読書メモ

・「ルポ 雇用劣化不況
(竹信 三恵子:著、岩波新書 \740) : 2010.08.21

○印象的な言葉
・人が育たない、絶たれる技術継承。若手をじっくり教える余裕がない。不法就労や中国人研修生頼みの現場。
・公務パートの激増。教師のカンバン方式
・行き過ぎた労使協力。会社を守るため、社員の安全や健康を後回しにする本末転倒
・会社と働き手を結ぶ糸が切れ、情報のパイプは詰まり始めた
・風通しの悪い職場、パワハラ、イジメ。社内での問題提起がないまま内部告発でいきなり外に出る
・顧客が欲しいもの、してほしいことへの感度が鈍った現場
・職場の言論封じ込め
・日本では公的住宅の支えがほとんどない
・派遣労働は人間のカンバン方式
・1700万人の非正規社員のうり雇用保険に入っていないのは700万人。失業保険で救済されない
・当初、危険業務が多い製造業現場への派遣は認められていなかった
・派遣労働の導入により安全な工場づくりに必要な労災情報などが意思決定者に上がりにくくなる
・派遣は熱心にやっても評価に関係なく、何年やっても同じことの繰り返し
・派遣労働者の死傷者数は製造業派遣の解禁された2004年から9倍に急増
・現場を知っているのは発言力のないパート
・安さを求めて過酷な働き方が生まれ、その働き方が顧客満足を下げている。顧客に飽きられ、需要を減らしていく
・仕事に見合った価値を決める仕組みがない日本、専門性の高い働き手に適正な価格を付けられない
・教員には見えない仕事が急増している。本来の子供と向き合う時間が減っている
・「顧客のため」を謳いながら、顧客と接する人材の劣化が進む
・家事援助を身体介護は一連のもの。どちらも専門性が必要
・登録型の介護ヘルパーは失業手当も出ない。報酬水準が低く労災保険まで払えない雇い主が多い
・パート労働法は公務パートを対象にしていない。育児・介護休業法も適用されない
・ホワイトカラー・エグゼンプション:知的労働のため成果は時間で測れないとする。労働時間規制の適用除外となる。その曖昧さは米国でも問題になっている
・若者を使い捨てる空気
・ミドルマネジャーが著しく軽視されている。成果主義と中間管理職減らしで一人当たりの仕事量が増加。プレーイングマネジャーの増加。目先の仕事に必死で新しいことに挑戦する 余裕がない。部下の面倒も見られない。いきなり管理職にされ、人事管理のノウハウがなく悩む。会社は超人的な要求を社員に押し付けている
・自己責任:全て個人の責任にされてしまう。使い捨てにされる。自己管理できる意志の強い人間ばかりではない
・地域や職域を基盤に一人からも入れる労組・ユニオン。パートなど不安定雇用の女性たちが加入できる労組が必要
・社員の健康より企業の生産性を優先
・株主重視の経営により労組が会社に協力しても賃上げなどの条件向上には還元されにくくなった
・後の世代のために働き方を変えよう
・デンマークでは正当な理由があれば解雇可能。労組代表らがこまめに社員のケアに回り、解雇される人には転職へ向けた手厚い職業訓練を提供。職業訓練費用は会社に求められる。 会社は解雇前の半年間は賃金を払いながら、訓練費用を出す。産業構造の転換に小回りのきく対応。最高で7割近い所得税も生活向上に返ってくる安心感があるため不満は少ない。
・不況時にも訓練をほどこした質のいい働き手を他社にもっていかれたくない
・余裕をもって働けると、顧客への対応が親切になり、顧客が信頼してくれる
・会社を超えた横断的なつながりの場
・職場の崩壊が経済の足を引っ張っている。現場の生き生きとした声が抑え込まれ、活力が奪われてきた

<感想>
・派遣労働に関しては派遣元の企業への言及が抜け落ちている気がする

-目次-
序章 賃下げ依存症ニッポン
第1章 津波の到来
第2章 労災が見えない
第3章 しわ寄せは「お客様」に
第4章 「公」が雇用をつぶすとき
第5章 「名ばかり正社員」の反乱
第6章 労組の発見
終章 現実からの再出発