読書メモ ・「変わる世界、立ち遅れる日本」 ・輸出は日本のGDPに多くの貢献はしない。製造業はGDPの2割を占めるにすぎない。旧来の官僚に主導された政権は製造業を贔屓にしている。GDPのわずか2割にしかフォーカスしていない ・資本主義の3つの弱点:不平等、不安定性、持続性 ・格差解消が最優先事項 ・G20による金融規制の強化が必要。規制を運用するには地球規模の協調が必要。一部の国がそれを乱せば全ての努力が水の泡。 ・グローバリゼーションによる長所:景気が回復すれば、それを分かち合える。協調しながら回復する ・保護主義を強化すれば、G20の会場で大恥をかくことになる ・小泉政権の変革で生じた最大のものは労働市場の二極化。それは既存の組織化された正規雇用者の利益のためと、その既存勢力との対決を拒んだ臆病な政治の結果。 ・リーマン・ショック以前から需要はゆっくりと落ち込んでいた。製造業は必要以上に多くの商品や部品の在庫を抱えていた ・GDPに占める製造業の割合が大きい国ほど激しく落ち込んだが、回復も早かった。その短期間の動きは長期的に判断する上での指針にはならない。それが持続可能な成長ではなく、 不安定性を示しているにすぎない。(⇒製造業は長期的展望を描けないといえる) ・日本を「モノづくり立国」とするのは古い考え。製造業とサービス業を区分するのはもはや無意味。二つは互いに深く関連している。唯一意味があるのは「知識集約型」とそれ以外。 日本で深刻なのは、生産性が高く、高付加価値な知識集約型活動が不十分なこと。 ・サービス業分野での生産性の問題の解決を急ぐべき。そえが製造業をも助けることになる。サービス業は国際競争にさらされていない。広告、テレビ、法務、卸売り、流通、小売、 通信、メディア、娯楽、電力、港湾、空港など。規制で保護され、カルテルや寡占で競争を制限している。 電力、通信費はOECD加盟国と比べて割高。ITやインターネットが普及したのにもかかわらず生産性が低いまま。 ・日本の税収が減っているのは、生産性の低さにも起因 ・日本経済は知的でなくなり、知識志向でなくなってきている。非正規雇用者は訓練を受けることが少なく、人的資本として蓄積されない。知的労働者が少なくなっている。 労働市場全体の改革が必要。より弾力性に富んだ単一の労働法規が必要。 ・過去、政府の社会福祉への支出は少なかった。企業や世帯がその多くを負担していた。これ以上、そこに依存するのは難しい ・リーマン・ショック後、中国やインドの原料輸入が落ち込み、アフリカや南米の貧困国が打撃を受けた。この景気後退の後遺症はかなり長続きする ・中国の政権は格差、劣悪な医療設備、退職金に対する国民の不安を解消しようとしている ・英米二国の銀行システムの信用は早く回復する。ドイツ、ハンガリー、中東欧諸国には確信がもてない。銀行の安定性への不安は長く続く ・ギリシャ、ハンガリー、バルト三国、ロシアではアジアよりも悪い結果が生じる可能性がある。経済からくる重圧が長く続けば、それが起こりやすくなる ・各国が問題を共有すれば、その解決策が見出せるという強い自信が生まれている ・最大の損失を蒙り、負債の償却を行なったのが、ドイツとスイスの銀行 ・中国の外貨準備をSDRに交換する見返りとして、為替相場制の自由化を進めるかも知れない。中国通貨をめぐって他国間で交渉が決裂するようなことになれば、地政学上の緊張が生じる ・9.11事件で米国と英国の軍事力と諜報活動の評判が地に落ちた。イスラム原理主義者の現代社会への強い反感 ・世界経済危機が直ちに世界や資本主義の動向に根本的な変化をもたらすことはない。短期的なショックや騒動に惑わされず、長期的な傾向や力を見る必要がある。 米ドルが重要性を失うとかいうのは間違い。 ・中国企業がCO2の排出に高額投資を行なう必要がないことで、他国が不公平な立場に置かれるのは問題 ・世界で採掘できる石炭の確認埋蔵量は、現行の消費ペースでは150年分、天然ガスは60年分以上、原油は40年分以上ある ・中国やインド、その他の途上国では燃料小売価格が規制や補助金で抑えられている。資源高騰の衝撃は消費者や企業に転嫁されず、政府財政で吸収されているが、その負担はあまりにも大きい ・化石燃料が高価であることは、代替エネルギーを模索し、新しい技術への投資を促す ・よりグリーンな生産が国益になると中国を説得するには、石油価格の高騰と通過切り上げを組み合わせることが不可欠 ・インドは中国に比べ、3分の1程度の豊かさにすぎない。人民元が切り上げられれば、その格差は広がる ・来る十年のうちに石油時代が終わりを告げる。石油の時代が完全に消滅するには数十年を要するが。発電所、鉄道、船舶、トラック、乗用車などより高価な設備は石油に深く依存しているため。 ・アラブ諸国、ロシア、イラン、ナイジェリアの崩壊を阻止しているのは石油や天然ガスによる収入かもしれない。これらの国は不安定で脆弱。石油時代が終わりを告げれば将来、より危険になる。 ・マルクスは資本主義の危機の原因が、その潜在的な矛盾、環境破壊にあることまでは予測できなかった。マルクスが予告したような根本的な危機はいまだに発生していない。 資本主義が極めて適応性が高く、弾力性に富んだシステムであるため。(⇒これからが危機の本番で、破局に向かうのでは?) ・資本主義に勝るものを考えても、現実はなれした空想にすぎない ・資本主義に弱点があるのは認めねばならない。不平等が増すと、社会に緊張状態が生じて紛争を招き、資本主義を崩壊させる可能性がある ・資本主義の将来として、より実効性があるのは国家に主導された中国式の資本主義か?この中国モデルはかつて、日本、韓国、台湾、マレーシア、シンガポールなどアジア各国で見られた。 経済活動がより成熟し、複雑化するにつれ、政府の果たす役割が減じていったのがアジア。 ・マルクスは先進国が納税者の負担で教育を国民全体に与えたことに驚くだろう。それは労働者階級からの政治的圧力によって促進された。教育を十分に受けた市民は社会的に安定し、 生産性も高いことを、資本家たちは悟り、許容した。 ・不平等問題は既に水面下で爆発寸前の状態にある ・人民元が自由に取引できるようになれば、より多くの国が人民元建てで貿易するようになり、中国の影響力が地球規模で強まる ・単一のアジア通貨を作るのは政治的に不可能。アジア諸国の経済は、その富と構造、力において大きく異なる -目次- 第1章 経済危機から脱出する日本の戦略 ―製造業依存の転換をめざす 第2章 知識サービス産業で成長する日本 ―通信、電力、空港などの規制緩和で高利潤へ 第3章 世界経済は回復に向かうのか ―安易な予測より明白な現状を認識せよ 第4章 G20で模索される世界金融システム 第5章 環境問題が資本主義を変革する 第6章 グリーン大国に化ける中国 ―石油時代の終焉 第7章 格差社会は新自由主義を変えるか 第8章 メインバンク・システムの復権 ―衰える英米金融の影響力 |