読書メモ

・「金融資産崩壊 〜なぜ「大恐慌」は繰り返されるのか
(岩崎 日出俊:著、祥伝社新書 \760) : 2010.08.31

内容と感想:
 
将来を展望する目を養って、現在の難局を乗り切って欲しい、という願いを込めて書かれた本。

○印象的な言葉
・米国ではホームレスの収容施設が郊外の新興住宅地の周辺に広がりつつある。テントシティー
・スイスには自国のGDPの7倍の銀行資産がある
・世界大恐慌のとき、株価の下落は1930年から32年にかけて起きた
・「経済は健全である」とか「ファンダメンタルは問題ない」という発言が当局からでたら何かがうまくいっていないと考えるべき
・本「怒りの葡萄」は大恐慌時代を描いた
・大恐慌時の米国では1920年代に享受した消費生活の水準を大きく下げねばならなかった。30年代には結構が減り、出生率も低下した。中間層は急激に没落し、退廃的な文化が流行。 犯罪と自殺者が増えていった。
・人口は幾何級数的に増えるのに対し、食糧の供給は算術級数的にしか増えない。食糧不足が生じる。人口調整を自制によってなされなければ破綻する(マルサス)
・大恐慌時、世界がブロック化した。ポンド・ブロック、ドル・ブロック、マルク・ブロック、円ブロック。世界は分断され排他的となった、経済ナショナリズム。関税引き上げ合戦。
・1920年代の繁栄は全産業的なものではなく、成長産業に偏っていた。購買力にも偏りがあった。消費文化を享受できたのは大都市の富裕、中間階級だった
・昭和35年頃までは貧困は大きな社会問題だった。昭和30年には衣食住に事欠く「絶対的貧困」に国民の3割が該当していた。45年には1%にまで減った
・何かの拍子でデフレからインフレに振れた場合、一斉に債券売却が行なわれ、債券価格は暴落(金利は急騰)し、米国債は多額の含み損の山となる
・円高が進むことで米国による日本の外貨準備(米国債)の合法的な収奪、もしくは踏み倒しという状況になっている

-目次-
第一章 リーマン・ショックは大恐慌につながるのか
第二章 現代と似ていた、大恐慌前1920年代
第三章 人類が80年前に経験した恐怖
第四章 日本では政策の失敗が昭和恐慌をより深刻なものにした
第五章 成功しなかった「恐慌脱出への試み」
第六章 金融資産の崩壊