読書メモ
・「2010年世界経済大予言 ―大恐慌を逆手にとる超投資戦略」
(松藤民輔、増田悦佐:著、ビジネス社 \1,500) : 2010.11.05
内容と感想:
2010年も残りわずかとなってしまったが、いざ大予言。
著者らはかつてソロモンブラザーズで一緒に仕事をしていたという。
本書はその二人が世界経済危機後の経済を予測した対談集。
2010年10月にはNYダウ平均株価は4,000ドルまで下がる、と松藤氏は大胆予測しているが、残念ながら外れている。
増田氏は「不況からの脱出には20年かかる」と言っている。しかし脱出には効果的な政策はなく、信用が再建されるまで自然治癒するのを待つしかないそうだ。
ダメージが大きかっただけに、世界不況はそう簡単には癒せないようだ。
また、2011年、米国では社債の借り換えラッシュが始まるそうで、3年間で2000億ドル。
これを償還できる企業がどれだけあるか疑問視する松藤氏。償還できずにデフォルトする企業が増えると、米国の景気の足を更に引っ張ることになるだろう。
「あとがき」で増田氏が興味深いことを言っている。
知的エリートが大衆を引きずり回す欧米型社会は既に破綻している、と。
今後の世界を牽引するのは、大衆が自分で考え、自分で決める社会を形成している日本型文明を開花させた国だけ、と日本が世界をリードする日が来ることを予言している。
日本にはパワーエリートがおらず、世界で初めての大衆国家だとの認識。
「平和で安全で貧富の格差の少ない日本的なライフスタイルがやがて世界を制覇する」だろうとも語っている。
世界には「平和で安全で貧富の格差の少ない」という条件が満たされていない国や地域がまだまだ多い。
欧米にない日本の魅力と貢献で、日本が世界の平和と安全をリードできるかも知れないというのは明るい希望なのではないだろうか。
日本には経済力と技術力以外にも文化力があるのだし。
○印象的な言葉
・世界はパワーエリートの時代から大衆国家に変身。日本にはパワーエリートはいない。世界で初めての大衆国家。最大党派が無党派層。
パワーエリート社会は一貫した戦略で動く。政党によって大きく変わることはない。政治や財界のリーダーはパワーエリート間の持ち回り。
・駐日大使に「小物」が選ばれた。日本文化・日本文明の感化力に底知れない恐怖心を抱いている。これまでの大使は日本に取りこまれ、米国の国益最優先で動かなくなってしまった。
日本的な発想、解決にも一理ある、と言い出すようになった。
・日本には経済力と技術力以外にも文化力がある。武力や外交に成り代わり静かに世界に浸透して大きな影響力を与える
・オタク文化:消費者がマーケットを作るダイナミズム。自然発生的。エリート不要。手弁当で運営。権力志向のない集団。同心円的な社会。競争しない。平和の象徴(→新日本人?)
・英国が最初にデフォルトする。真面目に少しずつ負債を返していくより、いっそデフォルトを宣言したほうが効率がいい。英国は対外債務がGDPの4倍に達する
・中国の生産は激減している
・欧米の二大政党制、民主主義の実態。自由意思で選択したのではなく、既に決まったものを受け継いでいるだけ
・米国は金を保有していない
・米国の新通貨「AMERO」の可能性
・世界最大の資産価値を持つ未上場企業カーライル・グループ。世界的規模で政府レベルの案件を手がける。政府要人を次々とアドバイザリーに巻き込む。
・米国の大統領選挙は大手広告宣伝会社に仕切られている。彼らが決めることは争点とアジェンダ(議題、課題)。有権者の自由度はごくわずか。
・欧米の金融期間は粉飾でなんとか延命治療を施されている。景気は3〜5年ぐらいかけてじりじり下がり続ける。ドカ貧よりジリ貧のほうが金融機関にはこたえる
・オバマ政権はヒラリー人脈で占められる。オバマはワンポイントリリーフ。ヒラリーが本命。オバマにネガティブな部分を全て負わせて退陣させる
・健全に競争が機能している経済下では大儲けする会社などそもそも出てくるはずがない
・日本は製造業を捨てない。物つくりを大切に国づくりをしている。技術革新は「継続が力なり」の世界
・民族の特性は危機や飢饉、敗戦といった極限状態に陥ったときに現れる。戦時中の日本では平等に配給された
・国民が嫌な政策は外圧で仕方なくやらされているんだとしたほうが国民を納得させやすい
・中国が崩壊したら日本の役割は大きくなる。日本のマネーが当てにされる
・円高なら頑張らなくても国民生活を安定的に運営できる。上品な生き方。輸出の8割は資本財と中間財で、日本が圧倒的に品質がいいから高くても世界は買ってくれる。
・カリフォルニア州は連邦離脱の可能性。国家意識を持ち始めている
・時が経てば熟した柿が落ちるように覇権は日本に転がり込んでくる。米国が財政的に自立できるまで少しずつ米国債を買い足し、米国経済が軟着陸できるよう辛抱強く待つ。
・欧州は歴史遺産で食べていくしかない。観光と金融以外は何の産業もない
・タックスヘイブン国の匿名口座(脱税口座)には7兆ドルの資金
・日本の支配階級は天変地異との戦いを延々とやってきた。問題解決には領民の協力なしにはできなかった。氾濫の多い3つの川があった尾張に信長・秀吉・家康などを生んだのは必然。
・国富ファンドや大手生保などの機関投資家が動き出したら相場はピーク
・インフレは国が大衆からマネーを奪い取る絶妙な手段
・1930年代、日本は不況期に増加する人口を養うには領土が狭すぎる、という政府・軍部の宣伝に煽られて冒険主義的な軍部独創を許した
・カナダではアメリカに対する研究を徹底して行なう。米国と同じことをしていたら飲み込まれると考えている
・咸臨丸でアメリカにわたった日本の武士は「思慮深く礼儀正しい」「超然としていた」
-目次-
第1章 オバマの賞味期限は二〇一〇年で終わる!?
第2章 さらば金融立国!製造業こそが日本と世界を救う
第3章 日本の個人投資家はこんなにすごい!ダウ四〇〇〇ドル、日経平均株価は四〇〇〇円になる!
第4章 金価格は一トロイオンス三〇〇〇ドルを目指す!?
第5章 為替、債券、原油、穀物はこう変わる!
終章 やっぱり日本は正しかった!覇権は日本に転がり込んでくる
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