読書メモ
・「デフレの正体 〜経済は「人口の波」で動く」
(藻谷 浩介:著、角川oneテーマ21 \724) : 2010.01.01
○印象的な言葉
・減らない日本人の金融資産。世界中で莫大な金利配当を稼ぐ日本。その多くは輸出企業とその株主に集中。それは庶民には無関係に海外に再投資されている
・住宅バブルを生んだ団塊世代の持ち家取得
・生産性向上努力がGDPの縮小を招く。生産性向上イコール労働者削減という勘違い
・出生率上昇では生産年齢人口減少は止まらない
・外国人労働者受け入れは事態を解決しない
・高付加価値率で経済に貢献する観光収入
・年金から「生年別共済」への切り替えを。世代ごと、世代内での助け合い
・景気さえよくなれば皆がハッピーになるという思い込み。GDPさえ成長していれば、それが世の隅々まで波及するという思い込み
・GDPだけが一人歩きして重要な個別指標が無視されている。個別の数字や現象をチェックし、世の中の全体像を把握する
・駅前の地権者が豊かでは、駅前開発は起きない
・日本の内需は国内外の好景気にも連動しなくなっている
・輸入のほどんどは固定費ではなく、売上に連動する変動費。輸出と輸入が連動している
・フランス、イタリア、スイスは対日黒字。高級ブランド品という強力な資源をもつ
・日本が目指すべきは「ブランド力」で勝つこと。「最高級品は日本」という分野を増やしていく
・不動産開発なら資産価値の高い街並みを東京や大阪でつくれるか
・国内新車販売台数など90年代後半から長期的に減っているものは多い
・物事の価値は時価で見なくてはならない(ファイナンスの基本原理)。将来期待される収益の割引現在価値
・短期的投資の世界では短期的な指標だけが注目される。「皆がどう思っているか」が重要。長期的な視点に立つべき国民が一部の短期的投資家に付き合う必要はない
・地域間格差は拡大していない。都会も田舎も同じように低迷している。首都圏が元気なら、4人に1人は首都圏民だから日本はもっと元気なはず。首都圏は内需を牽引できていない
・都心は首都圏よりも更に厳しい
・沖縄県は日本で唯一、就業者数が増加してきた県
・米国経済の基本指標では失業率ではなく、「非農業部門の雇用者数の増減」が使われている。失業率は必ずしも雇用の増減に連動しない
・日本の就業者減少の要因は人口変動。特に生産年齢人口の変動★日本が直面しているのは人口成熟問題
・首都圏では高齢者が激増。彼らは買いたいもの、買わなければならないものがない。病気や身体障害などのリスクに備え、金融資産を保全したいというウォンツだけがある。
彼らの資産は何にでも使えるという意味での貯蓄ではなく、流動性に乏しい。医療福祉サービスの先買いになる。
ほとんどの人は大量の貯蓄や家産を残したまま亡くなって行く。
・首都圏や愛知県など産業地域には高度成長期に大量の労働者が流れ込み、現在、高齢化している
・首都圏では今後、収容型の老人施設を数千箇所作り、ヘルパーも万人単位で増やす必要がある
・「生産年齢人口の波」は景気の波を簡単に打ち消してしまう威力がある。景気循環に対処するための方策は通用しない
・60年代は若者が若いエネルギーを燃やし、職を見つけて食べていこうと努力し、需要と供給が拡大していった。その結果、景気がよくなり、雇用が増えた
・わずか3年間に出生が集中している団塊世代の住宅需要の盛り上がりをバブル、景気の波と勘違いして住宅バブル(過剰供給)が起きた。
・効率化の難しいサービスを提供しているサービス業が、売上の割りに一番人件費がかかるため付加価値率が高い。価格競争に陥っている製造業はマージンが薄く、付加価値率も低い
・労働者を減らすと、付加価値の少なからぬ部分を占める人件費が減り、付加価値率も下がる
・企業は退職者増加で浮いた分を若者に回すことで内需維持に貢献すべき
・最も稀少な資源は消費のための時間。国民総時間の減少
・日本が目標にすべきは、生産年齢人口減少ペースを弱めること、生産年齢人口の個人所得の維持・増加、国民の個人消費の総額の維持・増加
・公共工事は生産年齢人口の長期的減少の下でも必要な工事かどうかを区別すべき
・現在のデフレは諸物価が国際的な水準に向けて下がっているという面がある
・日本の問題は外貨獲得ではなく、獲得した外貨を国内で回すこと
・子供を増やすことは、団塊世代の加齢という目下の一大課題の解決にはならない
・生産年齢人口の減少は外国人流入実績の10倍の速さで起きている
・数の多い中国の若者が消費欲旺盛な30、40代になるまでは中国の内需は伸び、日本もそのおかげで潤う
・処方箋:高齢富裕層から若い世代への所得移転、女性就労の促進、外国人観光客・短期定住客の増加
・2040年の生産年齢人口は2005年から3割減。一人当たりの所得を1.4倍に増やせれば内需は縮小しない。人件費の総額を維持しないと内需も生産性も増加しない
・人件費削減は内需縮小の火に油を注ぐだけ。緩慢な自殺にほかならない
・企業はエコに向ける以上の関心を若い世代の給与水準の向上に向けるべき。内需縮小は環境問題よりも重要な足元の問題
・従業員を重視する企業に若者が集まり、消費者のイメージアップにもつながる
・人間は利得と建前の両方の言い訳があれば購買行動に走る
・高齢者市場ではニッチや趣味人にフォーカスすることが大事
・女性就労の促進は外国人労働者導入よりも追加的なコストがかからない
・論証を待たずとも反証を検証して実行すべき政策がある。それを認めないでぐずぐず論証を待っていると命が失われることもある
・観光収入の多くは人件費。付加価値率は高い。観光はあらゆる地域産業を活性化させる総合産業。外国人観光客受け入れも外貨獲得の手段
・限られた政府のお金は所得に関係なく給付されるような給付金、減税、所得税控除などに使うべきではない
・親の所得の多寡により、その子供が不当に有利な地位を得るような社会は国際競争に負けるか、社会秩序が自壊して滅びる
・政府の諸給付は生活保護に一本化していい
・年寄りの面倒を若者の金銭で見るという方式は放棄さぜるをえない
・社会の中で文化やデザインの占める地位が高くなっていく
・地域の個性を活かした地産地消品を供給する事業者が増えていく
・日本は現場で汗をかく普通の人が支え、何度も蘇らせて来た社会。雑草力
-目次-
思い込みの殻にヒビを入れよう
国際経済競争の勝者・日本
国際競争とは無関係に進む内需の不振
首都圏のジリ貧に気づかない「地域間格差」論の無意味
地方も大都市も等しく襲う「現役世代の減少」と「高齢者の激増」
「人口の波」が語る日本の過去半世紀、今後半世紀
「人口減少は生産性上昇で補える」という思い込みが対処を遅らせる
声高に叫ばれるピントのずれた処方箋たち
ではどうすればいいのか(1)高齢富裕層から若者への所得移転を
ではどうすればいいのか(2)女性の就労と経営参加を当たり前に
ではどうすればいいのか(3)労働者ではなく外国人観光客・短期定住客の受入を
高齢者の激増に対処するための「船中八策」
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