読書メモ
・「オバマ外交で沈没する日本」
(日高 義樹:著、徳間書店 \1,400) : 2010.09.23
内容と感想:
オバマ政権が発足して早2年。アメリカでは来る11月には中間選挙が控えている。
そのオバマの外交戦略によって「日本が苦しい立場に追い込まれることは必至」だと著者はいう。
前ブッシュ政権が残していった負の遺産、経済問題がいまだにオバマの足を引っ張っている。
経済状態がよくないから国防予算も不足しているようだ。
それでもアフガニスタンではいまだにテロとの戦いを続けている。
また北朝鮮も既に脅威とは見ていないようで、日米安保も名ばかりのものになってきている。
オバマは国防、軍事にはあまり興味がないようである。
本書はそれがテーマであり、日本は「荒波の中にほうり出されることになるだろう」と著者は見ている。
最近報道されてもいるように尖閣諸島問題を巡っては中国国内では反日運動にまで発展するなど、
日本近海での安全保障問題に注目が集まっている。
日本の安全保障においては日米安保に基づく権力の二重構造がある。自衛隊は存在しても、現実的には米国軍に守ってもらう構造だ。
オバマがアメリカだけのことを考えるようになっていることは日本が二重構造を見直すよい機会だと言う。
「自らの手で国を守ってこそ本当の独立国」、
日本は「憲法を改正して国防のすべての決定と権限を国会が持つ」と決める必要があるというのが著者の主張だ。
今夏の参院選で再びねじれ国会になってしまった。国防に関しても政治が強力なリーダーシップを発揮しにくい情勢になったと言えよう。
しかし、議論を始めることは決して無駄ではない。でないと、いつまでたっても米国の「属国」状態が続くのだから。
○印象的な言葉
・南北戦争は関税をめぐる実利的な戦争だった。奴隷解放はその結果に過ぎない
・アメリカは2年以内には景気のサイクルがひとめぐりして回復する
・アメリカは北朝鮮と国交樹立する
・アフガニスタンはオバマのベトナム(戦争)になる
・ドイツとロシアが同盟体制をとる。ドイツは従来、米国が支配する石油に依存してきた
・2010年代は地政学的対立の時代になる
・米国のミサイル防衛体制は既に相当なレベルまで来ている。北朝鮮のミサイルであれば撃ち落とすのはさほど難しくない。決まった軌道を飛ぶだけだから。
・中国は六カ国協議には乗り気でない。北朝鮮を追い詰めることに反対。アメリカに貸しを作るために協議に参加
・アメリカが朝鮮半島において軍事力を削減しているのは、北朝鮮がもはや脅威ではないから
・北朝鮮のGDPは韓国の1/30にも満たない。人口も韓国の半分以下
・アメリカが北朝鮮寄りの韓国の指導者や経済人を政治力で潰してきた
・中国のミサイル攻撃能力が飛躍的に向上している。衛星攻撃能力も進んでいる
・中国は天然資源が限られている。周囲には強くて大きな国がひしめいている。揚子江より北の地域(国土の68%)では水不足。食料も不足し、輸入に頼る。
貿易のため製造業に力を入れすぎた結果、国内公共投資がなおざりにされ、交通などインフラが老朽化。教育や健康保険制度への投資が不十分。衛生状態も悪い。
国家の医療費負担を大幅に減らした。教育費も大幅に減った。中学や大学にいく若者が減り続けている。
2005年以降、農地への投資を拡大。農村経済が向上し、GDPの半分以上が農村からもたらされるようになった。
・中国に対する政治的な要求を通すためのテコになるのは、反政府主義者の弾圧、周辺国への侵略を問題として取り上げること
・米国の国家情報会議(NIC)は米国の国際戦略を決める重要組織。国家活動の根幹
・オバマの弱腰外交は東欧に展開したミサイル防衛システムを壊したことに象徴される。ロシアの圧力に屈した
・スイスを中心とする西欧の核兵器のブラックマーケット
・パキスタンは核兵器製造技術を各国に教えるかわりに現金やミサイルを手に入れている。軍の首脳はタリバン、アルカイダに近い。タリバンが力を盛り返している。
核兵器がテロリストの手に渡る危険性。
・イランはアメリカに対抗するためにイラクへテロリストを送り続ける
・中東のイスラムを全てシーア派にしようとするイランの野望。スンニ派のサウジアラビア、ヨルダン、クエートらが対抗。湾岸六カ国も協力体制をとる。
・イランは完璧な防空体制を作っている。イスラエル空軍が攻撃するのは難しい。イスラエル国民はイランと戦う意思をもつ。イランもイスラエル抹殺を国家目標に掲げる。
・イランは中国と極めて近く、ロシアとのかかわりも深い
・サウジアラビアの油田群はアメリカの石油資本が共同で作った企業が動かしている。サウジはアメリカの一部
・イスラエルのガザ地区のハマスはイランから膨大な資金援助をうけて勢力を拡大
・米国陸軍の軍人は中西部から南部にかけての保守勢力の強い州から来ている者が多い。軍の首脳たちはサラリーマン化している
・米国は経済状態が悪く、国防予算に回す資金がない
・国連では途上国のグループが力をもつ。国連は空虚で、現実の国際政治となんの関係もない。実際の話し合いはそれぞれの国の間でなされているに過ぎない
・日本の憲法改正には全議員の2/3以上の賛成が必要、更に国民の過半数の賛成が必要
・国家の権限のうち最高のものは国を守る権限、交戦権。現状、国を守るという最高の責任と義務は日米安保によって米国が担当する
・平和は与えられるものではない。勝ち取るもの。軍事力を持つのは平和を維持するため。平和はタダではない
<その他>
・仮に北朝鮮が日本にミサイル攻撃をしたとしても、その後、どうするつもりか?侵略するつもりか?能力も、メリットもない。国際的に孤立が続くだけ
・中国・台湾の統一と韓国・北朝鮮の統一のどちらが先か
-目次-
第1章 オバマは北朝鮮と正式国交を樹立する
第2章 オバマは日本防衛に関心がない
第3章 オバマの中国戦略は失敗する
第4章 オバマは中東から追い出される
第5章 オバマには世界戦略がない
第6章 日本はどうする?
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