読書メモ
・「アメリカの日本潰しが始まった」
(日高義樹 :著、徳間書店 \1,400) : 2010.05.08
内容と感想:
アメリカでのトヨタ車のリコール問題はことの他、露骨で大袈裟だった。
大企業と労組に操られるオバマ政権。魂胆がみえみえのトヨタ叩きは日本叩きの手始めに過ぎない、というのが本書のテーマ。
日本企業を叩くことでアメリカ国民、特に失業者の不満をそらそうとしているのだ。
トヨタのイメージを壊そうとしても、それも時間稼ぎにしかならないだろう。
ビッグスリーがその間も競争力のない車を作り続けるのであれば先は見えている。
トヨタが多くの工場をアメリカ全土に持ち、多数の労働者を雇用していることも忘れている。
オバマにはそうしなければいけないほど焦りがあるとも言える。
つまり、日本叩きは日米の経済戦争の一環であり、
中国など新興国市場を巡って日米の冷たい戦いが始まっているということなのだ。
オバマは「change」と叫ぶだけで「何をどう変えようかという思想も構想もなかった」と第四章で酷評している。
「自分たち自身の利害や狭い地域の利益だけに関心」があると。実際、オバマの支持率は下がってきており、不支持も増えている。
米政府には「今後さらに経済を拡大させたり、緊急事態が起きた際に対策をとるための資金がまったくない」のが現状で、
大規模な景気対策効果がそろそろ薄れてくると言われているから、この先もアメリカ経済は一波乱あってもおかしくない。
第六章では安全保障について、「アメリカは日本を守る道徳的な義務もなければ責任もない」、
日米の「どちらかが日米安保条約を終わらせようと思えばやめることができると決められている」と述べている。
それは無用な対立を煽るものではないが、下手な外交をしていると信頼関係は崩れかねない。
アメリカが日本を攻撃し始めているのも、警戒心の表れである。
日本が自国の安全を自分の力で守れるようになり、真の独立を果たすためにどうすべきか真剣に考えるべきだ。
ずっとアメリカが守ってくれると考えているようでは幼稚だ。
○印象的な言葉
・アメリカの金融機関は再び危機に陥る。危機を逃れたわけではなく、先延ばししただけ
・中国は西部大開発で経済を拡大。西部は中東、中央アジアやロシアの産油地帯への足場
・中国は老齢化と水不足で限界に
・アメリカ政治ではお金のやりとりが露骨、権力闘争が生生しい。企業の政治資金の規正はゆるい
・オバマへの献金:労働組合、特にUAW、ウォール街、巨大製薬会社など
・オバマ政権の汚職や不正はアメリカのマスコミ報道からは伝えられない。マフィアがらみの汚れた政治資金
・自動車労組は労働者を甘やかし、政治的に利用することばかりを考え、製品への努力をしてこなかった。中小の関連企業いじめや経営妨害もした。
・世界中でトヨタにかなう会社はない
・太陽エネルギーは既に失敗に終わった。コストが高すぎる。次世代エネルギーにはならない。クリーンエネルギー政策は実効性が全く無く、一年間ですべてのプロジェクトが破産
・オバマは沖縄の基地に関心がない。関心があるのは海兵隊だけ。
・オバマの大企業救済、国営化は国家主義。その企業を友人に分け与えている
・オバマは中国との対決を怖がっている
・オバマは自己満足と自己肥大で、世の中を正確に把握できなくなっている。支持率も下がり彼の再選を求める人は少数派。
・向こう2,3年間は1000〜1300万の失業者であふれかえる
・オバマの景気回復策の費用は大企業に与えられ、海外事業に投資され利潤をあげているものの、国内雇用や産業には貢献していない。
中小企業を基盤とする全米商工会議所はオバマを非難。民主党を使っているのは大企業。共和党は中小企業が動かしている
・「年金がなくなってしまう」というネットの言葉がアメリカの人々を恐慌に陥れた
・医療保険法の改正は製薬会社や保険業者を助けるため。貧しい人に対するというのは見せかけ。国内を政治的に二分した
・オバマは石油大企業を敵視
・ドイツは危機を乗り越えるために扱いやすい政治家としてヒトラーを選び、傀儡として使おうとした
・アメリカ人は若いオバマに好きなことをさせておく余裕がある。危機に陥れるほどではない
・オバマの当選は民主主義システムが驚くほどうまく機能したことに対する誇りを反映
・サマーズ、ガイトナー、ボルカーは権力の中枢から遠ざけられた
・アメリカの新聞、テレビはすべて大企業に支配されている。公正な報道機関とは言いがたい
・アメリカでは大企業は大衆の敵
・Tea Party:オバマ政権の社会主義的な政策に対する地方の反乱。医療保険制度改革に反対、増税にも反対
・新興国の資産を高くすることでアメリカの金融は回復してきている。また新たなバブルを生み、危険な状況を作り上げている
・ケネディはソ連のエージェントにより暗殺された
・アメリカの大企業と労組は中国志向
・オバマには政策スタッフがいない、政治的な友人もいない。経済界や学界の応援もない
・オバマ政権は自由貿易に反対
・台湾への兵器の売却に中国が本気で腹を立てていないのは、それらが新たな軍事的脅威ではないため
・中国が大量に米国債を保有し、金融崩壊を防いでいる中では中国批判を厳しくできない。オバマは中国に軽く見られている。オバマは共産主義を受け容れている
・中国は民族国家ではなく文化国家。文化が主体で国を形作っている。アメリカも同じ。
・中国共産党は政治的な弾圧によって国民をロボットのように支配できる国にしようとしている。それは人類の歴史の大敗北。中国人は食べることができれば政治はどうでもよい。
・中国の銀行や企業の払う税金はほとんどが軍事費や役人の経費に消えている
・日本人特有の性急な短気さが太平洋戦争に突っ込ませた
・日米は歴史的に世界で遅れて近代国際社会の仲間入りをした。同じ時期に東アジアでの国益を求めて対立した
-目次-
第1章 トヨタ叩きはアメリカの国家戦略である
第2章 アメリカの失業者は減らない
第3章 アメリカの景気回復は失敗した
第4章 景気が良くなればハイパーインフレーションが来る
第5章 アメリカの安いドルが中国経済をバブルにした
第6章 アメリカの日本企業潰しが始まった
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