読書メモ
・「グーグル vs アップル 〜ケータイ世界大戦」
(石川 温:著、技術評論社 \1,480) : 2010.10.12
内容と感想:
丁度2年前に出た本。「世界大戦」とおどろおどろしいタイトルだが、世界の携帯電話市場を巡ってメーカー、キャリアらが激しい競争を今も繰り広げている。
今や、ケータイよりも「スマートフォン」と、カテゴリも分けられて、そちらに注目が集まっている。
AppleのiPhoneは日本でも売れ続けているし、Android搭載端末も続々登場してきた。
本が出てから2年もたつと状況も変わってきているが、大筋は本書が示す内容の延長線上で業界の状況は動いているといってもよいのではないか
(さすがにiPadやKindleといった電子書籍端末までには言及されていないが)。
Androidはオープン・プラットフォームが売りだ。
そんなことはユーザには直接関係はないかも知れないが、様々な企業が参入することで競争も生まれ、
よい製品・サービスが生まれる可能性があり、結果的にユーザにもメリットがある。
端末メーカーとしては共通なプラットフォームを使えるのはよいが、より差別化が重要になってくるだろう。
著者は今後は、ケータイに安心のあるサービスを求める初心者や高齢者など向けと、自分で色々なことができる先進ユーザ向けの2つに分かれると考えている。
つまりスマートフォンを必要とする人ばかりではないと見ているようだ。実際、電話とメールが出来れば十分という人は多い。
「これから先、何が流行るかわからないから、思いついた企画はとりあえず製品化するという意気込みが今の日本のケータイ業界にはなくなってしまった」と著者は現状を嘆く。
また、ガラパゴス携帯と揶揄されることに対して、「日本は決して、ガラパゴスではない。世界は日本のビジネスモデルをまねして、おいつこうとしている」
と更なる業界の活性化に期待している。しかし端末に関しては、現実的には元々、携帯電話とは関係のなかったAppleとGoogleというアメリカ企業に主導権を握られているのが現状だ。
特に端末メーカーとしては厳しい状況が続くだろう。
○印象的な言葉
・医療業界を取り込む
・位置情報を使い自分の周囲にいる友達を見つけ出すアプリ
・ARPU:一人あたり月額利用料
・Googleは組み込みソフト分野は素人だが、そこはオープンソースに丸投げした。あとは自分たちの得意なアプリをやる
・Linux上で行なっているセキュリティレベルはAndroidでも保証できる。Javaを使っているのでセキュリティは堅い
・EV-DO:データ通信専用の通信方式。クアルコムが開発
・Androidはシンクライアント端末やカーナビ、情報キヨスク、自動販売機にも使える
・手入力していたものを省略できないか
・モバイル広告は日本が世界の先頭を走る。日本はGoogleにとってテストマーケティングとしては最適
・モバイルのコンテンツが海外にはほとんどない。モバイルサイトの検索サービスは日本でしか通用しないかも知れない(→便利であれば海外でも広がるはず)
・多機能化されると独自OSでは対応しきれない。膨大な開発コスト。検証作業だけでもたいへん
・マルチメディア関連の特許を多数もつパナソニック
・新しい機能を入れ込むにはそれに対する悪影響をできるだけ防止する努力が必要
・世界に配信して稼げるコンテンツ。どれだけ世界共通で売れるコンテンツがあるのか
・わずかなコンテンツ料金の積み重ねが大きい(孫正義)。広告より有料課金ビジネスのほうが魅力的
・Linuxは安く開発できるという幻想
・Androidの課題:誰が精度を上げ、誰がバージョン管理するのか
・Windows Mobileは端末メーカーにとっては少ない開発者で製品化できるのが魅力。他の携帯電話と比べると圧倒的に少ない(シャープ社)
・ノキアはこれからは端末だけを提供する「ものづくりの会社」では生き残れないと考えた。初めにサービスありき
-目次-
第1章 無限大の可能性を持つアップル・iPhone
第2章 オープン戦略で世界を巻き込むグーグル・Android
第3章 日本に攻め入る世界ブランド
第4章 プラットフォーム世界大戦が始まった
第5章 キャリアはグーグルとどう向き合っていくのか
第6章 世界と日本のケータイ業界はどうなっていくのか
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