読書メモ

・「森林の崩壊 〜国土をめぐる負の連鎖
(白井 裕子:著、新潮新書 \680) : 2011.02.04

○印象的な言葉
・森や木と共にあった技能や職能、産業文化の伝統が継承に危機にある(⇒ノウハウの共有)
・眠る莫大な森林資源
・豊かさの質を左右する公共財
・人工林の9割が杉、檜、松
・国有林では伐採、造林などを100%民間に委託
・山では年間二千数百件の労災が発生。伐採が最も危険。作業現場では携帯電話も通じないところが多い。労災発生時には命取り
・日本の山林は他国よりも傾斜がきつい
・日本の林業機械の開発。他の産業からの転用が多い
・日本の国土調査は半分にも達していない。所有区分がはっきりしない土地が国土の半分以上ある
・土地の長老達の貴重な知識、知恵が失われようとしている。自生していた樹種や、木を植える場所、切り方、崩れやすい場所など
・森林作業支援ロボット
・教育とは学校で習ったすべてを忘れたあとに残るもの(アインシュタイン)
・紅葉が美しい山からは良材が取れる
・杉は檜より乾燥が難しい。杉を製材する技術や施設も発達してこなかった。杉など針葉樹は家具木工や合板に適さない
・林業の補助金制度はよく変わる。マニュアルどおりにやらないと補助金がもらえない。工夫する余地がない。やる気を奪う
・ドイツやオーストリアでは森はみんなのもの。自由に立ち入ることができる
・欧州には特権階級から権利を奪い返し、隣人と一緒に皆で社会を作ってきた歴史がある
・持てる者にはそれだけの社会的責任がある。権利と責任は背中合わせ
・目的主義。裁量も責任も自分にある
・個人の好き嫌いとは切り離されたところで人と話し合う教育
・古来、大工は二つとない現場で工夫を凝らし、唯一無二の無垢材の性質を活かして組み上げ、建てて来た
・木材は切って数百年は次第に強度を増す
・まずい仕事をすれば仕事がなくなる、というシンプルな関係
・優れた科学者は科学が分かる前に、生き物としての鋭い感性をもった人
・規制をどんどん書き加えていくうちに、伝統的な建築構法で建築できなくなった
・木材は自然に生えていた状態を大事にして使うもの。木の性質を生かす。金物が木を傷める。地域性を生かす
・伝統構法では短期的には高コストだが長期的にみれば安くなる

<その他>
・ものづくりは人づくり、人づくりは人の心づくり

-目次-
第1章 日本の森でいま、何が起こっているのか
第2章 日本の木を使わなくなった日本人
第3章 補助金制度に縛られる日本の林業
第4章 公共財としての森と欧州の発想
第5章 建築基準法で建築困難に陥った伝統木造
第6章 大工棟梁たちは何を考えているのか