読書メモ

・「米中軍事同盟が始まる 〜アメリカはいつまで日本を守るか
(日高義樹 :著、PHP研究所 \1,300) : 2010.07.18

内容と感想:
 
タイトルにもあるように著者は、オバマは米中軍事同盟を目指していると考えている。タイトルを見たときは私には「ありえない」と感じたが、 それが普通の感覚であろう。 その同盟は北朝鮮やミャンマーといったアジアの「ならず者国家」との外交問題を、直接対決することなく解決するためには有効だという。 しかし米中が結ぶということは「アメリカの理想に逆行する行為」であり、「人類の歴史においても異常」だと著者はいう。
 本書はアメリカを中心とする外交・安全保障がテーマである。世界にはまだまだ紛争の火種が絶えず、世界の警察官たるアメリカはそれにどう対応しようとしているか、 知ることができる。そして日本はどうするべきかを考えている。
 第二章では鳩山政権退陣のきっかけになったアメリカ海兵隊「普天間基地」に触れている。 著者はもう普天間基地は無用になったと言う。 仮想敵国としている中国の核ミサイルは日本のあらゆる地点を攻撃する能力をもっている。 同時に、在日アメリカ軍もミサイル攻撃の危険にさらされている。 だから普天間からグアム島に移転する計画が進められているのだ。 また、台湾や朝鮮半島に海兵隊が出動するような大規模な地上戦は考えられなくなった。 もはや基地は「日米間の軍事同盟を象徴するもの」に過ぎないとも言う。 そうであれば、必要がなくなったのだから日本は基地を「返還してほしいと主張するべきだろう」との論は当然だ。 しかも米軍は国防費も削減されて「日本にアメリカ軍を置いておくことも難しく」なっているようだ。 しかし、米軍撤退の後の自国の防衛をどうするか、早急に検討する必要があるだろう。
 オバマは昨年12月、核兵器廃絶を訴えてノーベル平和賞をもらった。 「ただ核兵器の数を制限すれば世界が平和になると思っている」のは大間違いだと著者はいう。 まだ何も削減していないのに受賞するのはおかしいと感じた人が大半だろう。 「何の実績もない人物」に賞を与えたのは、アフガンやイランに対して彼の手を縛るためだと指摘する。 情勢が悪化したときにアメリカは核の使用もありうると彼は考えているようだ。
 理想は分かるが核兵器がなくなったからといって、他の武器は残るわけだし、人々の心に対立が残れば戦争自体はなくならない。 「核なき世界」が先か、紛争の根本原因である貧困をなくすのが先か、世界政府の樹立が先か、どれも必要だと思えるが、 いずれも実現する努力を進めなければならない。

○印象的な言葉
・米国は中国のミサイル開発を助けている
・アフガニスタンはベトナムより混乱している。武装勢力は増強されている。新しい兵器を持ち、戦い方も組織だってきている。アフガンの状況を米マスコミは伝えていない。 タリバンを支持する人も増えている。復活を狙っている。アフガンは部族の連合体。
・パキスタンで大混乱が始まる。部族の連合体で対立も激しい。中国や北朝鮮からミサイル技術を入手。軍部や情報局戦略本部はアメリカを敵視。
・印パ核戦争が始まる
・イラン・イスラエル戦争が始まる。イラン海軍は英国流。士官は英国で教育を受ける。ペルシャ湾を自分たちのものと考えている。中東を束ねる象徴として核兵器を持とうとしてきた。 ペルシャ帝国の誇りを取り戻させよう、シーア派(中東では少数派)の教えを中東全体に広げたい。。イランがペルシャ湾を封鎖したときに最も被害を受けるのは日本。米国はほどんど影響がない。
・アルカイダは力を強めつつある。核ゲリラ戦を始める。アフガニスタンの人々の援助を受けている。住民に溶け込んでいる
・アメリカは核兵器を使うしかない。最も効果的な兵器
・2016年、在韓米軍は撤退する。休戦が続いていた中国との軍事敵対関係も終わる。中国を仮想敵国としてきた日米安保も終わる。 既に在韓米軍は縮小を続け、多くが中東へ移った。
・インドは核ミサイルを実戦配備し中国を攻撃できる態勢。軍隊も優秀
・米国の中国への思い。人民による革命で作られたことへの親近感、日本より扱いやすい
・FOXニュースは保守系で、オバマ批判を続けている。オバマもFOXイジメをしている
・オバマはアメリカを日本のような社会主義的色彩の強い体制に変えようとしている。労働組合主義、官僚主義。彼の支持母体の労組、黒人、女性に関心があるのは国内問題。
・オバマ政権には中国派が目立つ。軍人との関係は疎遠になりつつある
・レーガン時代に500隻あった米艦隊の艦艇は260にまで減少。10年後には200隻を切ることが決まっている。海軍はほとんどを太平洋に移動させた。 艦艇乗組員の募集も難しくなっている。人員も今後削減を予定。膨大な燃料消費の削減も求められている。艦艇・兵器のメンテナンスが十分にできなくなる恐れ。
・ミサイルによる攻撃が戦争の中心になる。攻撃を避けるために部隊を分散させている
・オバマは彼が生まれたハワイでは日系人が強い力を持っていたことに反発を感じていた
・アメリカの通常兵力は大幅に減り、核兵器に頼るしかない。核兵器の大きさは通常兵器と同じ、簡単に運べる
・兵器や弾薬の不足でアフガニスタンでアメリカ軍前線基地部隊が全滅しかかった。兵力増強に踏み切らねばオバマはペンタゴンも敵に回す。オバマの支持母体は反対。
・米国のベトナム戦争の敗因は黒人などの下級指揮官の被害が増え、彼らが戦意をなくし、命令を聞かなくなったため
・米国のイラク駐留軍は住民との関係を強化することで、情報が入るようになった。表裏があり、信用できないイラク人
・石油価格に対するOPECの影響力が小さくなっている
・スイスなど核兵器の闇市場
・北朝鮮は中国の承認なしには核兵器を使えない
・ケネディは歴史の中では失敗した大統領と位置づけられている。キューバ危機は実際には存在しなかった。マスコミが作り上げた話。
・負けを認めないアメリカの精神。勝つためには何でもするという危険な考え方
・肥料や美容製品からも爆弾が作れる
・人口比率から見れば、今後アメリカは黒人とヒスパニック系の人々の社会になる
・ドイツは徴兵制。ドイツ軍はアフガンで武器を取って戦っている。戦わないことを原則にしていたが、アルカイダの攻撃を受けて反撃

<感想>
・在日米軍基地の存在意義がなくなった今、夜間訓練なども最小限に出来そうなもの

-目次-
第1章 米中軍事同盟は、いつ始まるか
第2章 アメリカはいつまで日本を守るのか
第3章 アフガニスタンで負ければ印パ核戦争が始まる
第4章 イランの核装備で日本に石油が来なくなる
第5章 アルカイダとアメリカの核の戦いが始まる
第6章 アメリカはいつも間違っている