読書メモ

・「わが友、恐慌 ─これから日本と日本人の時代が訪れる8つの理由
(松藤民輔 :著、講談社 \1,400) : 2010.05.22

内容と感想:
 
リーマンショック直前の2008年7月に出た本。 金鉱山のオーナーとして、投資家として、世界経済と、その中の日本と日本人について書いたコラム集。
 タイトルからも分かるように著者は、どちらかといえば恐慌をチャンスと捉えている。しかも日本と日本人にとって。 「恐慌は時代を洗濯する夢の塊」だと書いている。 今回のサブプライム危機の、悲劇の主人公は金融のプロたちだったという。 プロであればあるほど悲惨な目に遭った。 「自分たちは金融のプロだと思い込んでいるから、余計にたちが悪い」。
 プロたちが身包み剥がされた後、カネに臆病な普通の人間(日本)の時代がやってきたのだ。 バブルの傷を癒すので精一杯だったし、勝負をして勝ち得た事態ではない。敵失とも言えるが、我々は積極的な臆病者ということにしておこう。
 本書では色々とユニークな見方を披露してくれている。 例えば、中国で資本主義革命が起こると予言している。 恐らく現在の中国バブルの崩壊を想定していると思われる。大損した個人投資家たちによる内乱が起き、彼らが台湾や香港と手を結ぶのではないかと 彼は考えている。中国政府当局も加熱するバブルの落としどころを決めかねていることだろう。
 「あとがき」ではNYダウの下落は2009年10月まで続くと書いている。 実際にはご存知のとおり、08年7月以降には下落を始め、急落を挟んで、09年3月まで下げ続け、そこで反転した。 著者の予言よりは早く立ち直っている。二番底があるのではと、現在も緊張が続いているが今のところは、何とかもっているという状況。 欧州の財政危機もあるし、私にもこの先どうなるか分からない。

○印象的な言葉
・サウジアラビアには宗教警察がある
・恐慌になると革命的なテクノロジーの発明がやってくる
・孤独という知人、歴史という友人
・環境問題はCO2排出権問題にすり替えられ、新たなビジネスとして完成に向かっている。環境という錦の御旗のもとで堂々と嘘を付く
・ひらめきに最適な環境:馬上(鞍上)、枕上、厠上
・原油が高騰した結果、石炭が復活してきた
・原油の高騰はガソリンに代わる新エネルギーがもたらされることを約束する
・中国(北京)は台湾と香港から乗っ取られる可能性がある
・中国で資本主義革命が起こる。壮大な内乱的な革命。大損した個人投資家たちによる内乱。彼らが台湾や香港と手を結ぶ。
・金融機関がお金を貸そうかと近寄ってきたら危ないと思え。簡単にお金を借りられるときは簡単に自滅するとき
・金融の仕事をするためには歴史を学べ
・プロから見れば、株式、商品、債券、不動産などは連結された一つの市場
・漆器は英語でのつづりは小文字で「japan」。陶器は「china」
・漆には接着剤の役目がある。日本は何でも受け容れ、何でもくっつけてしまう国。文化、技術、食など、接合国家日本。世界をくっつけていく役割を! 腐蝕防止効果もある。紫外線には弱い。
・切腹という死の作法を持つ日本人。死を恐れなかった。辞世の句まで詠む。
・自由、平等、博愛。人はできていないことほど標語に掲げるもの
・きめ細かいサービスをさせたら日本人は世界一
・負けない戦略をもつことはストレスがかからない:勝とうとすると欲が出る。見たいものが見えなくなる。
・独自性のために真似る

-目次-
第1章 僕たちが生きる世界
第2章 バベルの塔とマーク・アリムラ
第3章 ブラックマンデーと天才エリック・スプロット
第4章 悲劇と革命
第5章 紀伊國屋文左衛門とタミーの賭け
第6章 凡人と天才
第7章 日本の錬金術
第8章 都市鉱山とリサイクルジャパン
エピローグ 常識では考えられない物語