読書メモ

・「自分の人生に一番いい結果を出す幸福術 ―ヒルティの名著『幸福論』マル得生かし方
(カール・ヒルティ:著、齋藤孝:訳、三笠書房 \1,300) : 2010.08.26

内容と感想:
 
ヒルティの名著『幸福論』は幸福な人生を送るための秘訣の集大成。 その『幸福論』を訳者の齋藤氏がエッセンスを抽出し、解説を加えた本。 全部で76の「幸福術」が紹介されているが、訳者はいずれも「具体的ですぐに実行できることばかり」と太鼓判を押す。
 解説にもあるように、ヒルティは「一番簡単に最高の幸せを得る方法」は「人生の中で一番長く使う時間を幸せに過ごすこと」と言う。 つまり、仕事をしている時間を幸せに過ごすことが大事だということだ。仕事が金を稼ぐためだけの労苦でしかない者にとっては、苦痛以外の何ものでもないかも知れないが、 そんな仕事(労働)であっても幸せに過ごすための方法を中心に本書では述べられている。
 世間では失われた10年だの20年だの言うものだから、なかなか明るい展望が見出せなくなっている我々日本人。 一人当たりGDPでは既に世界でも低順位。GDPでは幸福度は測れないという議論も最近はあるが、 それにしても物質的には豊かになったが、幸福度はどうなのだろうか?幸か不幸かなんて主観的なものだから測りようもないとは思う。
 本書には「幸福や成功はしばしば、不幸や失敗の先に待っているもの」という言葉がある。 その先に行くためには前に進む勇気が必要だ。今は多くの人が立ちすくんでいて吹くかどうかも知れない追い風を待っているか、 あるいは勇気ある者は迷いながらも前に進もうともがいている。じっとしていても得られる幸福もあるかも知れないが、 明日死ぬかも知れないと考えれば、失敗を恐れず、まずは一歩前に進む方を私は選ぶ。 たとえ今が不幸だとしても「幸福の種」と考えて、何度でも乗り越えていきたい。

○印象的な言葉
・幸福になるための第一条件は仕事
・どんな苦難の道を歩んでいても、幸福感を感じた瞬間、それを肯定できてしまう。まるでオセロの黒が白になるように。
・悲しみや痛手の中からさえも、ある種の幸福を見出せる
・明日は必ずやってくる。同時に明日の新しい力もやってくる
・次世代に継承し、多くの時間、多くの人の力を費やして初めて成り立つ使命や仕事もある
・苦難こそ幸福へ至る門。たいていの人はそこで引き返し、つまらない何かで妥協してしまう
・病気がストレス過多など精神的な要因に気付くきっかけになることがある。克服することで精神的に強い人間になれる
・喜び以上に健康にいいものはない。喜びは感謝の念を持つことから生まれる。あらゆるものに愛を注ぐ
・ある物事の一つの側面しか見えないとき、もう一つの側面を探し出すこと。手取り早いのは裏返してみること
・怒りは自分自身の考えが引き出したもの。しばらく時が経つのを待っていれば受け止めるだけの余裕が生まれる
・モノ、お金も一時的に自分に委ねられているに過ぎない。それを誰かに奪われたとしても「天に返した」と考える
・恐怖にかられていると、力を消耗し、実際に何かが起こったときに対抗できない。恐怖にはそれを生み出すモトがある。それを取り除けばいい。
・嫉妬や羨望は何ももたらさない
・穏やかな眠りはどんな不幸や失敗も癒してくれる
・敵対関係から生まれた友情は最も信頼できるもの。互いの欠点がよくわかっているから
・真の勇者は勝利の後にむしろ謙虚になる。いかなる勝利も相手を苦しめ、痛めつけた結果だから。
・何があっても愛を失わないこと。心は常に平穏に保ち、前向きな関心を失わないために。
・突き上げるような愛に溺れることなく、自然に湧き、満ちてくるような愛を静かに育む

-目次-
1章 仕事は楽しくやる
(「没頭できる仕事」=「幸福」の原則
とにかく「できるところ」から手をつける ほか)
2章 「充実時間」を増やす
(「時間がない」と言う前に
とんでもない「思い込み」 ほか)
3章 「人生の試練」を乗り切る
(それは、一生をかけて求めるもの?
“なまけ心”と闘う ほか)
4章 「心」を鍛える ―エピクテトス「自分を生かす法」
(「自分の力が及ぶもの」と「及ばないもの」
間違いと失敗を防ぐ一番いい方法 ほか)
5章 世界で「いちばん幸福な人」
(「敵がいる」ことの最大効用
相手の“人間性”を見抜く三つの条件 ほか)