読書メモ

・「「脱・官僚政権」樹立宣言 〜霞が関と闘うふたりの政治家
(渡辺喜美, 江田憲司 :著、講談社 \1,500) : 2010.06.27

内容と感想:
 
政権交代させてはみたものの期待が大きかった分、期待外れと感じている国民が多いのでは? 渡辺氏は以前から、また本書でも政界再編が必要だと訴えている。 次の参院選では民主でも自民でもない、第三極を目指している。 彼らがどういう姿の再編を目指しているのか知りたくて読んだ。
 現在の状況は「エセ二大政党制」、 それは「小沢」対「反小沢」という「永田町内の人間関係、政治家の都合だけで離合集散を繰り返した結果」と酷評する。
 渡辺氏は安倍・福田内閣で行革担当大臣として公務員制度改革に取り組んだ。 しかし、道半ばで自民党を離党。 一方、江田氏は霞ヶ関を”脱藩”した元官僚。彼が明かす霞ヶ関の実態には驚くことだろう。 現役官僚では自己改革は無理。官僚の手の内を知る彼らの活躍に期待したい。
 「消費税増税の前にやることがある」とTVでも訴えていたが、 国家公務員人件費の2割カット、天下りの禁止などで財源は捻出できるという。 何も官僚イジメをしているわけではない、潰したいわけじゃない。 「霞ヶ関に国民の信頼が再び戻るようにしましょう」と言っているのだ。 真に国民のためになる仕事に力を注げる体制にしましょう。 また、公務員制度改革は国会議員定数削減と一体、政官一体でやる必要がある。 それに伴って国民も混乱や、一時的な痛みを伴うことが予想されるが、 閉塞感を打ち破るには、その覚悟が必要になる。
 民主党政権も結局、官僚主導、特に財務省主導の政治に対抗できていないのが現状だ。 菅内閣に代わったばかりだが、既に財務省に取り込まれてしまったなと感じる。 公務員制度改革は「総理大臣に命がけの覚悟がないとできない」という。
 他には地域主権や産業・経済政策についても言及しているが、 農林水産業政策については、後継者不足解消と雇用対策のために製造業が吐き出す雇用を振り向けたいとしている。
 さて、「脱・官僚政権」を打ち立てるということは、「みんなの党」は民主党と連立を組まねばならない。 小さな党が主導権を取るにしても、それなりの議席が必要だ。

○印象的な言葉
・渡り斡旋容認の政令(麻生内閣の天下り容認政令。官僚が自民党にも内緒で作成)の撤回
・天下りが諸悪の根源、歪んだインセンティブ
・「オバマは日本を重視」は外務省の大本営発表。オバマの日本の優先順位は低い
・財務省の「財政規律至上主義」はウソ。だったらこんなに財政赤字は溜まらない
・地方税が伏魔殿になっている。地方税の徴収事務にムダが多い。徴収率が低い
・家賃も所得控除対象に(非常時対応として)。住宅ローンなどで借金リスクを取らせない
・自民党から選挙に出ると、まず利権圧力団体のボス回りから。頭を下げて回るうちに、どんどん自分が矮小化していく。しがらみに足を取られていく。
・自民も民主も考え方に相当に差がある人たちが集まって政党と称している。うわっつらだけ。
・政治の8割は理念と政策に基づいた争い(合理性)、2割は感情(非合理性)。比率が逆転すると、人は感情に支配され、相手が死ぬまで戦う破目になる。
・メディアが得る情報は政治家より、官僚からのほうが圧倒的に多い
・天下り維持のために、無駄な団体や許認可、補助金を作る
・官僚にも定年まで働ける人事制度を作る(→官僚にも家族も生活もある。ある程度、余裕がないと安心して国のために働けない)
・天下り官僚の三種の神器:個室、秘書、専用車。三大カルチャー:仕事しない、頭下げない、リスク取らない。無為な毎日を送る。
・自己チュウ官僚
・各省庁は将来の事務次官候補を総理秘書官として官邸に送り込み、自分たちの意向を総理に実行させるようお目付け役にしている
・国家存続の機能、国富を増大させる機能
・国会答弁で官僚が都合よく作った答弁書を大臣が棒読み。それが既成事実化する。それを見破れるスタッフが必要
・小泉政権初期の経済財政諮問会議は機能していた。官邸主導、総理主導だった
・官僚、役所自体に民主的な正当性はない。民主主義の権化である大臣の言うことを聞かないのは民主主義国家ではあってはならない
・革命を起こすときは枝葉の部分は妥協しろ。幹と根っこが残ればいい
・地域主権:国民が身近なところで税金の使い道をチェックできる。政治参加意欲が起きる。住民投票を活用して住民参加型の自治ができる。 課税自主権、自主条例制定権。
・地方議会には自分たちで条例を作らないという形骸化した議会が多い
・金融経済危機の4つのステージのうち、3つめのステージに現在いる。これが次のステージに至ったとき、戦争が行なわれる
・期間限定で贈与税をタダにする
・社会保障個人口座:医療保険、年金保険、介護保険、労働保険などを一つにまとめる。納税とセットにする。負担と給付が明確化。 行政も簡素化、国民の利便性も向上。将来不安も解消される。個人金融資産も動きだす。
・景気波及効果の高い分野に重点投資。住宅と車。賃貸住宅や病院、老人ホーム、保育園を建て、設備機器を導入すると効果的。
・車を手放すときに譲渡損が生じる。給与所得と通算で相殺できるようにする
・変動相場制を標榜する先進国が膨大な外貨準備を持っているのはおかしい
・売るに売れない米国債は米国政府保有のシティグループなどの優先株や普通株に振り替える
・政見放送など政策を訴える方法が著しく制限されている(→有権者も選択のための情報を欲している)
・公務員の組合組織に支えられる民主党。組織票の誘惑を断ち切れば、その先には無党派の票がある
・明治維新では脱藩した下級武士が「武士の世」を終わらせた。脱藩官僚政治家が「官僚の世」を終わらせる。(→官僚たちがリスクを取れるかにかかる)
・職業訓練は民間、地域に任せる

-目次-
第1章 自民党政治の終焉
第2章 「天下り」が日本を滅ぼす
第3章 総理官邸が危ない
第4章 小泉改革も避けた「財務省支配」
第5章 「財務省解体計画」
第6章 「内閣人事局」を巡る暗闘
第7章 地域主権で官僚国家から独立せよ
第8章 日本復活の処方箋
第9章 政治家こそ「痛み」を知れ
第10章 国民運動、そして新党へ