読書メモ

・「ベーシック・インカム入門 ― 無条件給付の基本所得を考える
(山森亮:著、光文社新書 \840) : 2011.07.03

ベーシック・インカム(基本所得)。この考え方には200年余りの歴史がある。 現行の社会保障制度がもつ、収入が途絶えたときの生活保障の基礎部分に当たる、基礎年金や雇用保険、生活保護を置き換える。 ベーシック・インカムにより企業は社会保険の使用者負担から解放される。雇用を増やすかも知れない。 無条件給付が特徴。

○印象的な言葉
・キング牧師の要求した政策「保証所得」。彼はシングルマザーたちの運動から学んだ。育児・介護などの家事労働への「生活賃金」として保証所得を要求。
・私たちが現在享受している社会の富は、過去の世代の労働の遺産からも成り立っている。その分は私たち全てが平等に継承できるものではないか。 私たちが平等であるなら、一定の土地を平等に与えられなくてはならない。
・本来共有であるはずの土地や、過去からの文化的遺産による果実の正当な分配
・生活保護がセーフティネットとして機能していない
・生存権を保障するためには生活保護予算を5倍にしなくてはならない
・社会が必要とする労働量は減少傾向にあり、雇用を前提とした既存の福祉国家の仕組みは立ち行かなくなってきている。 そうした社会により相応しい所得保障の仕組みとしてのベーシック・インカム。
・ベーシック・インカムの無条件性は政治的な支持を得にくいため、社会への何らかの貢献を条件にする
・ベーシック・インカムは部分的に導入されてきている。英米の給付型の税額控除はその一例

-目次-
第1章 働かざる者、食うべからず―福祉国家の理念と現実
第2章 家事労働に賃金を!―女たちのベーシック・インカム
第3章 生きていることは労働だ―現代思想のなかのベーシック・インカム
間奏「全ての人に本当の自由を」―哲学者たちのベーシック・インカム
第4章 土地や過去の遺産は誰のものか?―歴史のなかのベーシック・インカム
第5章 人は働かなくなるか?―経済学のなかのベーシック・インカム
第6章 “南”・“緑”・プレカリティ―ベーシック・インカム運動の現在