読書メモ

・「電子書籍の時代は本当に来るのか
(歌田 明弘:著、ちくま新書 \820) : 2010.12.31

○印象的な言葉
・Google撃退のツケは誰が負うのか
・膨大な既刊本の電子化は誰がやるのか。Google Editionならコスト負担なしで電子化。デジタル化しアクセスしやすくする。電子化には膨大なコストがかかり参入障壁は高い
・ウェブ新書:朝日新聞社が始めたビジネス。「わずか10分で今がわかる、新しい読書スタイルの提案」。「速さ」の需要に応じた出版物。 本一冊分の分量を書く必要がないこともある。書きたいことだけを書いてスピーディに出したいということもある。 調査報道やノンフィクションなどジャーナリスティックな著作物が生き残れる可能性がある。
・日本では電子書籍の安売りは簡単には起こりそうにない
・電子書籍は新奇な一種の客寄せパンダなものが多い
・企業群がグループ化し、「オープン」とは裏腹の事態にもなりかねない
・一見、活気があるようだが、消費者にとって魅力的なものになるとは限らない
・日本はイノベーションを受け入れる活力が乏しくなっている
・本の8割はモノクロ
・立ち読みは読者を作る
・電子書籍端末はこれからも変わる。フォーマットも変わる。将来も読める保証はない
・個人のまとまった考えが容易に発信できるブログのもつ潜在的可能性
・電子媒体のもつ長所:双方向性
・新たな「読み物」の誕生。電子「書籍」というように我々はまだ紙の本に引きずられている。デジタル時代の読み物は本の時代とは異なったものになる
・共感できる物語かどうかが重要。技術は二義的
・アマゾンは本を大量に読む人に向けてキンドルを売った。利用者は教師、経営者、専門的な知識を必要とする技術者。お金に余裕のある中高年齢者。文字の大きさを変えられる
・アマゾンにとって本を含めた商品は全て「生もの」。頻繁に価格を変えていくのが当たり前
・電子書籍に双方向的な画像や動画を盛り込むにはコストがかかる。紙のものより高くすることもありえる
・ウェブ・アクセスしやすいスマートフォンがキンドルを脅かす
・AppleやAmazonのような大きな「小売」がコンテンツの生殺与奪権を持つ
・Appleの「検閲」は恣意的なものになりかねない。表現の自由についての問題
・アメリカの雑誌社は定期購読の顧客情報を広告戦略などに利用し、購読料を安くしてきた
・本へたどり着くための導線の工夫。ウェブの情報発信者の手も借りて導線を作る。オンライン専門書店やコミュニティサイトなどが多様な導線に。
・読書端末だけでは儲からなくなってきた
・オープンなフォーマット「EPUB」はApple、Google、Sonyなど英語圏では広く採用され始めた
・日本の電子書籍は単行本、文庫に次ぐ、「三番煎じ」のかなり貧弱な市場にとどまる
・本好きが読書端末を買うかが、本格的に市場が成立するかどうかの分かれ目
・本は後世に向けても書かれている。楽しみのための道具であり、知的道具
・GoogleBooks:本の全文横断検索。本の検索は創業者たちの研究テーマだった
・Googleには「金儲けのためではない」という意識がある。それが使命という、宗教的な感覚がある。それは「イノセント」(無邪気、純粋無垢)に映る。 イノセントは凶暴にもなりうる。善だと信じれば批判も受け付けない
・フェアユース:権利者から事前の許可なしに著作物を利用できる。権利者側に負担がかかる
・Googleは著者や出版社の能力と所有物にただ乗りして儲けようとしているのか
・Googleのブック検索訴訟での和解により、Googleだけが事前許可なしに絶版本の電子化や有料閲覧ができるようになった。独占状態になった 日本が和解の対象から外れたことにより、絶版本の有料閲覧収入や海外の読者が日本の出版物に触れる機会も失われた。 日本の本が対象のブック検索がないことで日本の読者は不便
・米国の集団訴訟制度(クラス・アクション制度):一部の者が共通点をもつ多数の者を代表して訴訟を起こすと、その結果は利害関係者全体に及ぶことになる
・日本は大量の本を独力でデジタル化できるのか。既刊本の電子化は儲からない
・フリーミアム:有料と無料を組み合わせるビジネスモデル。一定数までのアクセスを無料にするメーター制などもある
・個人が力をもち、権力に立ち向かうことができると考える「対抗文化」の人々。情報の共有に重きをおく
・電子書籍市場の成長とともに再販制は行き詰まる
・今後、専門書など売りにくい本は出版できなくなる

-目次-
第1章 電子書籍の問題はどこにあるのか?
 最初の「電子書籍の時代が来る」
 「紙の本がなくなる」―二度目の「騒ぎ」
 「リブリエ」の失敗―何度目かの「電子書籍元年」 ほか
第2章 グーグルは電子書籍を変えるか?
 あらゆる書籍のデジタル化に乗り出したグーグル
 グーグルの「誤算」―ブック検索裁判
 グーグルによって生まれる新たな電子データ市場 ほか
第3章 「ネットは無料」の潮目が変わろうとしている?
 「ニュース記事は無料」の時代は終わるのか?
 サイトに高額課金すると新聞読者は戻ってくる?
 メディア王マードックの野望―読者が減っても収入は増える? ほか