読書メモ
・「公務員ムダ論 ―不況時代の公務員のあり方」
(福岡 政行 :著、角川oneテーマ21 \705) : 2010.06.26
内容と感想:
不景気で国税収入、地方税収が減っている。
そのせいで民主党は平成22年度一般会計予算の約48%を国債(44兆円)を発行して手当てした。
空前の規模である。
「民間の会社ならば当然のことながら、賃金カットやボーナスカット」と著者もいうように、
安易に借金する前にやることがあるだろう。
6/24、参院選が公示された。
今度の参院選の争点として消費税上げが目玉になっている。
なぜそんなに騒ぐのか?増税論議を盛り上げて、国民の深層心理に訴えて、「しかたがない」と思い込ませ、
いやでも増税実現にもっていこうとする財務省の魂胆が見え見えである。
確かに増税は誰もイヤだ。
しかし消費税を上げる前にやることがあるはず。
本書のテーマは公務員の人件費カット。
公務員の総人件費は35兆円(税収の4割)にのぼるという。その殆どを国債で賄っているということになる。
ムダ遣いが多く、とかくお役所仕事はムダが多い、経済の悪化に鈍感で、
サラリーマンの給料はこの10年間減り続けているというのに、公務員に賃金カットはない。
倒産・経済苦の自殺は毎年高止まり、その反面、公務員天国は続いている。
「官僚依存」どころか「官僚主軸国家」と厳しいが、単なる公務員いじめの本ではない。
具体的に公務員の人件費カットの処方箋を提示している。
さて、民主党だが「国民の生活が大事」だとか言っているが、公務員制度改革はどこにいってしまったのか?
大事なのは公務員の「生活」のことなのか?
公務員が自ら痛みを伴う改革は出来ない。政治がやらねば誰がやるのか?これこそ選挙の最大の争点にすべきことだ。
衆院選で大勝して政権交代したが、勘違いしてないだろうか?このまま参院も単独過半数なんてことを夢見ているようでは甘い。
「消費税」だけを争点にしていると本質を見失う。
○印象的な言葉
・納税者の反乱
・民主党政権は財務省主導
・労働者より給与の高い公務員
・内閣の中心に労働組合組織に近い政治家がいる
・ムダなパンフレット、役に立たない情報公開資料。政府刊行物は分厚すぎる。
・公務員の選挙特需。投票・開票日の日当
・外出し公務員、隠れ公務員:見せ掛けのスリム化。公務員の倍以上いる
・お任せ民主主義
・障害者が切り捨てられた「自立支援法」
・1日に100人近い自殺者が出る時代 (→交通事故よりずっと多いはずだが、なぜニュースにならないのか?)
・霞ヶ関からの委託事業。競争入札なしの随意契約(2、3割は割高)の下請けシステム。管理費(3割)という名の中間搾取が繰り返される。
・単年度予算だから使い切る
・2009年の社会保障費(医療・年金・介護)は90兆円を超える。このペースでは国家予算を超える。
・埋蔵金:2008年3月末で47兆円
・人口が減って景気がよくなることは古今東西ない
・「連合」は恵まれた労働者の組合組織
・公益法人の理事数は39万人。常勤理事が2万弱。職員0という法人が1割もある。(何のために存在しているのか?)
・第三セクターの職員の3分の1が役員!
・パーキンソンの法則:公務員の数に公務員の仕事は比例する
・部活の先生は外部に嘱託する。教師は授業に専念。登下校の見守り隊はボランティア。
・行政として判断の必要なもの、公として責任を取るものは正職員が判断する。公務員はコーディネータでよい
・行政側からコミュニティに入り込み、市民の力を借りて公共サービスを向上させる
・公務員の定年延長、有償ボランティアの拡充、小中学校の近くに保育園やシルバーセンターをつくる
<感想>
・納税できる人がいなくなった国を想像してみる。公務員しか残っていない国。
税収なしでは彼らも給料なし。”酷”税で農民を苦しめて、自分の首を絞めた武士と同じ。
・ノンキャリア官僚こそ立ち上がるべきではないか
-目次-
第一章 公務員は国民全体の奉仕者
第二章 社会保障費100兆円時代の公務員
第三章 巨大すぎる公務員人件費
第四章 国も地方も天下り天国
第五章 格差化する地方公務員
第六章 本当に危険なのは大都市
第七章 ”どうする日本”への処方箋
終章 鳩山政権を占う
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