読書メモ

・「世界を知る力
(寺島実郎:著、PHP新書 \720) : 2010.08.22

○印象的な言葉
・空海:全体知の巨人。エンジニアとしての空海は技術も持ち帰った。現世の現実的な課題にも正面から向き合った
・ネットワーク型の視界
・幕末、ロシアからの使節を迎えて、幕府は北からロシアの脅威が迫りつつあることを痛感した。蝦夷地を無防備にしておくわけにはいかなかった。 1807年には仙台、秋田、会津から4千人の軍勢を択捉や樺太の守護に当たらせた。1855年には日露和親条約締結。
・19世紀半ばにはロシアは本格的な極東支配に乗り出す。1860年よりウラジオストック(東を征服せよ、の意)建設
・1917年のロシア革命。それに反旗を翻したウクライナからは大量にシベリア送りされた
・白系ロシアとは共産主義の赤に対する白。革命に反対する王党系
・七福神のうち日本土着の神は恵比寿さんのみ。あとはヒンズー教や仏教、道教由来の神様
・異なる国の人たちにも心を開き、自分を相対化して見ることができる人間が国際人
・歴史観に絶対的な正解はない
・Grater China:大中華圏(中国、台湾、香港、シンガポールなど
・中国のエレクトロニクス産業の輸出額の半分は中国本土に進出した台湾企業のもの)
・中国の五族共和論。漢族、満族、モンゴル族、ウイグル族、チベット族が共同する
・シンガポールは大中華圏の研究開発センター。先進医療を受けられる。IT、ゲノム・バイオ研究の拠点。 頭だけを持ち、身体を持たないバーチャル国家。資源、原材料など生産要素おり良質の労働力、資本、情報を重視。
・ユニオンジャックの矢:イギリス連邦の主要都市を地図上で一直線で結べる
・ドバイは大英帝国のインド支配の中継点だった
・誇り高き個人主義者・ユダヤ人。ユダヤ人は長い迫害の歴史の中で、常に歴史の目的や人間の本質を問い続けた
・どこでも活用できる目に見えない価値、技術や情報を習得することで身を立てるのがユダヤ人
・一見、バラバラに見える断片的な現象・情報に対して「相関の知」を働かせる
・再生可能エネルギーの活用は決してエネルギーの主食にはならない。小型分散で非効率
・行政改革は公務員改革抜きには語れない
・橋本内閣は日米安保を拡大解釈し、米軍の兵站・情報機能を自衛隊が担うとした。極東に限定したいた対象地域も事態の性格によって判断する形に変えた。同盟関係を強化。
・アメリカについていくしか日本の選択肢はないという思い込み。アメリカに対する過剰依存、過剰期待で日本は思考停止。
・イラク戦争とサブプライム危機でアメリカの一極支配は潰え去り、競争主義・市場主義の信奉者たちはご本尊を失った
・アメリカがアジアに登場したのはかなり後発。南北戦争のせい
・太平洋戦争も日本とアメリカの中国をめぐる対決だった
・1990年代のグローバリズムは「アメリカ流資本主義の世界化」の言い換え
・ネットワークを形成できる国や地域だけが力を発揮できる時代
・東洋思想は円融自在。西洋は分別的知性、分けて制する、主客を分ける。東洋は主客未分化のまま「無分別の分別」により全体を捉えようとする知性(鈴木大拙)。 論理万能の分断的知性には限界がある。
・ものづくりへのこだわり、と技術への敬愛
・技術を育て、事業を育てる「育てる資本主義」
・米軍基地の段階的縮小と地位協定の改定を目指す。日本は米軍駐留コストの7割を負担している
・戦略情報戦争時代に兵力を前線に張り付け続ける意味はない
・新米入亜:アジアの信頼を確立、アジアとアメリカの架け橋となる
・東アジア共同体:共同のプロジェクトを積み上げ、その過程で信頼関係を確かなものにしていく
・日本には世界レベルのシンクタンクと通信社がない。シンクタンクが国家戦略の基盤インフラとなる
・膨大な情報の中から体系化したものの見方、考え方を作ることが難しくなった。メディアも断片的な情報ばかり。総合化、体系化された知性。
・思いもかけぬ相関の発見、斬新な切り口
・フィールドワークを重視する。身体性を有した体験。定点観測
・日本人としての誇りや自律・自尊の精神を失わずに主張をキチンと伝える
・孤独や屈辱を味わうことで自他を客観視できる
・自分との対話に支えられたメッセージだけが、外の人の心も動かす
・知の巨人・加藤周一
・知的活動を先へ進める力は直感と結び付いた感情的なもの
・マージナルマン:境界人。一方の足は企業・組織に置き、一方で組織に埋没することなく、もう一つの足を社会に置く。両方での自分の役割を見つめる

<感想>
・ロシアに漂流した日本人は皆サンクトペテルブルクへ送られた。なぜ日本に返してくれなかったのか?

-目次-
第1章 時空を超える視界 ―自らの固定観念から脱却するということ
 戦後という特殊な時空間 ―アメリカを通じてしか世界を見なくなった戦後日本人
 ロシアという視界
 ユーラシアとの宿縁
 悠久たる時の流れを歪めた戦後六〇年
第2章 相関という知 ―ネットワークのなかで考える
 ネットワーク型の視界をもつ
 大中華圏
 ユニオンジャックの矢
 ユダヤネットワーク
 情報技術革命のもつ意味
 分散型ネットワーク社会へ
第3章 世界潮流を映す日本の戦後 ―そして、今われわれが立つところ
 二〇〇九年夏、自民党大敗の意味
 米中関係 ―戦後日本の死角
 日本は「分散型ネットワーク革命」に耐えられるか
 「友愛」なる概念の現代性
第4章 世界を知る力 ―知を志す覚悟