読書メモ
・「脱藩官僚、霞ケ関に宣戦布告!」
(脱藩官僚の会 :著、朝日新聞出版 \1,600) : 2010.05.30
内容と感想:
霞ヶ関官僚はマスコミや国民から叩かれて気の毒だ。その霞ヶ関を”脱藩”した元官僚たちが明かす霞ヶ関の実態。
そんな彼らが結成したのが「脱藩官僚の会」。
現役官僚では自己改革は無理だ。公務員制度改革のため、国民のため、官僚の手の内を知る彼らの活躍に期待したい。
第1章を書いた江田氏は既に「みんなの党」幹事長として政界で活躍中である。
では、彼らがやろうとしていることは何か?
第2章で高橋氏が明確に自分たちの役割を述べている。
・脱藩官僚が霞ヶ関の外側から新しい法案を書く
・政治家が霞ヶ関のつくる落とし穴に落ちないよう道案内する
・族議員や過去官僚と徹底的に戦う
また、第5章で福井氏はバカバカしい規制の本当の役割や特定利益集団からの圧力行使の実態を可視化したいとも言っている。
国の財政再建は待ったなしである。そのためにも、行政のムダをなくす、公務員制度改革を速やかに実現できるよう
彼らに期待したい。また、我々としては、改革が進んでいるかチェックし、政治家が官僚にいいように操られないか監視していく必要がある。
そして国を間違った方向に導こうとしている政権があれば、ノーと言おう。
○印象的な言葉
・ドブ板選挙に追われて勉強不足で情報も持たず、行政テクニックも知らない政治家。官僚にたやすく懐柔される
・現役官僚が身を切って「内なる革命」をしなければならない
・官僚が作る落とし穴:あえて期限が徒過するようにし、「今更どうしようもない」状況に陥らせる
・霞ヶ関文学
・天下りをして税金に寄生している元官僚
・理想と現実のギャップに失望し、流出する霞ヶ関の人材。やりがいや誇りを持てずにいる
・先例がある世界では抜群の能力を発揮する官僚
・キャリア官僚は地頭がいい人が多い。覚えることは得意。書類を書くだけが特技
・公務員制度改革は入り口(採用)からでなく、出口(天下り)から
・民間企業が欲しがるようなスキルを持つ官僚は勝手に再就職する
・地方分権を行なえば、中央省庁は6つ、国家公務員数と国会議員数は3分の1で済む
・霞ヶ関の仕事:役所の権限や予算の拡大、既得権益の維持のための政策立案。省益のため、が大半。雑用が大半。(←無駄な仕事を作っている)
優れた資質が国益や市民の利益に還元されず、生産性のない利害調整などに浪費。本人にも国にも多大の損失。
・広告塔になる有名人を担いで、正論を主張して仕掛ければ、改革は進む
・霞ヶ関の幹部クラスは守旧派で改革を妨害する。若手にはまだ改革意欲がある
・霞ヶ関だけが特殊なわけではなく、日本中で同じような組織の質的劣化が進んでいる
・民間も地方もすぐに政府に依存する。お上依存意識。権力者による庇護への渇望。
・日本全体から危機感がなくなり、ゆるんでしまっている。国のゆるみが個人のレベルまで波及
・霞ヶ関崩壊は既に始まりつつある
・ダメな組織の特徴:会合に4人以上やってくる、立派な本社ビル、A3用紙に細かい字でビッシリ書いた資料
・道州制は国鉄改革を参考すべき。中曽根や三塚らが国鉄内部の改革派と手を組んで改革した
・霞ヶ関が自主的に変わることはない。自らを改革していくDNAがもともと希薄。政治主導でやるしかない。(→痛みがないから自己改革できない)
・利害調整によって誰かが痛みを負わなければいけない時代。痛みを分配する時代
・学界には知的に卓越した階層が必ずしも厚くない。特定利益集団の擁護に熱心な者が増殖。研究しない教授たち。
有職故実や海外ものの紹介などにのみ没頭する者。御用学者。
・交渉の達人:丸腰で相手の懐に入っていき、相手の言い分をじっと聞くことから始まる
・霞ヶ関の9割以上はノンキャリア。彼らにはキャリア組のようなインセンティブはない
・無責任主義:責任を取らない。失敗したらクビ、給料がもらえないと思えないと本気にならない
・官が民に法案について相談するというニーズが生じる時代
・政策立案は霞ヶ関が独占してきたスキル。経験しなければ習得できない
・霞ヶ関には自分がやったことが世の中にどんな影響を及ぼしたかを把握するメカニズムが弱い
・霞ヶ関の士気が落ち、機能不全になれば、それ自体が無用の長物化し、壮大な税金の無駄遣いになる
-目次-
第1章 江田憲司
霞ヶ関連合軍と全面戦争をやり抜いた男
第2章 高橋洋一
官僚すべてを敵にした埋蔵金男
第3章 岸 博幸
霞ヶ関にゲリラ戦で挑んだ竹中平蔵氏の懐刀
第4章 上山信一
地方から国を変えたい自治体の改革屋
第5章 福井秀夫
行政の手口を知り尽くした政策通
第6章 寺脇 研
タカ派文教族に敵視されたゆとり教育の旗手
第7章 木下敏之
抵抗勢力と戦い、改革を実現した元佐賀市長
第8章 石川和男
規制緩和に心血を注ぐ「脱落官僚」
設立趣意書「CHANGE! 官僚国家日本」
緊急アピール「官僚諸兄へ……率先して自らの身を切れ!」
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