読書メモ

・「仕事するのにオフィスはいらない 〜ノマドワーキングのすすめ
(佐々木俊尚:著、光文社新書 \760) : 2010.10.24

内容と感想:
 
遊牧民という意味の「ノマド」。 著者は本書で「ノマドワーキング」というワークスタイルを提案している。 そこではクラウド、スマートフォン、ブロードバンドというITを駆使する。 それを使いこなせば文字通りオフィスは必要なくなる、というのが彼の主張だ。 そうした働き方をする人としては、「テレワーク的な仕事をこなす独立独歩な人」をイメージしている。 それは自由で伸びやかなライフスタイルだ。確かにロマンを掻き立てられる。いわゆるフリーランスというやつだ。 著者のようなフリージャーナリスト向きの働き方だ。すべての職業に応用可能というわけではなかろう。向き不向きがある。
 さて、ノマドワークスタイルを実現するためには以下の3つをコントロールすることが必要だとしている:
・アテンション(注意力、集中力)
・情報
・コラボレーション(連携、協調)
第2章から第4章まではこれら3つのコントロールの仕方を具体的に解説している。
 第5章は著者が実践しているクラウドを駆使した仕事術の紹介。様々な便利なウェブサービスやツールなどを事例を挙げて説明している。 ノマドでなくても仕事術として参考になるだろう。
 本書で薦めているような働き方を始めるのであれば会社員では厳しい。フリーになる必要がある。 しかしフリーランサーになる前に、著者が書いているように、会社から「辞めないでほしい」と言われるような社員になることが先だろう。 専門性を身につけて、「いつフリーになっても大丈夫という裏付け」を持たねばならない。

○印象的な言葉
・サードプレイス:第3の場所。オフィスでも自宅でもない場所。
・就業の構造変化。全ての人が契約社員やフリーランスとなる社会
・フリーランス・マーケットプレイス:米国のフリーランサーをマッチングさせるサービス。Elance、oDesk、Guru。 米国ではフリーランサーは増えているが、報酬は全体としては減っていく可能性。フリーランス化の中心はサービス関連ビジネス(ウェブデザイン、マーケティング、コピーライティング、 翻訳、テープ起こし、コンサルタント、リサーチ、会計など)
・他人に雇われるのは嫌
・自由と独立を愛する
・セルフコントロールできること
・自分で会社を設立し、別の企業に派遣されているという契約にする。個人だと契約しにくいので法人化する。登記上の住所は自宅
・独立することで仕事の幅が広がる
・ボヘミアン:伝統や旧来の風習などにこだわらず自由奔放な生活をしている人たち
・レジリエンス:困難な状況にも適応して乗り越える能力。信じていることを貫く
・ACDCプロセス:PDCAサイクルの前の徹底的な情報収集と分析。Planの前の情報収集プロセス。Acquisition(取得)、Classify(整理)、Dig(掘り下げ)、Collaborate(連携)。 AとCは単純作業、リラックスしながら出来る作業。DとCは集中力が必要、論理的かつ複雑な思考が必要。
・白雲自去来(白雲、自ずから去来す):妄想や煩悩に執着しない
・コンタクトポイント:広告業界用語。情報と接する場所。
・Google Site:ウェブサイトを専門知識なしで簡単に構築できるサービス
・Greasemonkey:Firefoxでアドオンを導入するために必要なアドオン。様々なスクリプトを実行できる。
・マスメディアが収縮していくこれからの時代、メディアを自前で用意して活動していくフリーランスが現れてくる
・土地や大邸宅のようなものを欲しなくなり、自分が求める様々な価値を探して、より自由に動ける手段と機会を持つことに生き甲斐を感じる(黒川紀章)
・リゾーム(根茎):ドゥルーズとガタリが提案した概念。様々な異質なもの同士が自由自在に、ダイナミックにつながりあいながら、自分の好む様々な方向へと根を伸ばしていく。 そこに中心はない。新たな出会いに感謝しながら刺激的な仕事を続けていく。
・「21世紀の歴史」(ジャック・アタリ:著):2050年頃に超帝国が生まれる。それを支配するのは超ノマドと言われる人たち。超戦争も起こる。彼らの中からトランスヒューマンと 呼ばれる人たちが現れ、超民主主義を担う人たちになっていく。

<その他>
・山を眺めながら仕事がしたい
・問題はどうやって仕事を得るか(売り込み)

-目次-
第1章 ノマドワーキングのすすめ
第2章 アテンションコントロール
第3章 情報コントロール
第4章 コラボレーション
第5章 クラウドを使いこなす
第6章 ノマドライフスタイルの時代へ