読書メモ
・「グーグルに依存し、アマゾンを真似るバカ企業」
(夏野 剛:著、幻冬舎新書 \760) : 2010.09.15
内容と感想:
なかなか挑発的なタイトルである。
失敗するウェブビジネスは、その本質が理解できていないからだ、と著者はいう。
世の中にはネットの特性を生かし、そのメリットを消費者に還元できているとは言えないネットビジネスが多いようだ。
「とりあえずネットを使っているだけ」の企業も多いと指摘する。
それはITビジネスを理解し牽引していくリーダーの不在が原因だとしている。
かつてNTTドコモで「iモード」を立ち上げた著者は、自分がビジネスをリードしたという自負があるのだろう。
既存の、特に日本のウェブビジネスには厳しい見方をしている。
本書は日本のウェブビジネスが儲かっていない理由を考察し、ウェブビジネスを成功させるための方策を説き、
ウェブビジネスの未来についても思いをいたしている。
第四章でも述べているように、
「ウェブは正しく使いさえすれば、これまでアクセスできなかった顧客へリーチできる強力な武器になる」。
それでもウェブを生かしきれていない企業が多く、もっとポテンシャルがあるのにまだ使っていない人が多いのだ。
現場(社員)のレベルが高く、インフラも整い、条件が揃っているのにポテンシャルを生かせていないのは「リーダーが悪い」からとしか言えない、
と語る。やはり経営者の無理解が足を引っ張っているようである。芽はあっても彼らが摘んでしまっているところもありそうだ。
そうした経営者は早く身を引いていただくほうがよいだろう。
最後には、こう締めくくっている。
「先進的なIT技術に目を奪われて、海外の企業を真似たり、憧れたりするのは意味がない」、
自分たちのポテンシャルをもっと生かせ、と檄を飛ばす。
○印象的な言葉
・ネットだけの付加価値を追及
・mixiもモバゲータウンも売上成長率が止まった。株式時価総額に見合う規模に会社が成長するかが問われる
・iPhoneのような製品はリーダー・責任者がディテールまで指令を出さなければ実現しない。全体が最適化されること。日本の製造業が培ってきたような分業体制では実現できない
・クリティカルマス:ある一定の生産量や販売量を超えると急激に収益性や認知度が高まる生産・販売量
・参入障壁が低いビジネスではスピードが重要。一番になったらひたすら全速力で走り続けるしかない。立ち止まったら、研究され尽くしてしまう。
誰にでもチャンスがある。人の底力(得意分野、知識、経験、興味)が露呈しやすい。
・年齢別メディア接触時間:2008年、15〜20代の若年層のネットメディア接触時間は全体の4割と高い
・アメリカのテレビ番組・映画の無料提供サイト「Hulu」はYouTube並の広告収入を獲得するまでに急成長
・ストリーミング配信ならCM飛ばしはできない。広告視聴者を獲得できる
・日本のテレビ局の番組コンテンツの再利用法は一部のヒットコンテンツだけをDVD販売するにとどまる。視聴率が高くなかった番組でも、もう一度見たいという要望はあるはず。
宝の持ち腐れになっている。
・一週間程度に限定した無料のオンデマンド配信で、見逃し需要を確実に取り込むべき。BBCは全ての番組をネットで一週間だけ無料で見られる
・オンデマンド配信は確実に視聴回数、人数を把握できる
・新聞社の強みは編集力、目利き力、文章能力
・議論を尽くしても結論は出ない。情報量が多過ぎることも、結論、合意を形成しにくくする要因の一つ
・マスという概念はネットの普及により存在しなくなった
・テストの平均点を上げるにはトップの生徒を伸ばすほうが早い。それに影響されて追従する生徒が現れる
・リーダーの援護がなく、戦略性もなく、草の根的にじわじわ広がっているのが日本のウェブビジネス。それでも年率数十%の勢いでEコマースもネット広告も伸び続けている。
-目次-
第1章 日本のウェブビジネスはなぜ儲からないのか
ウェブビジネスに対する幻想を捨てよ!
あなたのウェブサイトがダメな理由 ほか
第2章 ウェブビジネスを成功させる鉄則
寡占になりやすいウェブビジネス
ウェブビジネスの本質とは何か ほか
第3章 ウェブビジネスの未来
ウェブ広告の未来
仮想通貨がウェブビジネスを加速させる ほか
第4章 旧来型日本企業への提言
ウェブビジネスと現代の日本社会
本当は限りなく高い日本のポテンシャル
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