読書メモ

・「それでも、「平成恐慌」はありません。 ―これが、世界経済再生のシナリオ
(長谷川 慶太郎:著、WAC BUNKO \838) : 2010.09.27

内容と感想:
 
世界同時不況から日本が脱するには大規模な公共事業投資が必要だという。 何か一昔前の政治家が言っているような話だが、 都市集中の事業が有効だと考えている。 例えば渋滞解消、開かずの踏み切りを立体交差化するなど。 しかし他国が一斉にインフラ投資を始めたからといって真似する必要はない。 それに都市部だけに恩恵がいくことに全国民が納得するとは思えない。 まずは、安心してお金を遣えるように、一日も早く将来不安をなくす政策を打ち出すことだろう。 本書は政権交代前に出たものだが、著者は政権には財政赤字を一時的なものとして許容する決断力を発揮することを求めている。

○印象的な言葉
・金融危機はデフレの結果
・信頼が崩壊したアメリカ
・派遣労働者の導入により日本企業の不況対応力が著しく向上した
・製造業派遣禁止は間違い。製造業は海外へ移転していき、国内の失業を招くだけ
・米国人口3億人。年間1,100万台の車の買い替え需要がある
・国債貿易総額は14兆ドル。米国GDPとほぼ一致
・企業が内部留保を積み上げる理由は、景気変動に伴う資金需要の変化に対応する唯一の手段のため
・オイルマネーは投資先として日本をマークしている。CDSに手を出していない、技術力、地政学的に安全。
・ロンドンとパリを結ぶ新幹線は「のぞみ」型
・アメリカの鉄道は単線ばかり
・バルト海の海底に敷くパイプラインのパイプは日本製
・日本は外貨準備一兆ドルのうち1割をIMFに融資。日本が金融危機を終わらせた。IMFに対する発言権を強め、金融市場での存在感をアップさせた
・アメリカの空港は容量不足で常に混みあっている。NYやシカゴでも新空港建設を計画中
・アメリカの液化天然ガス貯蔵タンクは日本製
・日本で毎年労働市場に新規参入する人材は高卒を含めて30万人
・2007年の日本の貿易国際収支は22兆円の黒字。そのうち12兆円は海外投資からの利子、配当金
・中国では黄河が干上がって、揚子江から水を引いたり、ハゲ山に植林したりしている
・日本の定期預金の増加のペースは1日1兆円
・米国の人口増は年間300万人、全人口の1%
・英国は北海のガス田が次第に枯渇し、新たな供給源をロシアに求め、パイプラインを建設中
・ドイツは18州。各州が連邦政府より強い権限と財政基盤を保有
・ロシアの交通網は崩壊に等しい。鉄道のレールは磨耗、機関車は故障、車両は破損。鉄道事故、脱線事故も多い。片側一車線の橋がボトルネック。資金不足で拡張できない。
・豪州には大規模な資源開発に必要不可欠な公共施設への投資が遅れている
・金融危機後も各国の金融機関、民間企業、個人投資家も米国に資金を移動させている。有利な運用ができるから。米国の証券市場、特に株式市場は弾力性があり、迅速な回復力をもつ。 出来高も安定して推移している。
・国際貿易の決済に必要な短期資金を容易に、円滑に調達できる金融市場はNY以外にない。ドルしか担いうる通貨がない

-目次-
序章 騒ぎ過ぎの「派遣切り」
第1章 米金融危機は、日本にとって千載一遇のチャンス
第2章 金融危機は終わりました!
第3章 平成恐慌なんてありえません!
第4章 世界経済の今後を予測する
第5章 注目すべき先進各国の不況対策
終章 「米国の時代」は終わったのか?