読書メモ

・「アニマルスピリット 〜人間の心理がマクロ経済を動かす
(ジョージ・A・アカロフ、ロバート・シラー:著、 山形 浩生:訳、東洋経済新報社 \2,200) : 2011.04.07

著者二人はアメリカ経済学界の重鎮。 アメリカ株式市場がバブルで、投資家たちの妙な思い込みがそれを牽引していることを指摘。

○印象的な言葉
・大恐慌が作り出した権力の空白が第二次大戦につながった
・経済学者や政府、世間一般が独善的になってしまった。大恐慌の教訓を忘れてしまった
・ケインズ主義的なマクロ経済政策には大きなへまもあった。1990年代の日本
・資本主義社会は創造性を発揮できる。政府はその創造性を邪魔してはならない。一方、なすがままにしておくと過剰に走りすぎる
・アニマルスピリット:人々の考え方や感情を律する思考パターン。重要な経済的出来事の原因はもっぱら心理的な性質のもの。 人間は経済以外の動機でも動く。不合理、間違った方向に導かれる。ケインズは人が行動するときの度胸一発という意味でこの言葉を使っている。血気
・従来の経済理論はアニマルスピリットの役割を無視してきた。私たちは安全だという経済理論のために安心していた
・ビジネスの不確実性に対して決断を下すのはアニマルスピリット。行動への突発的な衝動の結果
・自分が何者で何をやっているか、自分や他人の人生のストーリーと絡み合う。そうした物語の総和が国や国際的な物語となり、経済で重要な役割を果たす
・各種の問題をFRBがすべて解決なんかできない。安心が喪失して企業や消費者が消費したがらないときに標準的な金融政策の有効性は限られている
・中央銀行による公開市場操作の限界
・アニマルスピリットは最適な選択をする邪魔をする。人間は合理的になりきれないバカ
・ケインズの「一般理論」にはアニマルスピリットという言葉は2回しか使われていない。自身もそれほど重視していない概念だった。 従来の経済学がアニマルスピリットを考慮しなかったのは、知らなかったからではなく、どう理論モデルに含めるべきかわからなかったから

-目次-
第I部アニマルスピリット
第1章 安心とその乗数
第2章 公平さ
第3章 腐敗と背信
第4章 貨幣錯覚
第5章 物語

第II部 八つの質問とその回答
第6章 なぜ経済は不況に陥るのか?
第7章 なぜ中央銀行は経済に対して(持つ場合には)力を持つのか?
付記 目下の金融危機とその対策
第8章 なぜ仕事の見つからない人がいるのか?
第9章 なぜインフレと失業はトレードオフ関係にあるのか?
第10章 なぜ未来のための貯蓄はこれほどいい加減なのか?
第11章 なぜ金融価格と企業投資はこんなに変動が激しいのか?
第12章 なぜ不動産価格には周期性があるのか?
第13章 なぜ黒人には特殊な貧困があるのか?
第14章 結論