読書メモ

・「我らクレイジー☆エンジニア主義
(リクナビNEXT Tech総研:編、講談社BIZ \1,600) : 2011.02.19

内容と感想:
 
リクルート社が開設しているエンジニアライフ応援サイト「リクナビNEXT Tech総研」で連載された技術者インタビュー集。 2005年8月から2006年11月までに掲載されたものとのこと。 タイトルの「クレイジー」は好きなことに黙々と向かうエンジニア達に敬意を込めた言葉。 総勢15人の技術者、研究者らが自分の仕事を熱く語っている。 エンジニアではない人にも読んで欲しい。エンジニアを理解してもらいたい。また本書は、行き詰まっているエンジニアには勇気づける応援にもなるだろう。
 スピーカー開発の由井啓之氏は次のように語る。 やめるのはいつでもできる。だったら慌ててやめることはない。とことんやり抜く。あらゆることをやり尽くして、もうすることがない、とあきらめかけたとき、ふっと思いつく、と。 そこまで出来る粘り強さ、執念がないと物事は成し遂げられないのだというのが分かる。突き抜ける瞬間までやり続けられるかどうか、そのプロセスを楽しめるかが、 「クレイジーエンジニア」になれるかどうかの境目だ。
 動画変換技術の富田拓朗氏がこんなことを語っていて興味深い。 「日本はいろんな意味で世界の先端を走っている国」で、「極まってしまっている部分がある」。 そのため「日常のストレス、閉塞感やフラストレーションすらも相当に熟成されている」と分析する。同意する人も多いのではないか。 そうなると「いつかは何らかの方法で正しくバランスして浄化されることになる」、と日本人の自然治癒力に期待をしている。 特に技術を想定した話ではないと私は受け取っているが、日本社会の差し迫った状況、そしてそれに対して本気で立ち向かう時期が来ていることを物語っているようにも感じる。

○印象的な言葉
・オリジナリティのある仕事をして、世の中に貢献したい。新しい流れを作りたい。世界にインパクトを与える。パイオニアとして新しい分野を切り開く。人類にとって重要な分野
・タンジブル(ダイレクトに触れられる)・ユーザーインターフェース。複数のユーザが同時に操作
・デジタルの世界に欠けているもの。人間的な温もりや感動
・日本人が弱いのは「深み」、哲学
・自分の可能性を試すことが人間の生きる意味。普通の努力では出てこない。苦しんで自分なりの方法論を作る。独自の発想に到達。
・「人」を勉強する。人間はよくできている。複雑で、奥深い。それがわかれば人間に失望しない
・超能力の工学的な実現
・違うものを堕そうとすれば、普段から違うものを脳みそに入れておく。いいものを見ることがアイデアのレベルを高める。
・壊れた状態のガスがプラズマ。発光する。蛍光灯もネオンサインも一種のプラズマ。雷の稲妻も。空中に密度の高いレーザー光を作ると空気が壊れる
・自分の宣伝をしない。自分の好きに生きる
・空気で浮かせるエアロトレイン。電磁波や磁気シールドなどの課題がない。経済面、エネルギー面、安全面でも魅力がある
・微弱な生体電位信号を皮膚表面で検出。動きたいと思うだけで動作するロボットスーツ。人間の意思を先取りし、人間の動きより少し早く動く
・高等教育に必要なのは「学ぶ力」だけ。それがあれば、やりたい分野について勝手に自分で知識をつけたり、開拓したりする
・人間は進化をやめた種族。テクノロジーによって環境を変えることで、進化をやめた
・テクノロジーを体に埋め込もうとすると、生体防御システムが拒否し始める
・サイバニクス:脳、神経科学、行動科学、ロボット工学、心理学、IT技術、生理学などを融合。倫理学や社会学、法律にも関わってくる
・モバイルの自然な延長が、人にコンピュータがくっつくウエアラブル、モノにくっつくユビキタス
・自分がどうしたいのか、が未来を決める
・技術者の理想工場をつくる
・技術で人を幸せにしたい。人が主役となる技術。不自由が不自由でなくなる技術
・誰もやっていないから、やる意義がある
・機械はやりたいことから形が決まるべき
・自分だけのウルトラC。自分なりの攻め方
・人間は体験したものしかわからない
・タイムドメイン理論が生んだスピーカー:TIMEDOMAIN
・もっと無茶をする

-目次-
39歳でMIT教授に転身。まったくのゼロから創造した「タンジブル」の世界 ―石井裕
自分そっくりロボットに世界が驚愕。「人間とは何か」求めてアンドロイド開発 ―石黒浩
SFアニメが鍵。透明人間を実現した「光学迷彩」でインターフェース革命 ―稲見昌彦
度肝抜く空中立体映像。「日の当たらない研究」が次世代広告媒体を生む ―内山太郎
たった一人で恒星数500万個のプラネタリウム。すべてケタ外れに考えよ ―大平貴之
飛行機で新幹線。時速500キロの未来列車「エアロトレイン」という発想 ―小濱泰昭
人体密着型ロボットスーツが実用化へ。医療分野にも広がるビジネスビジョン ―山海嘉之
世界最速、時速370キロ。8輪駆動のクルマ「Eliica」の快感は加速感にあり ―清水浩
設計図なし。実家2階の寝室兼工房が舞台のクレイジーなロボット製作現場 ―高橋智隆
ウエアラブル伝道師の予言。「ヘッド・マウント・ディスプレイが未来を変える」 ―塚本昌彦
面白いことだけやるために脱・洗脳せよ!天才脳機能学者のエンジニア論 ―苫米地英人
ケータイ動画変換で世界を制す。カリスマプログラマが挑む情報伝達の新技術 ―富田拓朗
「ポストペット」の大ヒットのアーティストが語る、感動を仕事に変える方法 ―八谷和彦
ロボット界の異才が仰天発想。8本足のクルマが手探りで段差、坂道を登る ―古田貴之
ビル・ゲイツを驚嘆させたスピーカー「タイムドメイン」不屈の開発秘話 ―由井啓之