読書メモ ・「逆説の日本史 16 江戸名君編」 ・天皇家の血を排除した将軍家と導入を企てた水戸家 ・徳川幕府の統治システム「朱子学」 ・俳諧を蘇らせた芭蕉 ・女優禁止令が発展させた人形浄瑠璃 ・怨霊鎮魂のために音曲化された平家物語 ・武士階級の初等教科書だった「太平記」。朱子学を背景に普及 ・水戸光圀は水戸学(儒教の一派)を創始した人物とみなされている。彼の業績は殉死を禁じたこと。殉死は武士の誉れとされていた。森鴎外「阿部一族」は殉死を扱っている ・水戸学は絶対の忠誠の対象を天皇としている。光圀が編纂させた「大日本史」は水戸学の源流 ・「徳川実紀」すら綱吉に批判的態度を取っている ・家康のブレーンだった林羅山親子は「天皇中国人説」を唱えていた ・中国で平和裏に禅譲されたことは一度もない ・長州藩(毛利家)がどんどん官僚化していった結果、幕末、長州は奇兵隊に外注せざるをえなかった ・怪力乱神を否定するからこそ儒教は宗教ではなく「儒学」。理性により道徳を追及する哲学、学問 ・戦国末期から江戸にかけて神道は京都の吉田神社、吉田神道が主流。全国の神社を事実上の支配下に置いた ・日本史の一大特徴は朝廷と幕府の併存、朝幕併存体制にある。朝幕習合 ・江戸初期の大名の取り潰しが浪人の極端な憎悪か、社会不安を引き起こした ・日本は和の文化。リーダーシップはむしろ悪ととられる恐れがある ・武士の俸禄は「いざ鎌倉」に備えてのもの。禄高で賄える家来を揃えなければならない ・「いかなる労働も神聖である」。道元に始まり、江戸初期の鈴木正三に至る「日本的禅学」の発展による ・抵抗勢力は説得には応じないもの。彼らには彼らの思想、信条、プライド、文化、信念、哲学、信仰があるから。話し合いでは改革不可能。改革の合理性を理解しようとしない ・民は預かり物であり、大名の私有物ではない(上杉鷹山) ・ユダヤ教の「トーラー」を日本では「旧約聖書」と訳したが、実際にはその最初に部分。聖書はユダヤ民族の歴史書でもある。 流浪の民となり、民族のアイデンティティを維持するためにまとめられた ・浪人の「太平記読み」が講釈師、講談の源流 ・「太平記」では仏教の呪術力、世俗における影響力を肯定的に扱っている。「太平記秘伝理尽抄」はそれを否定。 ・一般大衆を相手にした音楽家はベートーベンが初めて。音楽は宮廷を出て広く親しまれるようになった ・万葉時代から日本は「歌の前での平等」 ・俳諧:語源は俳優の諧謔。滑稽な芸。真面目な連歌に対抗 ・芭蕉の俳句は現実の中に心の世界を開く句。単純な写生の句ではない ・丸本物(丸本歌舞伎=義太夫狂言);人形劇を生身の役者が演じるもの ・上方歌舞伎と江戸歌舞伎の違いは和事と荒事だけでなく、反江戸・反中央かどうか。上方歌舞伎も人形劇の影響が強い ・楠木正成は大忠臣として明治以降、忠君愛国教育のシンボルにされた ・歌舞伎の大作を全段上演することを「通し」(通し狂言)、名場面をピックアップするのが「見取り」 ・講談は滑稽さは求めない。喜劇ではない ・落語家は前座、二ツ目、真打(しんうち)の3階級。「大ネタ」を前座が口演することは許されない ・江戸落語はイントロが長い。上方落語は少しでも多く笑わせることに重点をおく。上方落語には人情噺が少ない。人情噺にはサゲがないものがある。しみじみとした良い話。 ・文字という道具により人類は文化の蓄積が可能となった。農業生産力の向上による生活の安定の中、文字を作る試みがなされた。文化を飛躍的に向上させた ・李氏朝鮮で作られた簡易文字「訓民正音」がハングル(偉大な文字)と呼ばれるようになったのは20世紀以降 ・かつて源氏物語の読者層は朝廷に仕える人々、エリートに限られていた ・仏教は本来、怨霊を認めないが、日本では変容し、供養という名で鎮魂を行なうようになった ・普通の人間は輪廻という永久に続く「生と死のサイクル」から逃れられない。古代インド人は「生=苦しみ」、このサイクルから離脱することこそ救いと考えた ・江戸時代、「謡」(うたい)は庶民の娯楽となり、世阿弥作の「高砂」は祝言の「祝歌」として定着 ・ラテン語で書かれていた聖書が各国語に訳されたのは14〜16世紀のこと。カトリック教会は聖書を独占するために翻訳を長く嫌った ・江戸時代のキーワードは「文化の大衆化」。庶民は安価な本を入手できるようになった。出版業も成立した ・浮世絵(錦絵)は時事ニュースや報道写真の役割も果たした -目次- 第1章 江戸「名君」の虚実1 徳川光圀の生涯編 ―武士の「忠義」の対象は天皇か将軍か 第2章 江戸「名君」の虚実2 保科正之の生涯編 ―王政復古と明治維新へと発展した思想のルーツ 第3章 江戸「名君」の虚実3 上杉鷹山の改革編 ―名門家臣を断罪した「流血」の覚悟 第4章 江戸「名君」の虚実4 池田光政の善政編 ―「脱・仏教体制」の潮流と『太平記』注釈書 第5章 江戸、町人文化の世界1 江戸文化の「江戸的」展開編 ―俳諧と歌舞伎と落語のルーツ 第6章 江戸、町人文化の世界2 江戸文化の「江戸的」凝縮編 ―芸術の「大衆化」を支えてきた源泉 |