読書メモ

・「絶対の決断 〜われ、孤立を恐れず、大義なきを恥ず
(渡辺喜美 :著、PHP研究所 \952) : 2010.07.10

内容と感想:
 
「義命」により平成21年に自民党を離党した著者。 義命とは道義上の至上命令を意味するという。 「政治家として行なうべき正しいこと(使命や責任)を国民の真意に背かずに、絶対に行なうこと」と彼は理解している。
 今回の参院選で「みんなの党」は党として初の選挙ながら10議席を獲得して世間を驚かせた。 戦略の勝利だったと言えよう。主張も分かりやすかった。自民でも民主でもない第三極の必要性を訴え、民主党離れを促して、民主党を惨敗に追い込んだ。
 本書は離党直後に出た本で、当時はまだ自民党政権であった(まだ、みんなの党は旗揚げしていない)。 本書の内容は先に読んだ「民主党政治の正体」や、「「脱・官僚政権」樹立宣言」(江田憲司氏との共著)などと 重なる部分も多いが、離党直後ということもあり、どちらかというと離党理由と、 金融・行政改革担当大臣としての実績について重点をおいて書いていて、それが全体の半分くらい。
 最後の「結」章では公務員制度改革に触れているが、その「目的は、官僚機構の破壊ではなく、国民の利益のために働く官僚機構の再生」だと言う。 霞ヶ関では大臣のいうことに従わない官僚が跋扈しているそうだ。それは「究極的には国民に従わないことに等しい」というように、 その存在意義が今、問われている。
 著者は国会議員定数の削減も政策の一つに掲げている。財政再建のため、国会機能の充実のためにも議員の皆さんにも自ら身を切ってみせてもらはねばならない。 それで浮いた予算で議員の裏方スタッフ、政策スタッフを充実すべきだという。 「政治とカネの問題」については、 政治家個人への企業・団体献金は禁止すべきで、 献金の抜け道になっている政党支部も廃止すべきだとしている。
 参院選の結果、与党が過半数を確保できず「ねじれ」状態。著者は民主党との連立は否定しているが、 是非、その存在感を利用して、徹底した行政改革や公務員制度改革を実現させて欲しい。

○印象的な言葉
・官僚の得意な3つの抵抗法:リーク、悪口、サボタージュ
・オフレコ懇談を利用する官僚
・「前例はない」という官僚の抵抗。前例主義
・独立法人に移転された埋蔵金を取り返せ
・雇用・能力開発機構は長きにわたり箱物を作り続け、雇用保険料を無駄遣いしてきた
・官僚内閣制のもとでは総理大臣は誰でもよく、使い捨て。官僚専制内閣
・社保庁の年金記録問題が持ち上がったのは、意図的に情報がリークされた結果。社保庁の自爆テロに近い。官僚たちが勝手に政権転覆を謀りかねない。
・官僚のキャリア制度は霞ヶ関の暗黙のルールに過ぎず、法律で規程されているものではない
・いろいろな分野を移動しながら、この国の進むべき道や共通の価値観を各分野で共有
・公益ドナー制度:寄付制度。寄付金は全額税額控除する。有用な独立法人や大学はたくさん寄付を集めて、機能を拡大できる
・戦前・戦中、官僚制度が日本の進路を誤らせた。責任を取らない集団が、周りの空気で物事を決めた
・小選挙区制度:金のかかる政治を変えるために導入された。政党の力が強まるという悪しき側面もある。党内で自由にものを言えなくなる
・ヒトラーは労組を解散させ、低賃金政策をとり、5年後に完全雇用を達成し、経済も絶好調となった
・日銀も官僚内閣制の一亜流みたいなもの。独立性と称して、この国の戦略をちぐはぐにしている。本来は手段の独立性であって、目的の独立性ではない。
・日本は坂道を上がり切って、今、下り坂にいる。それをうまく下りきることができたら、その先にはまた新たな坂道がある
・バッドバンク:銀行の不良債権を買い取る銀行。1990年代に金融危機にあったフィンランドやスウェーデンで効果を発揮
・林業にも漁業にも所得補償をしたらいい

<感想>
・キャリア組には留学経験者はどれくらいいるのか?世界を知っている人がどれくらいいるのか?

-目次-
序 決断 ―義命により離党すべし
1 義憤 ―麻生内閣に物申す!
2 激闘 ―公務員制度改革をめぐる官僚とのバトル
3 孤闘 ―脱「官僚内閣制」を止めてはならない!
4 訣別 ―自民党とは何だったのか
5 突破 ―いまそこにある、日本の危機をどう救うか
結 春望 ―国破れて草の根国民運動がいま始まった