読書メモ

・「ジオン軍の失敗
(岡嶋 裕史 :著、アフタヌーン新書 \829) : 2010.08.02

○印象的な言葉
・失敗する製品が世に出てしまうのはなぜか
・戦時下というハイプレッシャーな状況は技術にも生産活動にも奇妙に活性化された駆動力を与える
・戦争という巨大な消費機構の中で生産ラインを増やすことの罪は大きい
・生産ラインより格段に劣悪な環境、設備、人員で整備が行なわれる前線基地
・複数企業によるコンペ。生産の細分化と連携の遮断を導く
・完全に革新的な新設計を持つには、よほどの才能とそれを活かす環境がその組織内に登場する機会を待たねばならない
・工業製品は環境に適応しきらず、未完の要素を残しておくことが重要。未熟さとは進化する余地の別名である
・自由な設計が可能な環境が与えられた技術者は往々にして暴走する。誰も実現できなかったスペックを実装するという情熱や野心。 こうした熱狂は冷静で冷厳な管理者によて制御されるべき。
・高価な製品には代替機として廉価機が用意され、それがベストセラーになることも少なくない。廉価版を設計するプロセスはどこで妥協のバランスポイントを取るかを思考する。
・技術者の完璧主義、理想主義、潔癖性。稚拙な技術戦略。技術耽溺者の夢想
・現場の声を聞きすぎた開発は近視眼的な要件定義のリスクを内包する
・縛りのない設計は目的と用途を曖昧にする
・傑作機MS-06ザクU(→まるでゼロ戦のよう)
・アムロはエスパーのような存在で、ニュータイプとは別種の才能の持ち主だったのかも知れない
・技術者としての生命、人としての生命を削って、新しい製品を開発していった。達成の喜び、思索の充実、蹉跌の無念
・ガンダムはアニメーションの世界にかつてなかった広がりと深みをもって厳然とそこに存在していた

<感想>
・兵器メーカーの話しが出てくるが、アニメ本編には現れていただろうか?単なる作り話?
・ゴッグ登場あたりからジオン軍のモビルスーツはいかにも悪役という印象をもつ。アッガイという可愛らしい例外もある。
・ジオン軍と旧日本軍の類似性
・戦艦・大和のようなジオング。国威発揚のため国名を冠した

-目次-
第1章 MS‐06Fザク2 ―技術においては、「寿命の長さ」は必ずしもいいことではない
第2章 MS‐06R高機動型ザクシリーズ ―技術規格を増やすのは善か悪か
第3章 MS‐07グフ ―進化しすぎた技術は、環境変化で絶滅する
第4章 MS‐09Rリック・ドム ―あるセグメントで成功した技術が、別のセグメントでも成功するとは限らない
第5章 MS‐14ゲルググ ―投入するタイミングを失した技術は、どんなに優秀でも成功しない
第6章 MSM‐03ゴッグ ―突出したスペックを持つ製品は、きわめて運用しにくいものになる
第7章 MSM‐04アッガイ ―「使う人がいない」製品は、なぜできあがるのか
第8章 MSM‐07ズゴック ―仕様はどこかで決断しなくてはいけない
第9章 MAM‐07グラブロ ―モビルアーマーの存在意義を問う開発事例
第10章 MA‐08ビグ・ザム ―ビグ・ザムが量産の暁には、ほんとうにジオンは勝てたのか
第11章 MSN‐02ジオング ―フラッグシップモデルは造るべきか?