読書メモ
・「iPhoneとツイッターで会社は儲かる」
(山本敏行 :著、マイコミ新書 \780) : 2010.04.26
内容と感想:
コテコテのタイトルではあるが、iPhoneとツイッターの相性は良いとされる。
著者が経営するEC studio社では全社にiPhoneとツイッターを導入しているという。
同社ではこれらにGoogle Appsを加えてクラウド・ベースのビジネスを展開している。
本書では同社の事例紹介を交えながら、これらのツールのビジネス活用の可能性を語っている。
全社に導入してみて起きたことやメリット、デメリットにも触れ、
本書を導入マニュアルとして使ってもらいたいと著者は考えている。
例えば同社では、ツイッターを「公開目安箱」として社員の声の吸い上げに活用したり、
社外の人を巻き込んでアイデア出しまで行なっている。
社長自らが「つぶやく」ことで、社長がいつどこで何をして何を考えているかを社員が知ることも出来るという。
もちろんこのつぶやきは社外にもダダ漏れである。
また、つぶやきを見ることで同社への就職を希望する人が会社の価値観が合っているか判断でき、採用のミスマッチが減るとしている。
社内の活性化につながり、実際の会話も増えたと様々な効果を挙げている。
社内ならまだしも、つぶやきを外に公開しちゃって大丈夫?
小さな会社だから出来ることなのでは?とも思ったが、
巻末にある同社の社員のアンケート回答の中に、
「スタッフを信頼しているからこそできる、他の企業ならルールの作成に時間がかかり、なかなか踏み切れない」だろうとの声がその懸念に答えている。
スピード感ある社長の決断と社員の理解がそれを実現し、支えているようだ。
あくまでもツイッターは「作業の合間の息抜き」としているが、
社員の間でもツイッターへの温度差はあるらしい。
それは社内の情報格差につながる恐れがある。
馴染めない社員は疎外感を感じるはずだ。
強制されるのは辛い。そうなると価値観の違いとして会社を去るしかないだろう。
なお、同社は社内外のコミュニケーションをツイッターに依存しているわけではなくて、メールやTV会議、電話などのコミュニケーションを併用し、使い分けている。
現在、ツイッターのビジネス活用が試行錯誤されていると思われるが、著者は「部署単位からでもスタートしていくこと」を勧めている(第3章)。
ツイッターやGoogle Appsなどクラウド型のサービスはいずれも米国企業が提供するものであり、ビジネスを全面的にそれに依存することに対して警戒する声もあるが、
著者が言うようにまず小規模な範囲でいいから、とにかく使えるものは使ってみて、判断すればいいのではないだろうか。
社員アンケートの回答を読んでいて感じたのは、ツイッターのような新たなコミュニケーション・サービスが次々に登場するのも、
近年、急速に広がった新自由主義や市場原理主義などにより破壊された共同体の再構築や、行き過ぎた個人主義の修正を世の中が望んでいることの現れではないだろうか。
ただ、それは先祖返り的な姿ではなく、ネットなどツールを活用した新たな形のコミュニティであろうし、皆その適度な距離感・関わり方を模索しているところだ。
○印象的な言葉
・仕組み化が苦手な日本人
・熟考することなく、直感的につぶやく
・ふとしたつぶやきから何か新しいことが生まれるのではないか。吸い上げてこれなかった情報が吸い上げられるのではないか
・共感して欲しいという欲求。抑えていた心の声(→心を丸裸にする覚悟。口下手でも発信しやすい。外見と違った面を発見)
・ツイッターで企業の個性を出してファンを作る。PR効果ではなく、コミュニケーション効果を求める。
・ツイッターは部署の垣根を越えた社内コミュニケーションの活性化にも。社員一人ひとりのブランディング効果。直接言うタイミングがなかったり、言いにくいことでも言いやすい。
問題が深刻化する前に気付いて対応できる。
・ツイッターでなければ引き出されることがなかったメッセージもある。社員の知らない一面を発見。埋もれていた情報に光を当てる
・ツイッターは今を共有するサービス。臨場感。(→軽くねぎらって欲しいとき、愚痴りたいときにつぶやくだけでスッキリ)
・ツイッターで会いたい人にアプローチ
・(ちょっとした)ラッキーと思ったことをつぶやく(→出来る人の口癖をつぶやく)
・商談前に相手のつぶやきを見て、困っていることや考え方などを知っておく。解決策として提案を持っていく
・ツイッターで要約能力が身に付く。伝えたいことを簡潔に伝える
・企業アカウントとしてつぶやくにはその人物像を明確にする
・社長の決断に至る経緯を社員と共有する時間がない。社長が現場から離れてしまい、顧客のニーズからズレている
・ツイートメール:特定の人のつぶやきや特定のキーワードに対するつぶやきを一日分まとめてメールしてくれるサービス。顧客の声を見逃すことがなくなる
・経営陣への信頼、支え合い、情報交換など企業の活力となる源泉は社内コミュニケーション
・いかに隙間時間を活用するかが競争力を左右する
・Google Calendarはデジタル秘書
・Google Docs:変更履歴も記録
・Google Apps:世界中のデータセンターに分散コピーしてバックアップ
・プレステ3のビデオチャット機能でTV会議。6拠点まで同時接続。高品質
・商談(営業テクニックを学ぶ)、会議、全体朝礼、研修、パソコンの操作マニュアル(マイクで解説の音声を入れる)、誕生日のお祝いコメントなどを動画撮影して配信→Google Video機能
・クラウド上だけでビジネスができるようなスタイル。家賃を含む経費の抑制。在宅勤務など柔軟な勤務スタイル。
・Google Apps導入企業が世界で200万社。不況がきっかけ
・クラウド導入は業務スタイルの変更と同義
・ITで日本を良くしたい!
・クラウドはデータ紛失時の保障面で世界基準の法整備が整っていない
・経営のトップダウンとボトムアップのバランス
・ツイッターで他部署のプロジェクトの進捗状況を知る。社員の気分・体調等を見える化。
<感想>
・ツイッターで「にぎやか感」を得るには常に画面を眺めている必要がある→投稿のたびにバイブレーションがあったり、読み上げたりしてくれたら仕事しながらでも使えそう
・ツイッターのつぶやきを自動的に再構成して暗黙知を形式知化できるとよい
・会社担当者と顧客とのつぶやきのやり取り→店頭でやりとりしている雰囲気を出す。無駄話なども織り交ぜて。
・療養中のカウンセリングへの応用
・クラウドに情報を預けるのを銀行預金と同列で語るのは無理。銀行に預金額を知られるくらいは我慢できるが、企業の機密情報をGoogleなどに握られてしまうのは危険。
・Google Calendar:Googleに予定まで知られる気持ち悪さ。悪人は人の良さそうな顔をしてやってくる。Googleのサービスなしでは生きていけなくなったとしたら、ある日突然、有料にするかも?
・ツイッターで軽薄短小にますます拍車がかかるのでは?一方でより深く濃い情報を求めているようでもある
-目次-
はじめに
第1章 ツイッターを会社で導入する目的とは
第2章 ツイッターを導入して起きたこと
第3章 ツイッターのメリット・デメリット
第4章 アイフォーンとツイッターが会社にもたらすもの
第5章 グーグル・アップスとアイフォーン
第6章 コミュニケーションのクラウド化で会社は儲かる
スペシャル・インタビュー グーグル 辻野晃一郎社長
おわりに
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