやすい。しっかりした不動産屋の管理下にあるもの。ゴーストタウン化した別荘地もある
・森の中の湿度の高さ、日当たりの悪さ
・自分のことは自分でやるという強い心組みと体力。不便さが鍛えてくれる
・宗教活動に熱心な者は自分の力で生きようとしない横着者、卑怯者。他人を騙し、利用することしか念頭にない。口先だけで世渡り
・自分を救えるのは自分自身。おのれ以外の者にすがろうとする者は死んでも救われない
・情に流されない、本能に溺れない、真っ当な意志の力こそが神であり仏
・迫り来る死期は本当の自分でいられるかを試される、人生において最も大切な時期
-目次-
その前に、「自立」しているかを問え
確固たる「目的」を持て
「自然が美しい」とは「生活環境が厳しい」と同義である
年齢と体力を正確に把握せよ
「田舎暮らし」を考えるなら、まず酒と煙草をやめよ
「孤独」と闘う決意を持て
「妄想」が消えてから「現実」は始まる
田舎は「犯罪」の巣窟である
田舎に「プライバシー」は存在しない
「付き合わずに嫌われる」ほうが底が浅く、「付き合ってから嫌われる」ほうが数倍も根が深い
「第二の人生」について冷静に考えよ
「老後の現実」を直視せよ
あなたを本当に救えるのは、あなた自身である
|