読書メモ
・「頭がよくなる思考法 〜天才の「考え方」をワザ化する」
(齋藤 孝:著、ソフトバンク新書 \730) : 2010.09.07
内容と感想:
「頭のよさ」とは思考のワザが多彩で、深く、独創的であることだと著者はいう。
その思考のワザを鍛えるには「頭のよい人の考え方を自分の思考パターンに取り入れるのが一番」だと。
本書では「思考のワザ化」の対象として現象学と弁証法を取り上げている。
現象学は頭を自由にするワザであり、弁証法は頭を強くするワザだ。
本書を読むことで現象学と弁証法を軸に、漏れなく、軟らかく、広く、大きく、深く、論路的に、独創的に考える技術を学ぶことができる。
現象学や弁証法などと聞くと小難しそうだが、具体的な事例を挙げて解説しているから分かりやすいだろう。
ここで学んだ思考法で議論をすれば、足して二で割るような下策を結論にするようなことはなくせるだろう。
会議などでよりよい議論をするためにも皆が身に付けるべきスキルだと思う。
○印象的な言葉
・ゲーテが考えたように考えよう。思考の様式の内側に入る
・リーダーは視点移動ができる人
・現象学は意識をクリアにしていこうと提唱する。先入観・偏見・思い込みを排する。細かく見ていくと発見が尽きない
・弁証法は意見と反対意見を対立に終わらせず、高い次元の意見に磨き上げていくもの。矛盾を起爆剤にする。矛盾の解決のために一つ上の次元の概念を作る。
議論の発展のためにあえてアンチテーゼを出す。否定されることも生産的だと思えるタフさが求められる。勝敗でも論争でもない。独りよがりや独断をなくす。
・世界の分節化:世界を分けて考えるのは落ち着いて暮らす一つの方法
・オズボーンのチェックリスト:ブレーンストーミングで使用
・「まさか」に対して慌てず対応できる者が勝者
・括弧を使った発想法。「( )向け」のように括弧の中に色々な言葉を入れていく
・俳句は世界を上手に切り取る文芸
・キティちゃんには表情がない。口さえない。持ち主のその時の自分の感情にキティちゃんが合わせてくれる(→原田泰治の絵にも表情がない)
・会議を立って行なったり、畳の上で車座でやったり、席順を変えてみたり、物理的に体の位置をずらしてみる
・風景の二重化:売り手が見る風景と買い手の見る風景は違う。買い手の側で見ることで気付きやアイデアが生まれる
・ヘーゲルの弁証法:正・反・合で表わされる
・マルクスやエンゲルスの弁証法:量から質への転化、またはその逆。対立物の相互浸透(つながりが深まりつつ発展が進む)。否定の否定(前進のための退却や迂回)
・否定される材料が具体的に見えれば、あとはそれをクリアするだけ
・プライドは伸びていく自分に対してもつべき
・一人弁証法ができる人は天才
・会議や議論の中に否定の契機を持ち込むのはリスク管理の面で大切。異議や疑問を解消していくことでリスクを減らす
・人格と意見を切り離す。気分と意見も切り離す
・弁証法を根付かせるための三層構造:上機嫌な気分を醸成した上での否定、前向きでリラックスした体の構え、オープンなメンタリティ
-目次-
はじめに --「思考法」を増やすことが頭をよくすること
第1章 もれなく考える技術 〜無意識の思考を全部「意識的」に切り替える
第2章 やわらかく考える技術 〜発想のうまい人は「まてよ?」が必ずうまい
第3章 広く考える技術 〜相手の立場に立てば「自分」が見えてくる
第4章 大きく考える技術 〜「バルコニーに上がる」だけで知性は変わるのだ
第5章 深く考える技術 〜ノーをプラスに変える「生産的な対話法」
第6章 論理的に考える技術 〜感情を「隔離」しながら正解を組み立てる
第7章 独創的に考える技術 〜他人の頭を使って「自分の限界」を突破せよ
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