読書メモ

・「鬱の力
(五木 寛之、香山 リカ:著、幻冬舎新書 \740) : 2010.12.28

○印象的な言葉
・人間本来の感情である「鬱」と「うつ病」は分ける
・無気力な人は鬱にはならない
・泣くこと、悲しむことから力をもらう。涙は魂を浄化する(カタルシスの理論)。無意識に抑圧された葛藤が表出できれば症状が消失する
・鬱の悲しみは仏の悲しみ
・人生は苦である
・鬱のままに生きる
・毎日胸を痛めるニュースばかりでは気分がすぐれないのは当たり前。人間らしさを残している証拠
・傷つきやすい繊細な感覚の持ち主ほど辛い。
・戦後、半世紀続いた「躁の時代」から「鬱の時代」へ
・鬱:エネルギーと生命力に溢れていながら、発揮できず、モヤモヤしている。感情の出口を塞がれ、発酵する
・統合失調症:想像力の過剰から生まれる
・コーヒー、コカインはダウンしていく気持ちをアップさせるもの
・怪我は消毒せず、水で洗って、ナプキンを当てて、サランラップで密閉する
・世間という縛りがなくなり、最期のよすがもない
・日本人は変幻自在に自分の立場を変えたり、求められる役割に自分を合わせることで葛藤を避けてきた。深刻な鬱になりにくい(⇒小沢一郎?)
・悟りを開いた偉大な人間・仏陀に憧れて信仰し、帰依、尊敬するのが仏教。
・人間が宗教的関心をもつきっかけは人生の悲哀
・絶望ばかりの一日の中にも必ずありがたいことはある。まだ恵まれている
・鬱の文学の系譜:漱石、龍之介、賢治
・一番悩んでいるのは市場原理の真っ只中にあるところと、情報の先端にあるところと医療
・精神医学はこれまで必死に科学になろうとしてきた
・インフォームド・コンセントとはいえ、医師と同じくらい勉強しなければ理解できない。患者本人に治療方法を選ばせてもメリットはない(⇒理解、選択に時間がかかる。結局、一か八か)。
・昭和の初めには町には変わった人がいっぱいいた。それを抱え込み許容していく社会だった
・うつの問題と、コミュニティの崩壊、地域の問題は重なる
・年寄りも気を遣っている。家族に迷惑をかけたくない
・自殺は残された人にも心的傷害を残す。残された人たちが罪を互いになすりつけ合う。
・自殺した親と同じ年になったときに子供が、自分も自殺してしまうのではないかと不安になる。なぜ救えなかったのかと自分を責める
・ラジオの声:自分ひとりだけにささやいてもらっているような感覚
・文明にも賞味期限がある
・狂騒の時代の前には退屈な時代、豊かだが閉塞感をもっている時代があった
・日本が戦争したのは鬱のエネルギーが外へ向かって暴走したもの
・心の病気は伝染しうる(⇒マスコミの発達で急速に伝染する)。イギリスには「英国病」があった
・阿弥陀様が迎えに来て浄土へ行けると自己催眠をかけられる人は死に対してジタバタしない
・ブータンでは葬式をしない。生まれ変わるから墓もつくらない
・ただ我慢することを、どうしのいでいくか。それを楽しみ、文化にする
・哲学者や思想家は鬱の中で考えている。自分の精神、魂、内面に目を向ける
・下山をする準備。ダメージを少なくしながら。下り坂をゆっくりエレガントに下りていく。減速の美。下界や周りもよく見える
・憂える:他者へ向けての発想
・ゴータマは理をもって同時代人に語ろうとした。そこにはスピリチュアルな影はない。彼の言葉が大きな影響を与えられたのは、その論理と全人格的な人間性による
・どの国、どの民族にも鬱を排除しないで内包する思想がある

-目次-
はじめに ―時代は「鬱」へ向かう
第1部 鬱は「治す」ものなのか
第2部 日本社会は劣化したのか
第3部 「鬱の思想」を生きる
おわりに ―鬱は力である