読書メモ

・「民主党政治の正体
(渡辺喜美 :著、角川SSC新書 \780) : 2010.06.20

内容と感想:
 
みんなの党代表が書いた民主党の次を考える書。 「霞ヶ関改革と成長戦略の試案」をプレゼンするとしている。
 まず、政権交代後の民主党政治を批判している。
・事業仕分けもパフォーマンスだけで、歳出削減のインパクトは小さかった。
・予算編成も急ぎすぎだったし、政務三役らが自ら電卓を叩きながら、細部の概算要求の案をまとめていたが、 本来、裏方がやればいい話。やるべき仕事を間違えている。
・議員立法の禁止や議員連盟の加入制限など一党独裁的
・官僚との「友愛」路線か?労働組合が民主党の最大のしがらみ、アキレス腱
 既に鳩山内閣は自滅し、政権交代で何が良くなったのだろうと考えてみるが、 これといって思い浮かばない。 「政権交代」自体が目的だったのかと思うくらい、期待する改革が進まない。 結局、我々は政権交代しても官僚組織がそのままでは無意味だということが分かった。 民主党は官僚に取り込まれてしまったのだ。
 著者は日本の「国家戦略なき各省縄張り主義、役人主導体制」が構造的な問題だと指摘する。 国家戦略局も機能していなかったと感じる。働くスタッフがいないのだから。 百戦錬磨の官僚の上をいくノウハウを持った裏方が必要だとも彼は言う。 また、日本の成長のための政策提言も本書で行なっている。
 著者は政界再編を唱えている。 「再び政権交代を期待しても、受け皿がない」ことは彼も認識していて、 まずは次の参院選で民主党に単独過半数を取らせるべきでないと考えている。 そうなると政界は混沌としてくる。新党が次々に出てきているように、 まだまだ米国のような安定した二大政党制のような形にはなりそうもない。 それは官僚にとっては悪くない状況なのかも知れない。

○印象的な言葉
・日本が役人に食いつぶされる
・マクロ政策、成長戦略という国家戦略の総司令塔がない
・霞ヶ関改革は、政治改革(国会議員定数半減、議員特権剥奪)と一体
・デフレギャップ(需要不足)は40兆円。
・日銀に中小企業向けローン債権を金融機関から買い取らせ、信用創造に直接働きかける金融政策。新たな貸し出しを生む。
・相続税見直し:贈与の限度額引き上げで、若い世代への贈与を増やし、金を動かす
・人民元が切り上げられたら中国バブルは崩壊
・日本国のバランスシート:負債の部のグロスの借金は確かに大きいが、資産の部には大きな金融資産がある。有価証券、貸付金、出資金が半分以上。 そこには埋蔵金が潜んでいるが、官僚は資産を圧縮したがらない。天下りポストを失わないため。
・民間赤字企業のリストラ:まず資産売却、次に経費、給与の削減。事業仕分けで廃止・見直し、人員削減。
・霞ヶ関の局長以上は任期つきの特別職にする。政権交代したら一般職に降格できるようにする。自由任用。
・郵政民営化:財政投融資制度の入り口(郵貯・年金)、中間(資産運用部)、出口(特殊法人)を切り離し、政府を小さく、効率的にするのが目的。 入り口は自主運用へ、中間は廃止、出口は見直し・廃止・民営化。
・財政投融資制度:戦時体制のもと、重点分野にお金を傾斜配分し、威力を発揮
・公務員は協約締結権と争議権は認められていない代わりに、給与面で優遇されている。無責任体制の労使馴れ合いで既得権益を守ってきた。
・スネに傷のある政治家は役人にとって扱いやすい
・特別会計にもガバナンスを!
・戦後、革新官僚がGHQを使って、戦時中に企画立案した財閥解体、農地解放をやった
・能力があるノンキャリアでも出世できない。そのはけ口を組合活動に求めている
・誰が使用者か明確にするため人事院を解体
・公務員給与一割カットで3兆円が捻出できる。消費税1%分より大きい。
・お金を削ることではなく、成長につながるお金の遣い方が求められている
・日本の環境・省エネ技術は図抜けている。日本が成長できないはずがない
・森林でのCO2吸収を地域資源とし、排出権取引で大都市に売却
・太陽光パネル発電装備など住宅への設置費用は政府が保証し、売電収入を担保にリース
・農業補助金で整備された農地が商業施設や住宅に転用され、違法な産廃の行き先、不法投棄先になっている。農地利用状況を公開し、国民の監視下に置くべき。
・林業と建設業の融合:建設業の路網整備力、機械力、測量技術を林業に活かす。林業の自立、森林資源のムダのない利用
・中小企業のローンを証券化して活性化につなげる。地域型投資信託で地域の中でお金が回る仕組み。自分の地域のためなら投資したくなる。

<感想>
・日本にはなんらかのショック療法が必要。破綻の恐怖など。
・小沢訪中団の不気味さ

-目次-
プロローグ 「2010年こそ、ニッポン政治の正念場」
第1章 政権交代後の民主党の実態
第2章 これでいいのか?民主党!
第3章 官僚主導の政治体制を崩し、政治主導へと転換せよ!
第4章 だから公務員制度改革が必要なんだ!
第5章 「みんなの党」の役割
第6章 われわれは日本に必要な成長戦略を持っている!
エピローグ 「Your Party」としての役割