読書メモ
・「日本大転換 〜あなたから変わるこれからの10年」
(出井 伸之:著、幻冬舎新書 \780) : 2010.09.14
内容と感想:
世界金融危機後、世界は大転換期を迎えた。そして日本も。
本書はアジアの中の日本、世界の中の日本としてどのように存在感を示し、生き延びていくべきかについて読み解いている。
「はじめに」では、日本にはアジアとアメリカをつなぐ重要な役割が待っており、
環太平洋アジア経済圏の確立に向けて、中核国としての役割を果たすべきだと、述べている。
これに対する異論はおそらく誰もないであろう。
また、日本の方向性として「平和国家」「環境国家」「文化国家」の3つを挙げている。
日本を特徴づけるキーワードとしては適当であろう。これらを日本復活の鍵としてどう活かしていくかが問題。
転換期の今、これから21世紀型産業構造の創出が始まる。
ビジョンを再定義しなければならない、新たな秩序とルールを作り出す絶好のチャンス、だと著者は言う。
日本はそのチャンスをつかめるだろうか?
本書は日本復活のための提言として内需拡大と外需創出の2つを掲げている。
そのうちの一つは新しい都市インフラを輸出産業にするというもの。
環境技術が進んだ日本ならエコシティ、循環都市を輸出できると捉えている。
そこには通信ネットワーク、電力、教育などのインフラも含まれている。
世界にはインフラが未整備な国や地域がまだまだある。日本だけでなく、他の先進国もそこのところは虎視眈々と狙っているはず。
途上国がビジネスの激戦場になる。既に原子力発電所や高速鉄道などでは国同士で受注合戦が繰り広げられている。
日本の売りは「安心・安全・清潔」であろう。日本に来たことのある外国人なら、実感することだろうから、
そこをどんどんアピールしていけばいい。
本書からは特に新たな知見が得られたとまではいかないが、ある意味、日本を再発見することができた。
○印象的な言葉
・ハンチントンは「文明の衝突」で日本はアメリカ追随から中国への追随に姿勢を変化させるだろうと予測。国と文明が一致した孤立した国家。何らかの危機に見舞われたとき、
他の国が支援してくれることを当てにできない。
・ハード単体のモノづくりというビジネスモデルの延長線上ではアジアの新興国と競争できない
・国や民族、世代を超えたネットワーク、交響する無名の個人によるハーモニー
・日本全体を21世紀のショールームに
・地方には未発掘の資源(文化、観光)が眠る。そこでしか味わえないという価値(その土地の味)。スペシャルな感じ、貴重さ。本物、オリジナル。
ローカルに徹してこそ(地元に特化)、グローバルに開かれる
・今後5年間は世界需要拡大の半分は東アジアで創出される
・米国の貿易赤字、財政赤字、軍事費。約5300兆円
・金融資本主義が扱うのは実体に裏付けられない「信用の流通」。期待感によって実体を超えて膨らんでいく。行き過ぎた信用創造
・新興国は日本のサポートを必要としているはず。そこに日本の活路がある
・日本の時代に対する危機感のなさ、切迫感のなさ
・高齢者向け仕様の都市デザイン
・日本は異様にコスト高の国。過剰な機能、過度の綺麗好き。それが高品質や安全性につながっている。それがある洗練に向かうときオリジナリティを発揮する
・Googleが成長したのは求心力から遠心力にパワーシフトした社会構造の変化にいちはやく気付いたから。拡散した個人の情報を再編成してビジネスモデルに組み込むことに成功。
・マスコミによる「上から目線」の情報伝達が時代にそぐわなくなった
・ビジョン以外は全てアウトソースできる(ドラッカー)
-目次-
はじめに 時代は大転換期にある
「越境と統合」を遂げたキング・オブ・ポップスの死
アジアとアメリカをつなぐ中核国、日本 ほか
第1章 変転する世界の中で
沸騰都市・天津を行く
米中のビジネスマンが着々と進める金融プロジェクト ほか
第2章 日本大改造論
ポップカルチャーの最先端が凝縮されたEXILEのライブ
可能性を秘めた独自のビジネスモデル ほか
第3章 日本再発見
寿司屋はなぜフランチャイズされないか
グローバルに展開してローカルに味わう ほか
第4章 個の発想が社会を変える
ツイッターがネットの可能性を広げる
ユーザーによるイノベーションの時代 ほか
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