読書メモ
・「どうする!依存大国ニッポン」
(森川 友義 :著、ディスカヴァー携書 \1,000) : 2010.06.13
内容と感想:
「若者は、選挙に行かないせいで、四〇〇〇万円も損してる!?」の姉妹編。
前著では、自ら投票に行かず有権者としての権利を放棄し、その結果、自分に不利な政策が進められていても自業自得だと
若者の政治への無関心を批判していた。
本書はタイトルにあるように日本の「依存」体質をテーマとしている。
その過度な依存は日本の脆弱性であるという。
主なものとして、米国市場への依存、中国の労働力への依存、資源国に依存、米国の核兵器に依存、若い世代や子供への依存などを挙げている。
政治学者の著者は本書を若い世代の政治リテラシーを引き上げたいという思いで書いた。
日本の政治経済の現状を知り、次に何をすべきかを考えている。新書で、基礎を学ぶにはボリュームも丁度よい。
日本はこれまでは「お上にお任せ」でやってきたが限界が来ている。
官僚にお任せでは、国益や国民の利益に資することが難しくなってきた。
国民一人一人が動かなければ変わらないと著者は考える。どこか他人事で当事者意識が薄いのである。
そこで「若者党」を立ち上げるのはどうかと提案している。比例区なら100万票集めれば一人当選できるから、2,500万人いる20〜35歳の世代が
組織化すれば25人当選させられると。世代の利益を代表する人、同世代の声を代弁する人を国政に送り出す。組織化にはネットが活用できるとも。
25人の政党なら結構な政治勢力になる。同世代が望む利益が全て共通だとは思わないから、一つの党でなくても、いくつか立ち上げるのは面白い。
○印象的な言葉
・マスコミは(政治家も一緒になって)官僚組織をバッシング(→国家権力が弱体化する)
・格差社会は今後も拡大する。まだ少数派の下層に位置する人の数がいずれ逆転する。そのときが大きな転換点になる。
・戦争をしかけられた場合、戦わないで逃げるほうが悲惨な場合が多い。脅されて屈することのデメリットは大きい
・核兵器は費用対効果で、効率的な兵器
・日本が核武装する場合、核拡散防止条約(NPT)を脱退することになる。ウランの入手が困難になり、原子力発電にも支障が出る
・エシュロン:米国のスパイ兵器。日本では三沢基地に配備されている
・(米軍への)思いやり予算:年間2千億円を超える
・テロ特措法:米軍等の後方支援を可能にした。自衛隊の海外派遣を可能にした。憲法第九条の拡大解釈の連続。
自衛隊は日本の領土を出ないというコンセンサスはあったはず。第九条は既に有名無実。憲法改正が必要。
・防衛問題は有権者も政治家も関心が最も低い分野
・ひも付き補助金の見直し、官製談合の撤廃による歳出カット
・特別会計歳出は一般会計の4倍以上
・日米の労働賃金に差はないのだから米国のように安く農産物を生産できるはず
・日本の農業保護政策は消費者負担型農政。消費者は損をしている
・エネルギー源の多様化。特定の地域からの輸入に頼らない
・地熱発電は初期投資が高い。国が主導すべき
・未婚:人間が根源的に持つ欲求と適応齟齬をきたした
・独身税
・社会的ジレンマ、公共財問題:たくさんの人たちに利益が分散している場合、集団行動がとりづらい
<感想>
・政治家も必ず当選できるほどの実力を付けないと国全体のことまで考えられる余裕が出ないだろう。それを支える地盤があるといい
・政党助成金は政策秘書の人件費のみに指定しては?
-目次-
第0章 政治を動かす4つのアクター
第1章 20世紀型成長モデルに代わるものは?世界における日本経済
第2章 ゼロベースで考える日本国の防衛
第3章 まったなし!ツケを若者に回す財政赤字問題
第4章 自給率40%!食料依存の実態
第5章 自給率わずか4%!日本のエネルギー問題
第6章 結婚問題ととらえるべき少子化問題
第7章 どうする!?依存大国ニッポン
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