読書メモ

・「世界経済危機 日本の罪と罰
(野口 悠紀雄 :著、ダイヤモンド社 \1,500) : 2010.06.14

○印象的な言葉
・金融危機の共犯者:アメリカに資金を供給した国、日本、中国、産油国。日本は低コストの資金を全世界にばら撒いた。日本は利益を享受していない。 アメリカに食い物にされ、これからも大きなつけを払わされる。責任は政策担当者、政治家、経済界の指導者、金融緩和を煽った学者にある。 警告を発し、国民に意識を喚起しえなかったマスメディアの責任。
・個人の能力を発揮できるよう日本社会の仕組みを変えること
・農家対策があるだけで農業政策がない。生産性向上には集約化や大規模化、農業法人の導入や農地の売買自由化が必要
・アナリストの予想の類は経済理論的に何の根拠もなく、何の役にも立たない。ある種の目安は示す
・景気後退は日本のほうがアメリカより深刻になる。日本経済の本質にかかわる問題が起きている
・2002年以降の景気回復は金融緩和と為替介入による円安で対米輸出が拡大したから。いつまでも続く性質のものではなかった
・今、問われているのはこれまで温存されてきた日本の古い産業構造
・為替レートが2007年末以前のような円安に戻るとは考えにくい
・日本の貿易依存度(輸出や輸入額のGDPに対する割合)は世界でも最も低い部類
・食料・原材料輸入より製品輸入が多くなっている
・優先株:議決権がない。配当金や会社清算字の残余財産を優先的に受け取る権利
・転売が巨額の利益を生むのはバブルの顕著な特徴
・ROEは借入比率を高めれば高まる
・マクロ的要因によって生じたリスクに証券化では対処できない
・信用デリバティブ:リスク移転を可能にする。適切に使えば生活を豊かにする
・90年代のアメリカ経済の繁栄には冷戦終結の配当があった
・アメリカでは住宅ローン利子が所得税において所得控除される
・日本は経常収支黒字を国内のインフラ整備に回せば、アメリカ並の住宅環境を実現できた
・アメリカの経常収支赤字が巨額である限り、国内では次々に形を変えた金融危機が顕在化する
・かつての日本の不良債権処理が複雑化したのは不動産の投機的取引に闇勢力が絡んで処理が難しかった
・産油国はオイルマネーをイギリスに持ち込み、そこからアメリカなどに投資。産油国は資産運用のノウハウをもたない。英国の金融的仲介活動は不可欠
・アメリカは脱工業化し、製造業の利害が政治に反映されなくなった
・生産現場だけが強くても、財務部門が強くなくては困る。工場で稼いだお金を奪われてしまう
・金価格と原油価格の関係は10対1。農産物もこれとほぼ同じペースで推移
・食料は保存できるとしてもコストがかかり、品質が劣化するため投機の対象にしにくい
・食料自給率が低いという強迫観念はカロリーベースの指標により不当に増幅されている。自給率の基本はエネルギー(特に原油)で決まる
・米輸入が増加すれば海外でも日本人の嗜好に合わせた品種の生産が行なわれ、価格面と質の面でも改善され、豊かな食生活を享受できる
・食料の安定供給に必要なのは供給源を全世界に分散すること
・日本のエンゲル係数は先進国の中ではかなり高い。輸入規制(高関税)のせい
・自給率を高めれば食料に対する支出は増加する
・少子化を考えれば、不動産価格は長期的に低下していく
・Googleの広告費は安く、不況でも広告費は削減されず、かえってGoogleは成長する。海外打ち上げ比率は52%。
・市場で何が起こっているか分からなくなっているときは、危ないので近寄らないほうがよい
・十分な分散投資をするにはある程度の資金量が必要。個人で確保するのは難しい。投信を利用するのが賢明
・国内外の金利差の利益は、為替差損でオフセットされる
・円高とは日本人の労働価値が高く評価されていること
・日本への海外からの直接投資の比率はGDPに対して2.2%
・債務国でありながら所得収支をプラスにしている英国、米国
・今回の金融危機はファイナンス理論が使われたために起きたのではなく、使わなかったために起きた。リスク資産の評価が適切でなかった
・経済混乱時は起業のチャンス。旧秩序が邪魔しない、起業のコストも低下
・クラウドコンピューティング:小規模企業の生産性が向上。起業の初期コストが大幅に低下する

<感想>
・リスクの大きさには時期によってバラツキがあるのでは?分散投資が有効な時期もあれば、集中投資が有効な時期もあるはず

-目次-
序論 100年に1度の世界経済危機
第1章 崩壊した日本の輸出立国モデル
 1-1 なぜ日本の株価が激しく下落するのか?
 1-2 日本の輸出立国モデルは崩壊した
 1-3 「日本の出番」どころか、日本の大危機
 1-4 自慢できない日本の不良債権処理
第2章 アメリカを襲った金融危機の本質
 2-1 アメリカ住宅価格バブルの膨張
 2-2 金融危機の進展
 2-3 金融工学が元凶か?
 2-4 CDSとは何か?
第3章 モンスターを生んだアメリカの過剰消費
 3-1 過剰消費でアメリカの経常収支赤字が拡大
 3-2 経常収支赤字は持続できるのか
 3-3 アメリカの経常赤字が日本の黒字を増大させた
 3-4 アメリカの経常赤字の縮小は不可欠
第4章 対米黒字の還流がグローバルなバブルを生んだ
 4-1 資本取引による黒字還流のメカニズム
 4-2 円安バブルの進行
 4-3 投機の破綻
第5章 原油・食料品の価格問題は解消したのか?
 5-1 暴騰と暴落 ──一次産品価格の動向
 5-2 金融政策の方向づけ
 5-3 食料価格問題の解は自給率引上げではない
第6章 世界経済と日本経済はこれからどうなるのか?
 6-1 今後の経済危機はどのように進展するか?
 6-2 株価と為替レートはどうなるか?
 6-3 投資銀行モデルの終焉
 6-4 デカップリングするアメリカ
第7章 危機克服のためにすべきこと
 7-1 資産の運用はどうしたらよいか?
 7-2 円高のメリットを正しく評価しよう
 7-3 必要なのは日本経済の構造大転換
 7-4 危機こそチャンス