読書メモ
・「進化するグーグル 〜世界を掌握する“未来戦略”」
(林信行 :著、青春新書INTELLIGENCE \730) : 2010.07.26
内容と感想:
今も進化し続けているGoogle。企業買収を繰り返し、次々と新サービスを開発・提供している。
世界で最もエキサイティングな企業の一つと言ってよいだろう。
Googleに関しては既に語り尽くされた感もあるが、Street ViewやBook Searchでは訴訟沙汰にも発展し物議を醸したりもしている。
その新しいサービスが時代の先を行き過ぎているからだが、十分に社会に与える影響を考慮せずにリリースしている姿勢を感じる。
先進さの裏に、危うさが付きまとっている。
本書では、改めてGoogleのサービスの解説と、今後の戦略などについて取材している。
最近では、BMWやフォルクスワーゲンと一緒に次世代自動車向け情報機器の開発も進めているらしいが、
日本でもGoogleが開発したOS「Android」搭載の携帯電話が登場し、検索サービスを提供するための基盤作りを更に拡大している。
iPhoneには遅れをとったが、「いつでも、どこでも検索」が更に進んだのだ。
第5章では、Googleは技術インフラの面で「標準化や共通認識づくりの場としても、基盤となりその上に生態系」を築こうとしている、
と今後の狙いの一つとして指摘している。
これもGoogle の使命「世界中の情報を整理し、世界中の人々がアクセスできて使えるようにすること」の一環であろう。
2009年にはGoole日本法人の社長にソニー出身の辻野晃一郎氏が就任した。これは家電への進出を狙ったものと著者は捉えているが、
実際に、今年5月21日にはソニーとの提携が報じられた。辻野氏の入社も提携への伏線だったのだろう。両社の思惑が一致したということだ。
その提携はApple社を意識したものらしい。新聞報道によればネット対応TVや携帯端末の提供を目指しているとのことだった。
最近のソニーはパッとしなくなったが、起死回生となるか?
丁度、今朝の日経ではその独占的な立場が逆に周囲に脅威を与えて、ブランドにマイナスの影響を与えると言ったようなことが書かれていた。
創業者たちは「邪悪になるな」と社是に掲げているが、社会と上手くコミュニケートしていかないと、無邪気なだけでは許されなくなり、
社是を裏切ったかと言われる日が来ないとも限らない。もっとも無邪気さがなくなり大人になったGoogleは最早、Googleではないのかも知れない。
今後も良きにつけ悪しきにつけ目が離せない会社である。
○印象的な言葉
・有名人の社内講演
・徹底的に楽しさを追求
・遊び心
・自分が使いたいツールを作る
・家電メーカーとの連携
・グーグル・ニュース:重複ニュースを排除し、主張に偏りがないよう、バランスよく掲載
・社内の壁のあらゆるところがホワイトボード
・Webブラウザ誕生以前のインターネットでの更新記録を保管していた会社を買収、より古い情報も検索可能にした
・Voice Search:電話から音声で検索
・Google Sets:関連のあるキーワードを表示
・Street View:不動産の販売物件の周囲を仮想散歩。近隣の雰囲気を確認する
・Open Social:世界中のSNSをつなぎ合わせて情報を共有
・大型タンカーをデータセンターに。波力、風力、潮力発電で電力を供給、冷却に海水を利用
・YouTubeで配信される技術番組「Tech Talk」
・Goole日本オフィス開設はワイヤレス環境のリサーチも目的にしていた。日本には開発エンジニアはいない。マーケティングや営業のみ
<感想>
・井上陽水なら「探し物は何ですか?」
-目次-
第1章 月探索まで手を広げる“ネットの覇者”
第2章 “技術者の理想郷”はいかにして生まれたか
第3章 世界でもっとも楽しい職場
第4章 “ひとり勝ち”の真の理由
第5章 グーグルが創り出す“新しい日常”
第6章 日本で苦戦するグーグルの巻き返し策
付章 戦略的サービス展開、8つの方向性
|