読書メモ

・「ヒトラーの経済政策 〜世界恐慌からの奇跡的な復興
(武田知弘:著、祥伝社新書 \780) : 2010.09.25

○印象的な言葉
・ヒトラー政権樹立後、2年後には失業問題を解消(再軍備、都市再開発など)、労働環境は整備され、国民には定期的に癌検診が行なわれ、一定規模の企業には医者の常駐が義務づけられた。 禁煙運動、メダボ対策、有害食品の規制なども始められた。世界最先端の医学の国だった。
・世界恐慌から最も早く回復したドイツ
・アウトバーン。世界の高速道路のモデルになる。大量の公債を発行。予算は労働者の取り分が多くなるよう計算された。賃金のほとんどは消費に回り、景気対策となった。
・絶大な効果を見せた公共事業
・中高年を優先的に雇用。青年を農村へ農業支援に赴かせた
・中小企業の貸し渋り対策。つなぎ融資に特化
・オリンピックをビッグビジネスに
・少子化対策とニート対策。結婚資金貸付法は子供一人産むごとに1/4が返済免除となった。現金ではなく需要喚起券で支払われた。
・ストライキ禁止、労組廃止。全国統一の労働戦線を作った
・労働者用リゾートビーチ、郊外住宅、車。スポーツやレジャー、旅行を奨励
・減税して税収アップ
・大企業には増税、労働者には減税。しかし戦争が始まってからは増税に次ぐ増税となった
・歳末助け合い運動
・母子支援事業
・天下り禁止、公務員改革
・弱者救済とナショナリズムがナチスのテーマ。ナチスは労働者のための党。大衆政党
・輸入代金をドイツの商品券で払う、外貨を使わず物々交換で貿易。世界恐慌で外貨が枯渇し、貿易に支障をきたした国がたくさんあった
・金融危機に乗じて借金を半分にする。ドイツは破綻すると触れ回って外国向け債権を半額まで急落させ、すぐさま償還した
・ナチスの「欧州新経済秩序」計画はユーロのナチス版。金本位制の通貨の欠点も見抜いていた
・ケインズの経済理論をもっとも早く実行し成果を上げた
・シャハトは第一次大戦後のハイパーインフレを収束させた。土地を担保に通貨を発行。好景気を謳歌していたアメリカが投資先としてドイツはうってつけだった。 アメリカはドイツの通貨が安定し、社会も復興してくれば産業は発展すると見た。しかしそこに大恐慌に襲われた。シャハトはナチスを利用して経済を立て直そうと考えた。 ナチス前半の経済政策の多くは彼が発案・実行したもの。政権半ばで辞める
・企業は6%以上の利益が出たら公債を購入することを義務付けられた。労働者には貯蓄が奨励され、財形貯蓄のような形で積み立てさせた。積立金の利子は非課税。 積立金は収入から除外され、所得税も安くなった。
・企業は1920年代に設備投資が終わったばかりで銀行借入を必要としなかった。銀行の資金は公債に向かった。
・ゲルマニア計画:世界の首都となる街の建設。ウィーンやパリにも負けない都を作りたかった。ヒトラーはフランスを敵視しながらも文化には憧れていた
・アメリカ・フォード社の創業者フォードはナチス贔屓。ナチスから勲章までもらった
・ドイツは第一次大戦の賠償金の利子を21世紀になるまで払い続けた
・ドイツの財界には共産党への恐怖があり、それがナチスと財界の手を組ませた。ロシア革命後、間もなかった。頻繁に政権担当者が代わっていたドイツの国民は強い政権を望んだ
・労働手形:労働力を担保に国債を発行
・再軍備に際し、幽霊会社を作り社債を発行、主要な軍需メーカーに分配。社債とはいえ国債と同じ。ドイツ帝国銀行が保証していた
・もともとドイツはユダヤ人を受け入れる度量の広い国だった。向上心の強いユダヤ人はドイツ社会の特等席を占めるようになった。ドイツ・ワイマール憲法は先進的で基本的人権を 保障していた
・ドイツは石炭はとれたが石油は採れなかった。石炭から成分を抽出し石油の代替品を作った。人口石油は品質は優秀だったが、採算は取れなかった
・第二次大戦中、アメリカは参戦を渋った。ドイツに投資をしている企業、投資家がたくさんいた。ドイツに子会社をもつ企業もあった。 ドイツが「欧州新経済秩序」を発表すると、ドイツに欧州市場を独占されることを恐れたアメリカは参戦に傾いた。

<感想>
・当時は大量の失業者で溢れていたから思い切った政策が打て、国民の支持も得やすかったのでは?

-目次-
序章 ケインズも絶賛したヒトラーの経済政策とは
第1章 600万人の失業問題を解消
第2章 労働者の英雄
第3章 ヒトラーは経済の本質を知っていた
第4章 天才財政家シャハトの錬金術
第5章 ヒトラーの誤算