読書メモ

・「クラウド・コンピューティング仕事術
(西田宗千佳 :著、朝日新書 \740) : 2010.04.28

内容と感想:
 
前著「クラウド・コンピューティング」(朝日新書)に続く、クラウド応用編。 ITジャーナリストである著者が実際にどのようにクラウドを駆使し、仕事に活用しているかを紹介。
 クラウド・コンピューティングという言葉もよく目や耳にするようになった。 本書を手に取ったのも技術動向を知っておくためだが、 中で紹介されているようなサービスは私はほとんど使用していない。 著者のような職業の方にはさぞかし威力を発揮することは理解できるが、 私は幸か不幸か、それほど必要としない仕事だ。
 クラウド・コンピューティングは大雑把にいえばネットの「あちら側」というクラウドに、 データもソフトも置いて、こちら側ではサービスだけ受けましょう、ということ。 運用・保守の手間がかからないのでコスト削減が期待されている。 しかし、重要なデータを手元にではなく、全てクラウドに預けることに抵抗を感じる声もある。 情報漏洩などの危険性を心配しているのだ。 その点にも第4章で触れている。 リスクをわかった上で、損得計算をして使う、と著者はいうが、 彼のような個人事業主ならリスクも小さくて、費用対効果が高いかも知れないが、 企業の立場になったら果たしてどうだろうか。
 サービス提供会社の質が不十分で、 情報流出によって「情報が第三者の手に渡り、悪用され」たり、情報の消失、ネットワークの切断によるサービスの中断、 突然、その会社が経営状態が悪くなってサービスがなくなる可能性もある。 サービスを提供する側とすれば「顧客のデータを安全に預かることは、自社の存続に関わる重大な責務」というのは建前としては分かる。 不満をもつ一社員が悪事を働く可能性もある。 リスクを上げたらきりがないが、そうしたリスクを全て考慮した上で、効果を見極め、導入の判断するべきだろう。 これが一番、企業側としては難しいだろう。 やはり身軽なフリーランスの事業者など個人やSOHOにこそ、クラウドは向いている気がする。そのサービスの利益をより多く享受できると思われる。
 第1章ではG-mailで全てのメールを一元管理することを勧めている。 フィルタ機能を使って、特定の案件や特定のアドレスからきたメールだけを携帯電話へ転送することも可能だ。 クラウドの最大のメリットの一つはこの情報の一元管理にあるといえる。 その他のクラウド・サービスとして、データのバックアップや、スケジュール管理、写真管理、メモ帳などなど便利なものが紹介されている。 スマートフォンや携帯端末の広がりで、これとクラウドの連携がますます今後、拡大するだろう。

○印象的な言葉
・甲府市が定額給付金交付事務手続きにクラウドを利用したのは、専用のシステムでは構築時間がかかり、短期間しか使わないシステム、コストも抑えたいから。
・技術は人を楽にするためのもの
・対話履歴はデータベース。メールに埋もれた情報を活かす
・G-mailでメールにラベル(タグ)付け。複数付けられる。スター(☆印)付け。フィルタに従って自動的に付けることも出来る
・Google Gears:オフラインでGoogleのサービスを使う。まだテスト的な扱い。
・無料メールアドレスは信頼度が低いと見なされる
・メールシステムをGoogle Appsにすることは運用コストの大幅削減になる。ハード、維持のための人件費、問い合わせ対応など。
・セールスフォース・ドットコム:顧客情報という高い機密性を必要とされる情報を預かる。全世界で59,000社が採用。安定性・安全性を重視
(→企業は何を根拠に信頼しているのか?実績だけを根拠にしている?)
・クラウド活用が広がるにはGoogle以外にライバルが必要
(→そうした志のある企業が出てくるか?資金力も必要だ)
・ケータイ、パソコン画面では表示できる文字の量や大きさなどに制約があり、一覧性に限界がある
・ブラウザのプライベート・モード:IDやパスワード、閲覧履歴などを記録させないモード
・CULV:コンシューマ向け超低電圧版ノートPC
・簡単な設定ですぐに使えるサービス。管理を任せるためにコストを払う
・PDFはISO32000-1として国際標準化されている

<感想>
・携帯電話のカメラはスキャナ代わり
・複数のクラウド・サービスを使って二重化
・新たにサービスを導入する際には納得できるまで検証すべき
・モバイルサービスを利用するのに有利なのは使用時間が多い人。ニーズのあるユーザはそんなに多くないのでは?

-目次-
第1章 メール革命から始めよう ―メールは二度と消してはいけない
第2章 携帯電話を「サブ脳」に ―「転記」と「印刷」よ、さようなら
第3章 パソコンでの「データ整理」のルールが変わる ―「分類」「完全デジタル化」にこだわらない
第4章 クラウド仕事術の「損得計算」 ―収支とリスクをわかって使う