読書メモ

・「グリーン革命 (下) 〜温暖化、フラット化、人口過密化する世界
(トーマス・フリードマン:著、伏見 威蕃:訳、日本経済新聞出版社 \1,900) : 2011.03.12

内容と感想:
 
原著はオバマ大統領就任の前に出版されている。 地球温暖化や石油枯渇する時代の到来、同時に世界のエネルギー需要の増大、生物の種の減少など、世界は環境面でも様々な課題を抱えている。 それを解決しようとする取り組みがタイトルの「グリーン革命」となる。 もちろんグリーンは森林・植物・自然環境をイメージしたものだ。今後我々にはそれらを保護しながら、地球にやさしく生活することが求められている。
 石油に頼らないエネルギーをどうやって得るか、生活水準を下げずに温暖化につながらないエネルギー利用をどうやって実現するか、 環境に負荷をかけずにいかに事業活動や生活をしていけばいいのか。それを解決するのはテクノロジーだ。イノベーションで乗り越えていくしかない。 本書では世界が抱える様々な課題を明らかにすると同時に、それを克服するためのグリーンテクノロジーの事例を主にアメリカを取材して書いている。 世界同時不況の真っ只中、オバマ大統領は就任直後、グリーンニューディール構想をぶちあげた。本書はその構想にも影響を与えたという。 訳者があとがきでも述べているように環境技術では日本は世界をリードしている。時代のニーズに合っているし、世界への貢献にもなる。今後も環境投資が拡大し、 新たな産業・雇用を創造することが期待される。

○印象的な言葉
・ET:エネルギー技術
・充分に進歩したテクノロジーは魔法と見分けがつかない(アーサー・C・クラーク)
・米国には全米を結ぶ高圧送電線網がない。地域内でも電気の融通が難しい
・揚水式電気貯蔵:夜の揚水に使われるエネルギーを3とすれば、翌日そこから得られるのは1でしかない
・家庭のエネルギー効率を点検するサービス
・学校給食の調理場の二元使用。学校用と商用
・バブルにはイノベーションを促進する面もある
・優秀なエンジニアが地元に定住するよう教育の質を高める。地元の学校の数学・科学教育振興に投資する
・ガソリン燃料システムには採掘、輸送、精製、販売という経路でロスが生じる
・大きく考え、初めは小さく、すぐに行動する
・途上国の森を救うには(それを破壊している)人々を救わねばならない。新たな仕事を創出する
・世界には食料と燃料と雨露をしのぐ場所と真水と繊維を森に依存して極貧の生活している人がいる。森が滅びると彼らの文化も滅びる
・ミシガン州のある病院で間違いを犯したときに医師が謝るよう指導したところ医療過誤訴訟が激減した
・ロサンジェルス上空の汚染物質の25%は中国からのもの
・ミツバチ、アリ、シロアリは一匹ずつでは頭がよくないが、集団になると高い知性を示す。人間はその逆

<その他>
・深夜電力の活用:みなが使うようになれば料金は安くならないのでは?
・無駄遣いをなくす努力も必要。欲望の抑制
・自然の力をそのまま利用したほうが効率がよいのでは?自然にこそヒントあり。生物はそうして進化してきた
・産油国は代替エネルギー開発を国益上、阻止しようと企むことはないか?研究者に圧力をかけたり、買収したり
・高齢者の知恵、経験の活用。文書化。介護施設などで収集
・本当に必要なのは多くの人の前向きな心のエネルギー
・寒いよりは暖かいほうがいいじゃないか
・山小屋や離島への電力供給がニッチ
・スマートグリッド:電力会社が各家庭の電力使用状況を直接把握。プライバシーの問題
・電気自動車はガソリン車の給油のような速さでは充電できない
・かつて中国人は土地を私有していたのではないか。不満はないのか
・古来の水車では発電できないか?景観を損ねず、風情もある

-目次-
第三部 前進の道すじ(承前)
 第10章 エネルギー・インターネット:ITがETと出会うとき
 第11章 石器時代が終わったのは、石がなくなったからではない
 第12章 おもしろみがあったらグリーンではない
 第13章 一〇〇万人のノア、一〇〇万隻の方舟
 第14章 対アルカイダ・グリーン奇略(もしくは、一つ買えばおまけが四つ)
第四部 中国
 第15章 赤い中国はグリーンな中国になれるか?
第五部 アメリカ
 第16章 一日だけ中国になる(でも二日はだめ)
 第17章 民主的な中国か、それともバナナ共和国か?