読書メモ

・「エコノミストを格付けする
(東谷 暁:著、文春新書 \810) : 2010.01.25

○印象的な言葉
・日本のエコノミストはアメリカをモデルに日本経済を批判し、アメリカから借用した理論でコメント。それが怪しくなった。
アメリカで流行なら正しいと信じ込んでいた。そのときどきの雰囲気への過度な同調、繰り返される自己弁護。
・エコノミストが政権に関わり、プレイヤーとして理論を実験に移すことが常態になりつつある
・安易な雇用流動化は日本の雇用制度を支える社員教育を破壊。長期蓄積能力活用型、高度専門能力活用型雇用
・小さな政府を目指すなら政府支出も小さくしなければならない
・インフレターゲット政策:日銀総裁がインフレ率の目標を宣言することでインフレ期待を強めること。それで実質金利を下げることはできるのか? 期待をコントロール可能なのか?
・クルーグマンは自らの言説に責任感が強いというわけでは決してない。派手に予測し、派手に予測を外す。それを恥ずかしいとも思わない。 そのとき思いついたアイデアを買ってくれそうな相手に売り込みをする人物。発言は大きくぶれる。
・リチャード・クー:代表的な財政出動論者
・不況対策は財政政策と金融政策とのミックスで
・実力より低めに為替レートを管理する中国は、いっそう投機的な資金流入に見舞われ、それに対応するために、ますます資本規制と為替市場介入が必要になる
・歌舞伎プレイ:英語で「所作だけ」の意
・グローバリゼーション下では先進国の賃金は抑制または低下する。先進国ではディスインフレないし、デフレが定着する
・アメリカの海外投資による世界囲い込み。金融寡頭制
・アメリカの対外債務増大は所得収支の赤字としてつけが回ってくる。ドルの急落で米債務の調整を行なえば、日本の対外資産は大きく毀損する
・リーマンショック後、アジアの生産は過剰に減らされた。マイナスの加速が起きた
・21世紀のビジネスは製造業とサービス業の混成体。製造業かサービス業かという二者択一的な議論は不毛
・2003年から日本の不良債権が急速に減ったのは政策のおかげではなく、景気回復のおかげ
・大恐慌からの脱却プロセスには広い意味での「期待」がかかわっている。複雑な社会関係や人間心理が鍵
・経済現象を見通す能力のないエコノミストが、あたかも見通せるかのように振舞っている。一貫性があり、論理的で根拠のしっかりした言論を要求される
・財政出動は本当に効果的なのか
・人々を不安にして本を売りつけるのは伝統的マーケティング
・不良債権が社会に疑心暗鬼を蔓延させ、経済に必要な信頼を毀損したため、景気回復も遅れた
・マクロ経済学や金融理論に対して生まれた失望や批判
・金子勝:議論は鋭い
・嶋中雄二:独特の景気循環論
・竹中平蔵:政治的な行動のために経済的な見解を犠牲にしてきた
・野口悠紀雄:徹底した技術革新主義。ITバブルにも、金融技術バブルにも甘かった。徹底したミクロ経済の議論
・岩田規久男:流布している俗論への鋭い切り込み、親切でわかりやすい解説
・榊原英資:タフな改革主義者、グローバル主義者
・原田泰:データを駆使し、通説を引っ繰り返してみせる。実証分析と事実を尊重。事実によって意見を変えることは好ましい態度
・小峰隆夫:世間に流布している常識を覆す

-目次-
エコノミストたちの「大恐慌」
金融崩壊を予測できた人、予測できなかった人
新自由主義の罪と罰
格差社会と「小さな政府」
なぜ日本が世界で一番落ち込んだのか
神様グリーンスパンの正体
インフレターゲット論の着地点
財政出動は時代遅れなのか
中国とインドが未来の支配者か
日本経済を復活させる鍵
エコノミストたちの採点評
エコノミスト格付け表(〇九年版)