読書メモ
・「雑菌主義宣言!」
(齋藤孝 :著、文藝春秋 \1,238) : 2010.04.03
内容と感想:
帯に「心の免疫力」をアップせよ!と書かれている。
社会には「厄介でわずらわしくて不愉快なこと=雑菌」が溢れている。
そんな「雑菌的なものを拒否し、排除して生きるのではなく、あえて積極果敢に自分のなかに取り込んで、自己免疫力を高める」、
そうした習慣をつけていく、という生き方が著者のいう「雑菌主義」である。
タイトルも「これからは雑菌主義でいくぞ」と宣言している。
第6章ではその実践の宣言として「雑菌主義者10の宣誓」を掲げている。
本書ではそれらの宣誓に対する具体的な解説をして、我々を応援している。
生活が豊かになったのとは反対に日本人はヤワになった。
潔癖症とも言えるほどのクリーン社会・日本。清潔好きな国民だ。
アレルギーが増えているのは、それが逆効果になっていることを示しているらしい。
精神的にも打たれ弱くなり、失敗を恐れるあまり保身に走る。
若い人も冒険をしなくなり、安パイで行こう、といった風潮があるようだ。不景気のせいもあるかも知れない。
もうこのまま元気なく日本は衰退していくのだろうか?そうはさせたくないと著者は本書を書いた。
第3章には私も知らなかった事実が書かれていて驚かされた。
人間の体には常在細菌というものが大量にいて、外部の微生物の侵入から守っているそうだ。
中でも腸内には100種以上の細菌がいて、重さにすると約1キロ相当になるという。それがあるから生きていられる。
人体も雑菌と共生している、いや、生かされているのである。人間社会もこれに似ている。
同章の最後には、「多様な雑菌に対して、多様性をもって対峙する。多様性を受け入れることは、環境変化に対応して生き残れる種になること」と
雑菌主義の本質を述べている。
これは世界人類がもつべき思想でもあろう。多様性が持続可能な社会の実現、平和にも役立つ。今世紀のキーワードであろう。
○印象的な言葉
・時代はタフでチャレンジ力旺盛なクセモノを求めている
・慣れざるをえないことの蓄積、抵抗力、鈍感力、適応力、復元力。躾。置かれた状況を自然に受け入れる、修行と考える
・ビジネスフェロモン:雰囲気、オーラ、感化力、あふれ出るエネルギー、経験知、決断力
・夢を追わない
・抜けのいい開いた筒
・「ほ」の身体。「は」行で応答
・指揮官の感染力
・経験知の乏しさ。楽な方、より不快でない方を選ぶばかり、結果として不利益を被っている
・心を蝕む極悪な菌「マインドコントロール」
・青い目、茶色い目:差別する気持ち、差別される気持ちを両方体験させる教育
・「異」性の排除は社会の均質化、狭量化を生む。差別、不寛容。異なるゆえに価値がある。←→雑より純がよいという発想(単一民族と思い込んでいるから?)。
・管理社会の真綿で首を絞めるような息苦しさ
・雑種文化(加藤周一):日本人は外来のものを受け入れやすい。東洋文化の吹き溜まり(→現代は受け入れるだけの価値あるものがなくなった?)
・雑種の強さ、生命力
・フェロモン。人は自分の遺伝子と配列が離れた人の匂いを好ましいと感じる
・無境界人として生きる
・永田農法:植物を飢餓状態に追い込むことで、本来もっている力を最大限に引き出す。水分・栄養は最も欲したときに与える
・人間の魅力:知性、才覚を上手に活かす
・弁証法的な成熟:矛盾をパワーとする。自分と対立するものを取り込むかたちでステップアップ。人間も宇宙も弁証法的な発展を遂げてきた(ヘーゲル)
・グレーの中で自分の答えを導き出していかなければならない
・免疫系は外界から異物が入ってこないと、バランスを崩し、反応しなくていい相手に反応するようになる。アレルギーのメカニズム。
(→犯罪者の心理もそうかも?戦うべき相手を間違えている)
・胃や腸は解剖学的には体の外。粘膜を介して外界と接触している。チューブ(管)としての人間(多田富雄)
・世襲議員対策:親や親類縁者の選挙区からは立候補できなくする
・点数はそれなりに実力を示す。数値化が問題でなく、試験問題の質が大事。数値は課題をクリアにする。
「数字がすべてじゃない」というのは客観的評価の軽視。現実を無化しようとする風潮。現実逃避
・本当の自分は探しに行くものではなく、常に自分のいるところにある
・英語のナイーブ(naive)は否定的なニュアンスが強い
・一党独裁は雑菌を認めない考え方。民主主義、自由主義には自然な生命力の強さがある
・ディズニーランドのような無菌世界。(→その逆の世界がこの世に多過ぎる)
・反省は今日のうちに終える。
・経験したことのないことを経験できるのは楽しい、幸せ
・インナーゲーム(ティモシー・ガルウエイ):セルフ1は頭で考える、セルフ2は潜在能力を働かせる
・「自分はツイている」と思う人だけ採用する
・教師の資質:要領よく話す、授業をデザインする、人を惹きつける
・やがて自分の時代が必ず来ると確信して、流れを待つ。ステップアップのための雌伏のとき。エネルギーを溜める
・仕事は自己実現の場ではない。他者のリクエストに対して応えていく「他者実現」
・英文原書を音読破する。和訳を先に読んでおく
・エネルギーの根幹的な形は渦巻き模様。星雲、竜巻、渦潮、台風などがもつ渦の力
・ちょっと力の抜けた言葉のほうが自分を鼓舞する場合もある
<感想>
・日本経済は成熟プロセスにあるが、日本人、社会は成熟できていない
-目次-
第1章 ヤワな心に免疫を ―「雑菌主義」宣言!
第2章 心の免疫力を高めるプロセス
第3章 クリーン社会の落とし穴
第4章 なぜあなたは打たれ弱いのか
第5章 負けて勝つ発想、タフに生き抜く適応力
第6章 雑菌主義者10の宣誓
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