読書メモ

・「子どもの集中力を育てる
(齋藤孝 :著、文藝春秋 \952) : 2010.04.22

内容と感想:
 
私には子供はいないが、小さな子供は好奇心が強く、じっとしていられない、すぐ飽きる、落ち着きがない、かと思えば、 何が面白いのか分からないが同じことを繰り返して、集中して遊んでいたりする。姪などを見ていると、そういうイメージがある。
 本書は「子どもの集中力を育てる」ための具体的なメニューを紹介している。 全脳教育を推進するパドマ幼稚園の機関誌に連載したものを中心にまとめた本だということだ。 著者は教育学、身体論が専門であるが、心と身体が切り離せないことを重視し、 それを教育に生かそうとしている。
 「集中した状態とは、脳が活性化して高速回転しているとき」である。 その状態を作るためには身体が鍵となる。 集中力を出すための姿勢・構えや、集中力を持続させるための身体の使い方など、 ちょっとした体操やゲームなどを通じて、子供が飽きないようなメニューが書かれている。 4章ではパドマ幼稚園の取り組みも紹介していて、子供を生き生きとさせる教育の現場を知ることが出来る。
 小学校3、4年生から「ゴールデン・エイジ」という子供の心身の成長に最良の時期が始まるという。 本書ではそのゴールデン・エイジが始まる前の時期に、親子が触れ合って集中力の基礎を付けておくことを狙っている。 具体的なメニューが載っているので親子で一緒に楽しみながら取り組むといいだろう。お金もかからないものばかりだ。

○印象的な言葉
・呼吸による集中
・身に刻む教育
・パドマ幼稚園の全脳教育。秋田光茂園長。生命の根幹を司る脳幹を鍛える
・身体に宝石を埋め込む(→タンスの引き出しとも言える)、心に巨人を住まわせる。他者を自分の中に住み込ませる
・身体を使いながら言葉へつなげていく
・身体をぶつけ合い、触れ合う遊び
・フラッシュカード
・「疲れた」と子供が言ってから、その3倍以上はいける。力を出し切って乗り越える、自信につながる
・身体が崩れてくると血行が悪くなり脳に酸素が行かなくなる。体操するだけで意識がクリアになる
・自然体は長続きする姿勢
・股関節には自律神経系の束がある
・蹲踞(そんきょ):相撲のつま先立ちの姿勢。下腹部に力が入り、踏ん張る感覚
・歩きながら暗誦、軽い運動と言葉を混ぜる
・文化を継承する責任
・マナーはみんなが気持ちよく関わるためにある
・帯が腹に巻かれていることで腰腹が充実した感じを得やすい
・鳥は空気の抵抗があるから飛べる。勉強も上手な抵抗がによって力が引き出される(木下竹次)
・動きの中でも静かな部分を維持
・腰腹がゆるぎのない肩の力が抜けた静かな上体
・キレるのは、ストレスを受け止める器が小さいため。生命や飢えのようなはっきりとしたものでない。姿の見えない敵と戦っている
・戦中・戦後は周りの皆が同じ苦しみをもっていた。貧しさをみなで堪えた。(→みなで共有できたから耐えられた)
・我慢できる→自信→チャレンジする意欲が生まれる
・読経のリズミカルな声の響きが心を安定させる
・イジメを絶対に許さないちう強い意志が学校に断固たる行動で示されていない。大人がきちんと歯止めをかける
・イジメはエネルギーのなさ、呼吸の浅さが退屈を招き、それをまぎらすために起こる。枠を越えたところに踏み込んでいくのが苦手。その枠が狭い。 価値観が違う人を排除し、イジメを生み出す。自分たちの生ぬるい価値観の中で漂っていたい、他のものに関わることが面倒。他者を受け入れられない。
・教育環境は広すぎるより狭いほうが活性化する。エネルギーが逃げない、全体を温める
・聖なる時間を日常に組み込む
・腰を下ろして円陣を組むと気持ちが落ち着く
・武道では息を溜めて、相手の呼吸にうまく合わせる
・寝ている間に蓄積された熱量を、朝一番で放出することで心身に落ち着きが生まれる
・調子の悪いときでも、それなりの勢いを保つ技術
・教師の意識の高さが子供に伝染。身体から伝わってくるものにこそ威力がある
・子供の自由、主体的な学習が崩れたとき、学級崩壊が生じる

-目次-
1 からだが学びの質を高める
2 集中力のあるからだをつくろう
3 子どもの中心感覚をつくる
4 パドマ幼稚園の学び