読書メモ ・「金融恐慌とユダヤ・キリスト教」 ・冷戦後、政治の季節から経済の季節へ。外交の重要性が低くなった ・宗教が経済を支配。宗教と経済の隠れた関係。西欧ではユダヤ、キリスト教が社会生活に深く浸透しているため、意識することが少ない ・禁欲が資本の蓄積を生む。節約が強制され、消費を阻止された結果が、資本主義の精神を発展させる基礎になる ・土地の所有は神に反する ・聖俗一体のイスラム教。商人出身のムハンマド ・経済成長が続いている時代には成長戦略は不要 ・グローバル化、情報化で多国籍企業や国際的なファンドが国家を凌駕。国民国家の衰退 ・今回、大恐慌と呼ぶほどの根本的な変化は起こっていない ・危機に直面したときに自動的に世界が崩壊する予兆として解釈してしまう回路が形成されている。キリスト教の信仰の核心には終末論がある ・日本では深刻な危機が起きても終末論に解釈されることはない(→輪廻の思想か?) ・米国では不祥事があっても契約をたてにボーナスを貰うことは当然と主張する。日本なら世間の厳しい目に晒される。自責の念。 ・イエスはユダヤ教の宗教改革家、預言者の一人。ユダヤ教を根本から革新するものではない。ユダヤ教は固有の開祖をもたない民族宗教。 キリスト教とイスラム教は開祖をもつ創唱宗教 ・父親に愛されない弟の悲劇は繰り返しアメリカ映画のテーマになった。父親越え。父殺し ・イスラム教では神の慈悲深さが強調される。創世記とは異なる神観念 ・ユダヤ教徒もキリスト教徒も知識階級でなければ旧約聖書を深く読み込んでいるわけではない ・宗教や信仰が社会的な影響力を失う「世俗化」。先進国の大都市部で進行 ・最初キリスト教はローマ帝国の支配に抵抗したが、ローマ帝国の国教としての地位を確立すると権力を擁護し、権威を支える体制的な宗教となった ・出家のある宗教は限られる。仏教、カトリック、東方教会のみ ・16世紀の宗教改革でプロテスタントの諸宗派が生まれた。ルターは教会の金儲け主義を堕落だと批判。教会の権力や権威を認めない代わりに神の絶対性を強調。 ・世俗の世界における禁欲の手段としての労働の意義。労働に対する意欲があることが救済を予定されている証。労働し富裕になるのはよいこと、と金儲けが正当化された。 ・根本主義:それぞれの宗教の原点に回帰する立場 ・アメリカのキリスト教原理主義には下層の白人が多い。格差の拡大と関係する ・マルクス、エンゲルスの「共産党宣言」には国家をいかなる形で運営していくか、具体的な政策は説明されていない。資本主義の矛盾を解消し、人間的で豊かな社会になるか、 その具体像を描き出すまでにはいたらなかった。 ・各宗教では地獄はより詳細に描かれるものの、天国や極楽はそれほど詳細ではなく、人をそこに誘うような魅力をもっていない。理想とする世界を描くことは難しい。 ・マル経は資本主義社会をより安定したものにするための政策を考えようとはしなかった。崩壊せざるを得ないことを明らかにしようとした。共産主義の必然性を示そうとした。 社会運動家、革命家としての使命感。 ・日本人はマル経の宗教的背景を無視することで純粋な唯物論として受け取った ・ケインズは資本主義社会の危機を回避する具体的な、実現可能な方策を示した。終末論に陥ることはなかった ・経済学は自然科学と異なり、実験ができない。理論の有効性を検証できない ・財政出動のような景気刺激策をとらねばならないということは、市場には自動調整機能が働かないことを意味する ・国民国家は次第に社会福祉や社会保障を大きな柱にするようになった(→資本主義の矛盾が生んだのか?人類が堕落したのか?) ・欧米で発達した経済学は根拠の薄弱な前提によって立つ神学的な試みに見える。 ・イスラム教では断食は禁欲的な苦行とは考えられていない ・イスラム金融の歴史は浅い。複雑化し、迅速さを求められる現在の経済状況の中で果たして十分に機能的なのかが問われている。法学者による判断も恣意的なものに終わる危険性がある。 判断が下るまでに時間も要する。 ・イスラム金融との対比により、倫理や道徳の問題を置き去りにした現代の経済学に対する批判にもなる ・明治政府は神道は「宗教にあらず」、国民全体に共通する社会的な習俗とした ・一神教の終末思想と仏教の末法思想は共通性があるが、決定的な差異は、終末思想では世の終わりをもらたらす主体として神が想定されていること。仏教では主体が想定されていない。 ・日本で神の代わりをしてきたものは村落共同体。村で祀る氏神が村を統合。共同体の規制が働いているところでは自己の利益のみを追求する方向には向かわない ・日本が強力な神への信仰を必要としなかったのは他国に侵略され、支配されるという歴史を経てきていないため <感想> ・冷戦後、米国の軍産複合体は新たな敵を必要とした。それを国際的テロ組織に決めた? ・ユダヤ教色のある映画とはどんなもの? ・かつて東側の共産主義者たちは信仰を捨てたのか? ・無宗教と無党派の共通性は? ・多神教に飽き足りなくなった人々(純粋な信仰をもつ人々)が西を目指し欧州に移動していった?次第に一神教的な信仰に純化した? ・戦後、生き残った日本人は末法思想を思い浮かべただろうか?結局、神風は吹かなかった。絶対神を信じていない -目次- 第1章 終末論が生んだ100年に1度の金融危機 第2章 ノアの箱船に殺到するアメリカの企業家たち 第3章 資本主義を生んだキリスト教の禁欲主義とその矛盾 第4章 市場原理主義と「神の見えざる手」 第5章 マルクス経済学の終末論と脱宗教としてのケインズ経済学 第6章 なぜ経済学は宗教化するのか 第7章 イスラム金融の宗教的背景 第8章 日本における「神なき資本主義」の形成 |