読書メモ

・「衆愚の時代
(楡周平:著、新潮新書 \680) : 2010.08.15

内容と感想:
 
偽善マスコミがもっともらしい奇麗事を並べ、国民をミスリード。そして誤った世論が形成されていく。
 「あとがき」にもあるが本書を書いた理由として、 「テレビに出ているコメンテーターの無責任な言動が目に余ると感じたから」、 「当たり前のことを、当たり前に口にするのが憚られる社会というのは間違っている、と思ったから」と書いている。 テレビなどメディアでは本音を吐かない者たちへの怒りや、そうした空気への疑問などが本書には込められている。 マスコミが取り上げそうな社会問題、派遣切りや欲がなくなった若者たち、仕事観、資産運用や経済政策、などに対して、 メディアがいかに偽善的で無責任か、空論を吐いているかを指摘しながら、本音を語っている。
 本書が出せるのも現状に疑問を持つ一定のマスが存在すると考えたからだろう。大衆が衆愚に成り下がったのはGHQ愚民政策、日教組の成果なのだろう。 「衆愚」という表現は上から目線なのか、自虐的なのかタイトルを見たときは分からなかったが、多分マスコミは国民をそう見ているのだろう。弱者ばかりだと見ている。 実際には愚民と思われている我々国民はメディアが思っているほどそんなに馬鹿ではない。 マスコミが上から目線なのだ。バカなくせにそうだから始末が悪いのだ。もはや下らない番組を垂れ流すテレビには国民は愛想をつかしている。その自覚がない。 マス媒体の広告収入が減っているのもマスコミの凋落を意味している。
 「公の場で物言う人は、善人を装わなければならない。そんな社会は、物凄く不健全であり、不幸な社会である」とも言っているが、 キャスターや、コメンテーターとしてテレビに出演する人たち、新聞記者らへの同情にも聞こえる。同情されるくらいなら、出演しないほうがいい、書かないほうがいいだろう。 偽善者と指差されるだけだ。そうした物言いが視聴者や読者が望んでいるのだろうか?望んでいるとしたら彼らと同類ということになる。 本音と建前というが、不安や不信が広がっているからこそ、本音が求められているのではないか。 奇麗事でお茶を濁しているだけでは何も改善されない。
 いま、「社会の公器」としてのマスメディアが問われている。崖っぷちだと思うが、危機感はあるだろうか? 一番はそんなメディアはボイコットすることだろう。目が覚めるはずだ。

○印象的な言葉
・いい人になるのは簡単。耳ざわりのいい言葉を操り、困窮した立場にある人間、弱者側に立ってものを語ればいい。本音は吐かない→本音を言え
・「べき論」ばかり、自分たちがやっていることはどうだ?善人を気取って平然としている
・賃金格差は誰でもできる労働か、そうでないかで生じる
・誰もが望む職種につける社会はありえない
・自分が職務をまっとうするに相応しい能力を持っているのを客観的に示せぬ人間を職に就けることは認められない
・過剰サービス
・弁当は社会の縮図
・熟練を要さない、標準化された単純労働に派遣労働は認めるべき
・非正規雇用を生んだのは消費者。一円でも安い方がいいと行動した結果
・マスが低所得者ばかりとなっては売れるものも売れない
・生まれたときから車があった世代には関心が向かない
・物に不自由せず、競争しなくてもいいと言われれば、向上心、強い意思を持っていないと堕落する
・メディアが「問題」と報じると、社会、果ては政治、国の問題へと持っていかれる。TVは問題解決の糸口を提供するどころか、騒ぎを大きくしている。 個人で解決する問題もすぐに社会問題としてしまう。自分の力で将来を切り開く意思を持たない人間で溢れかえっている。
・報道された手口を模倣した犯罪
・ワルも越えてはならない一線を心得ていた。後戻りできない恐怖があった。
・同じ境遇に身をおく人間にシンパシーを抱く
・どんな理由があろうと公共施設を破壊することは悪い、と断じるべき。迷惑をかけるのは止めろと言え
・ネットが発達し、情報を共有できるあまり、不満だけが蓄積され、悪い状況に陥っている
・贅沢を言わねば、仕事はあり、人並みの生活が送れる環境は整っている
・採用する側も光る人間を探している。騙せるものなら騙して欲しいと思っている。学生の本音を知りたい。自ら考えることを放棄し、他人の力に安易に頼る人間はいらない。 面接に幹部候補生を立たせる。
・マスコミがフリーターに市民権を与えた
・会社でお金を貰いながら教えてもらえる。ご飯を食べさせてもらいながらチャンスが来るのをじっと待つ。好転しない環境下に身を置くと情熱を持続するのが難しくなる
・ある程度、組織に身を置いた者は汎用性のあるスキルは身に付く。規模の小さな組織なら複数の仕事をこなさなくてはならないから、多くの実務経験が身に付く
・長年、組織が培ったノウハウはその会社では当然でも、とてつもない価値をもっていることがある
・ローンを組むには会社の経営環境が現状を維持しながら伸び続けるのが大前提
・収入は数年のスパンで考える。身の丈に合った住居を選ぶ。
・懸命に生きようとする姿勢が見えない人間にはいつまでも手を差し伸べる者は現れない
・その道の権威とか、学者が新しく唱えるものにはすぐに飛びつかない
・有能な人材とは常に問題意識と危機感を以って挑む姿勢を備えている人間
・人が歩いた後んは美味しいモノは転がってはいない
・真面目に働いた人が老後の心配をしなければならない国は不幸。国の仕組みが根本的なところで間違った
・プラチナタウン構想:豊かな老後を過ごせる場。過疎地問題、都市部の住宅問題も解消。介護士の寮、家族のいる従業員向けの分譲住宅、保育園。健常者は放置された田畑で耕作。 趣味の時間も存分に楽しめる場。入居費用は一律。長生きしようが早く死のうが同じ。精算、返金なし。長生きすればお得。地方の資源の豊かなところに建設。地場の商店も出店。 運営は民間(→既に介護ビジネスをやっている企業が有利。ノウハウあり)。地域活性化(→税金も入る)。先達の知恵を幼子に教え伝える(→周りが老人ばかりよりマシ)。 同じような環境の人間が集い、気楽に健康的に娯楽を楽しむ。都会で暮らす子や孫が訪ねて来て別荘感覚で過ごす。
・訪問介護は訪問先が点在し効率が上がらない。ゆえにヘルパーの滞在時間も短い
・若さは無謀となって現れる
・高速道路無料化:物流を優先すべき。輸送コストが下がる。人数が多く乗っていれば優遇(相乗り)
・起業するには身内、友人、知人に出資されると、うまくいかなくなったときに険悪な関係になる。ビジネスプランを理解してくれる金融機関から調達すべき
・下から目線が常に正しく、上から目線が間違っているわけではない

<感想>
・コメントする本人が額に汗していない
・「足るを知る」をもっと押し出すべき

-目次-
第1章 派遣切りは正しい
第2章 欲望を知らない子供たち
第3章 夢という名の逃げ道
第4章 サラリーマンは気楽な稼業ではない
第5章 まだ株屋を信用しますか
第6章 非成長時代の身の処し方
第7章 老人専用テーマパークを作ろう
第8章 「弱者の視点」が国をダメにする