読書メモ

・「世界経済はこう変わる
(神谷秀樹、小幡績 :著、光文社新書 \740) : 2010.07.12

○印象的な言葉
・お金では測れないものが新しい資本主義を作る
・伝統を継承する国家や企業が生き残る
・小売業は売上が5%落ちたら利益がでなくなる
・現在は経済危機の第3幕。危機が実体経済に転移。第4幕は政府が財政破綻し、通貨が価値を失う。世界は基軸通貨を失い、世界経済は崩壊。 歴史上は基軸通貨がない時期のほうが圧倒的に長い。紙切れが信用されなくなる。インフレになる。
・今後、3〜5年の間は非常に厳しい。
・不良債権化した証券化商品の最終処理には時間がかかりすぎ、目処が立たない。解決策が分かっている人は誰もいない
・アメリカの住宅ローンはノンリコース・ローンのため、家を放棄すればローンは返済しなくてよい。調整は速いかも知れない。
・カネ余りで資本が力を持つ拠り所がなくなった。資本主義は終わった。余った資本の消滅過程がバブル崩壊。
・世間ガバナンスがある日本。世間の目にさらされる。日本社会では私と公が一体不可分。
・CDSの8割は投機目的だった
・アメリカでは2011年に社債の借り換えのピークがくる。約千億ドル。レバレッジの高い商業用不動産ローンも残高が4兆ドルある。このうちいくら腐っているのか分からない。
・アメリカが失った資本はIMF予想では2.2兆ドル。その程度では済まないはず。米国の住宅ローンは全部で10兆ドル。その半分をGSEが保証。
・アメリカは外需で立ち直る自律的なメカニズムが働かない点が不利。輸出するものがない
・どんなに景気刺激をしても新たな需要は出てこない。辛い時期を経過しなくてはいけない
・米議会の調査では今後10年間の財政赤字は10兆ドル。最終的には大インフレ
・間違った価値観で生きてきた人間がそのまま温存されてしまうようなシステムではいけない
・政府が警官、教師、医師、看護士などの採用を倍増して失業の増加を抑えたほうが効果的
・長期的に社会を回復させるためには医療や教育を立て直すこと
・銀行は潰せるサイズにしろ
・信用が崩壊しているなかで経営危機の企業に資金を入れても機能しない
・金融の本質は信用。貨幣とは信用そのもの。信用できる相手にしかお金を出さない。信用収縮、信用危機。
・欧州の金融機関は証券化商品を買ったが、押さえるべき担保はすべてアメリカにある
・バッドバンク:政府と民間でファンドを設定し、不良債権を買い取る
・もともと投資銀行は担当する企業を成長させることを生き甲斐としてきた。それがバンカーだった。しかし稼ぐ絶対額が少なく銀行内で偉くなれなくなった。 実際に稼ぐのはトレーダーになってしまった。
・いい仕事をして、仕事の質を評価されたい
・個々の人間は魅力的なのに、集まって大きな組織、企業になると、うまく機能しなくなる。組織の論理に埋没する。リーダーが権限、権力で統治、命令するのが苦手
・よいリーダーはいいデザインを組んで、方向性を与えている。組織のメンバーにはある程度自由にやらせる。ビジョンと判断力、決断力を備えたリーダー。 単なるトップダウンでなく、組織が内部から自発的に盛り上がるスタイル。トップダウンとボトムアップが両立する組織。
・日本のスターは村みんなで応援するような一体感から生まれる
・ハウツーより場が大事
・今回の危機は社会や人間の危機。その受難を力を合わせて乗り越える必要性に直面。人類は共通の価値観に結ばれていく恵まれたチャンスを掴める
・新渡戸稲造「武士道」。武士道とキリスト教には相矛盾しない共通する価値観がある
・IT革命はITバブルという壮大な無駄があったから可能となった。多額の投資が行なわれ、優秀な人材がなだれ込んで、ブレークスルーが可能となった
・芸術は思想や信仰から独立しては存在しない
・自分たちの精神、ルーツにはとてつもない財産がある
・共感のある社会。思いやり、理解しあうこと
・中国はウルトラエリートが指導者層に来るシステムが世界一整っている国。リーダーに相応しい人間をきっちり選んでくる。中国の致命的な欠陥は、 伝統、文化が既に何度も途絶えてしまっていること。社会のつながりのなさ、深みのなさ。

-目次-
1 最悪のシナリオは実現するのか?
 1930年代の世界恐慌よりもひどい状況
 借金ができないから消費もできない ほか
2 借金依存経済に終止符を
 財政刺激策はやってはいけない
 ケインズは曲解されている ほか
3 金融と経営の原点へ回帰せよ
 失われたのはお金ではなくビジネスモデル
 消えてしまった「バンカー」 ほか
4 再生はどこからもたらされるか
 日本は「デザイナー」不足
 日本人の作る新しい組織の形 ほか
5 生き残るための条件
 日本人は世界標準で働けるか?
 日本人はアメリカ人より10歳幼い ほか