読書メモ

・「下り坂社会を生きる
(島田 裕巳、小幡 績 :著、宝島社新書 \780) : 2010.03.29

○印象的な言葉
・日本はすべての面で下り坂。下り坂に戸惑い、躊躇している。ギアを切り替えよう。リラックスしよう。頑張ることはない。楽しむ
・日本社会、経済には蓄積がある。長寿は人間の最高の望み
・宗教、経済が社会を成立させている
・実体経済で成長できないから金融で稼ごうとした(→幻想でしかなかった。皆が信じている間は成立するゲームだった)
・都市と農村の二重構造があったから成長できた
・国内だけで景気対策をしても意味がない
・官僚の斜陽は銀行や商社の斜陽
・経済学バブル。危機を救えない経済学は役立たず
・移民政策より中国人観光客を
・ポイント制度のようにお金にも有効期限をつけたら?
・財・サービス市場が金融市場化している。リーマンショック後、実体経済は急激に落ち、急激に回復した。在庫調整がオーバーシュートした。生産調整を一気にやった。 資金調達や会計処理を含めて、いろんな手段が発達したため、売上半減でも生き残れる経営になった。
・危機回避のために全力で将来を織り込んで逃げ出す。魂の金融化
・オバマはノーベル平和賞を期待値だけで取った。社会が金融市場化していることを示す。期待ですべて動く
・安定志向。下の方で安定するので構わないと考える人が増えてきた
・下流社会が広がっているのは田舎ではなく東京近郊
・アメリカは先進国で唯一人口が増えている。消費は意外と早く戻る
・成長は終わったのだから、景気循環の波を消すことにエネルギーを使うより、資源を大切に使って、余命を平均的に豊かに過ごそう
・民主党は官僚あ金融マン出身が多い。個人的魅力がない
・貧しい人はあまり納税していないから減税効果は薄い
・自民党には最後にしがみつくイデオロギーがない。個人プレーの党だから下野すると崩壊しやすい
・財務省には日本の将来を本気で心配しているのは自分たちだけという自負。正義感がありすぎる。財政破綻から国を守るのが自分たちの使命。自己満足。
・昔ほど官僚の能力が必要とされていない。不必要に優秀な人が集まっている。余計なことを考えて勝手にやっている
・官僚は世の中は自分たちが動かせると思っている
・経済学は戦後何もやってこなかった(クルーグマン、スティグリッツ)。マクロ経済学は死んだ。経済学はモデル化して、数学化して暴走した。 何の役にも立たないことが明らかになった。現実から離れて、机上の空論に喜んでいた。
・最近の経済学は物理学からモデルを借りてきたり、心理学や医学などに依存したりして、手法としてはかなり危うい
・GDPをただ増やしたところで本当に社会がハッピーになったか?
・ストックがいっぱいある成熟経済ではフローのGDPが増えたかどうかは関係ない。ストックの使い方によって人生が左右される
・経済学はまだ幼稚。やることもいっぱいある。マルクス経済学は資本主義の矛盾を指摘。今こそ、その本領が発揮されるべき
・政治学、経済学、社会学は何のために存在しているのか?現実を説明できていない
・学問の場がサービス産業化している。就職課などの良し悪しで経営が決まってくる
・ビジネススクールは出会いに価値がある。ネットワークが全て
・日本は実質主義。既成の権威なんてくそくらえ。アウトロー好き。
・「自分に合った仕事」が用意されているわけではない
・アメリカ人は失業中でも「transition中」(移行中、充電中)という。前向き、負けず嫌い
・一定の規模で儲けも限度があるような店のほうが余計な出費もなく、固定客さえあればずっと続けることができる
・松本清張はとにかく量を書いた。稼ぎがあっても仕事を減らさなかった
・高齢者に消費させたかったら不安をなくせばいい。コミュニティが成立し、医療サービスも受けられる住居があればいい
・日本には世界中からモノが集まる仕組みが出来ている。モノ流通のハブの機能。優秀な消費者に支えられている。いいものを見る目がある。目利きの国
・ガラパゴス化するか世界チャンピオンになるかは紙一重。日本は時代の先を行き過ぎているから。(→後進国に追いつかれないようにするにはそうするしかなかった)
・日経は権威が確立しているから、理解できないものは受け付けない。正統派のことしか書けない。新しい記事はありえない。日経的発想は技術力、物づくりの精神。
・WBSも経済界の人が見ているし、ゲストも権威が確立した偉い人が中心。外れたことあい得ない。新しい知恵が入らない
・固定化されないように生きていく。無限の可能性を残したままが一番幸せ。将来を決めない。予定は直前まで決めない。決めてもいい話が来ればすぐ変える
・電子マネーの問題:誰でも発行できるのでインフレが起き易い。利子を勝手に付けることができる
・江戸の町人文化はその日その日をエンジョイ。
・明治維新は薩長の辺境パワー、格差のエネルギーが源泉
・人が溢れ、モノが溢れ、情報が溢れてきた。それをうまく処理するやつが勝つ。時間が常に不足する時代
・長い人生、時間を長期的な戦略でゆったり使ったやつが勝つ。相手を力任せに倒すのではない
・経済指標を絶対的な前提とせず、それを疑い、見つめてみる

<感想>
・「坂の上」を既に越え、経済は右肩下がりの日本。日本が蓄積してきた様々な資産を活かして、如何に豊かな生活を送るべきかを考えさせられる
・下り坂を行きぬいた社会はない、というが本当か?ローマ帝国は?英国や欧州は?
・「坂の上」は日本以外の国でウケるか?共感されるか?
・明治維新後、我々は意図的に文化をなくしてきた

-目次-
まえがき 小幡績
第1章 成長神話の終わり
第2章 政治家と官僚の下り坂
第3章 経済学の下り坂
第4章 大学の下り坂
第5章 職業の下り坂
第6章 お金の下り坂
第7章 脱成長を生きる発想
あとがき 島田裕巳