読書メモ

・「龍馬の金策日記 〜維新の資金をいかにつくったか
(竹下倫一 :著、祥伝社新書 \760) : 2010.06.05

内容と感想:
 
最近、途中からだが大河ドラマ「龍馬伝」を見始めた。チラ見していたらどんどん面白くなってきたからだ。 さて、本書は坂本龍馬が海援隊などを作るなど、維新の活動資金をどうやって工面したのか不思議に思った著者が調べて書いたもの。 普通の伝記より、リアルで生活感があって、より龍馬が身近に感じられるかも知れない。
 龍馬は生涯、お金に苦労したようだ。天下国家のために工作するには膨大な金がかかるもの。それをどこから調達してきたのか? 龍馬の実家は土佐でも指折りの裕福な家だったが、龍馬の死とともに実家は没落したという。 彼は実家からも仕送りを受けていたらしいから、家族も家を挙げて、お国のために働こうという龍馬を支援したようだ。
 勝海舟の海軍操練所は「費用を自分たちで賄う独立独歩の精神を持って」設立された。 勝はどこからかお金を捻出してくるのが得意だったそうだから、塾頭だった龍馬も金策術を近くで学んだのかも知れない。 当時は志士たちをサポートする商人たちも多かったようだ。
 有名な「いろは丸事件」では紀州藩に「詐欺まがいの賠償金ふんだくり」をして大金をせしめたらしい。 また、土佐藩の重役にたかったり「武士や藩にはかなり無遠慮なお金の無心をして」いたようだが、一方で商人たちには几帳面に貸し借りを清算していたそうだ。 大事を為すためにお金なんて小さいことは”無視”。同時に”無私”の人でもあった。

○印象的な言葉
・海軍塾が閉鎖となり薩摩藩の居候になった。薩摩は航海の手先として使おうとしていた。
・長崎で薩摩がスポンサーの亀山社中を設立。薩摩は長州との関係改善などを龍馬に期待。社中は経済的自立できないまま、海援隊に組織替え。
・岩崎弥太郎を金づるにしていた。弥太郎は海援隊の尻拭いをさせられた(いろは丸事件、イカロス号事件)。 いろは丸事件で得た賠償金の大半を弥太郎が横領したという説。
・土佐藩にライフルを売り付けて一稼ぎ。大政奉還の成否にかかわらず、一波乱、二波乱はあると予測し、土佐に武器を準備させた。
・収入源を断つという倒幕方法
・海援隊は土佐藩の後ろ盾を得るために結成
・幕末、武士が領地の農民から借金するのはよくあった。滞納しても年貢から差し引けばよく、農民としても貸しやすかった。利息は年15%。
・土佐藩が一つにまとまるのを待っていては時期を逸するとみて脱藩
・龍馬の活動のために坂本家が山を売った
・幕末、長州藩は交易活動によりいち早く財政再建を果たし、裕福な藩だった。勤皇活動をする浪士をかくまった
・勤皇活動と称する浪人の中には辻斬りや強請りなどをする者もいて社会問題化していた。浪士隊、新撰組も浪人対策の一つ
・勝海舟は物事を面白おかしく語る癖があった。浪士たちがいたずらに犠牲的な行動を起こしていることを嘆き、そのエネルギーを海軍塾に向けさせた。 海軍塾は1年で閉鎖となり、勝は幕臣として幕府の残務処理のような役割を背負わされていく。
・刀を紛失すると藩に届ける必要があった
・若狭藩の脱藩浪士・梅田雲浜は廻船問屋などの商人と結託し、交易に一役買うことで活動資金を得ていた。亀山社中や海援隊のヒントに。
・長州は公家を使って勅令を濫発。論客と多額の政治資金を使って、公家を抱き込んだ
・海軍塾にいたときに北海道開発計画を幕府に出していた。浪士たちを送り込み、彼らのエネルギーを建設的なことに生かそうとした。 龍馬の甥で坂本家を相続した高松太郎は維新後、蝦夷地開拓のため函館府参謀として北海道に赴き、彼の弟・直寛も北見に農場を作った。
・亀山社中の副長的存在の近藤長次郎が龍馬のいない間に切腹したのは、長州の人間が薩摩名義の船で英国に密航する計画が発覚したためか? 薩長間に亀裂が生じるのを死をもって防いだ。
・薩長盟約が締結されると、薩摩はそれほど龍馬を必要としなくなった
・土佐勤皇党を弾圧した土佐は薩長から信用を失った。薩長とつながりを持ちたいと考えた土佐は龍馬に目をつけ、海援隊に出資。 土佐では勤皇の志士の多くは脱藩。有能で勇敢と評判を得ながら、事件・事故で命を落とす者が多かった。海援隊には浪士らとの和解も期待していた。
・海援隊の実働期間は半年
・薩長が贋金作りをしていたのは公然の秘密だった。それらは貿易の決済にも使われたため、新政府は贋金の後始末で苦労した
・当時の西洋諸国の動向は武士商人を問わず、知識階級にとって不安材料だった。志士たちにその解決を期待していた。 商人らが志士を支援したのも全国を駆け回る志士たちの情報が商業上メリットがあったから。 ・次男であることのコンプレックス

<感想>
・フランスは幕府に武器を売り、英国は薩長らを支援していた。双方に代理戦争をさせ、内戦で日本を疲弊させ漁夫の利を得て、分割統治を狙った?

-目次-
第1章 龍馬は浪人中、どうやって食いつないでいたのか
第2章 経済的自立への道
第3章 海援隊貧乏記
第4章 龍馬の仰天錬金術