読書メモ

・「シンプル族の反乱 〜モノを買わない消費者の登場
(三浦展:著、KKベストセラーズ \743) : 2010.10.09

内容と感想:
 
本書によれば「シンプル族」は若い世代、特に女性に多いという。 物を買わない、テレビを見ない。物を買うときはネットで情報を集め、吟味し、比較考量し、納得してから買う。 ユニクロ、無印良品のようなシンプルなものを好むようだ。 主に団塊ジュニア世代が中心らしい。
 そうした性向となった理由としては、既に十分豊かで、満足しているし、情報だけで満足できる。 所得も低下してきて、将来にも不安があり、貯蓄したい。 無駄なものを買うことに罪悪感も感じ、消費よりも他にやるべきことがあることに目覚めた、ということらしい。
 それは「進歩の終わりの時代の人間像」だと著者はいう。 我々は進歩の価値が見出せなくなったのだろうか。 あまりにも進歩、進歩と急かされてきた反動が来たのか。 いや、それは国民の成熟度を示すのではないか。消費に対して賢くなったということだ。 若い世代はもう経済成長なんてしないことを理解している。時代に適応しているだけなのだ。
 第2章ではシンプル族へのインタビューが載っている。 徹底ぶり、こだわりを感じるが、どこか極端で原理主義的というか、無理をしているように感じた。
 シンプル族の分析に続いて、今後、企業は彼らに対してどんな商品を企画し提案していけばよいかを考えている。 大量消費社会に合わせて設計された従来の組織では対応できないだろう。 日本はデフレ社会だ。それに適応して成長しているユニクロは参考になるが、真似をしたところでシンプル族には見透かされるだけだ。 様々な業界が今、団塊世代に次いでボリュームのある団塊ジュニア世代に、お金を使ってもらおうと頭をひねっていると思われる。 彼ら全てがシンプル族ではなかろうが、本書はその生態、嗜好を知るには参考になるだろう。

○印象的な言葉
・エコ志向、シンプルライフ志向、ナチュラル志向(自然食品・素材)、レトロ志向、和志向
・手作りしたい、改造したい、手入れしたい
・職人が作ったものの魅力、工芸品・民芸品、本物感
・余計なデザイン、色、機能はいらない。無駄をそぎ落としたマイナスの美学
・飽きの来ないデザイン、センスがいい、渋さ、素朴さ、ベーシック
・地場のもの、地産地消、古い町、下町、味がある、伝統・歴史、しきたり、老舗、古着、古民家、田舎風、永続性、文化の厚み、奥深さ、懐の深さ
・遊び心
・Caltural Creatives:文化創造者。ストーリー性(わけがある、理由がある)や薀蓄好き。 本物志向、慎重、吟味、知的、利他的、ボランティア志向、自己実現志向、プロセス重視、正統派、説得力
・質の高い時間を過ごす、ゆとり、安らぎ、ゆったりとした時間、心の贅沢、なごみ、温もり、癒し
・アメリカへの憧れはない(→薄っぺらな文化、不味い食事など底が見えた)
・あまりに合理的、効率主義的な考え方への疑問、大量生産・大量消費社会への疑問
・ボボス(Bobos):ブルジョア・ボヘミアン。裕福だがライフスタイルは自由人
・見栄を張らない、競い合わない、カジュアル
・個人の自由を担保しつつも、共同体に所属して安心を得たい
・消費に倦怠した現代人はいずれ社交に喜びを見出す(山崎正和)
・企業の論理で物を作り、浪費させる時代の「終わり」の始まり。過剰に浪費を煽る企業ならもう不要
・消費者が最低限の買い替えをするだけでも経営が成り立つようなシステム(→既存企業には難しい課題)

<その他>
・表紙のマークはユニクロを意識したものだろう
・3章「シンプル・プラスアルファできるか?」⇒矛盾。プラスαしたらシンプルじゃなくなる
・「技」を盗むためのビデオ作り
・パワースポット(→手近な山の中ならどこにでもあるじゃないか)
・インターネット句会。たまにはオフラインでも

-目次-
第1章 シンプル族とは何か?
 自動車離れが進んでいる
 自転車の人気が上昇 ほか
第2章 シンプル族の価値観とライフスタイル
 シンプル族の生活原理
 シンプル族の志向性 ほか
第3章 シンプル族の衣食住遊
 シンプル族の特徴
 シンプル族の「衣」 ほか
結 シンプル族がつくる社会
 シンプル族は中流の質的変化
 シンプル族がつくる「共費社会」 ほか